カタパルト

「マクワくん……」

腕を体にまわして抱きしめてくるわけでもなく、背中に頭だけをくっつけて寝言を言うカオ。正直たまらなくかわいい。向かい合わせで包み込んで眠りたいが、色々と我慢できなくなるかもしれない。眠れなくなるかも。

起こさない様にスルリとベッドから抜け出すと、いちばんに洗面台へと向かう。普段のキッチリとスタイリングした髪とは正反対の爆発頭。寝癖がつきやすいのだと話すと、カオはマクワのかわいいところだと笑っていた。キッチリバッチリにスタイリングすると直したことがバレるので、手櫛で直せるところは直しておく。

コーヒーをいれようとケトルに火をかける。バチチとコンロが音を立てて、起こしてしまったかもしれないと遠巻きにカオを見るマクワ。よかったまだ寝ているとコーヒーの用意をする。良い朝はコーヒーの匂いが特に良くわかる。コーヒーをひとくち飲み込むと、静かにベッドの彼女の方へ向かった。

ぷうぷうと眠っている彼女はあられもない姿で、悪く言えば油断している、良く言えばリラックスしている。カオの髪をかき上げて耳にかけると、「おはようございます」と顔の側で囁いた。

「ん。マクワくん……」
「はいそうですよ」
「ハッ! マクワくん!」

覚醒するとカオはガバリと飛び起きて布団を手繰り寄せた。

「お、おはよ」

恥ずかしそうに挨拶をするカオにマクワは微笑む。コーヒーがはいりましたよと声をかけると、カオはもぞもぞとベッドから降りた。

「マクワくん、早起き」
「早く起きれば、カオさんの寝顔を見られますからね」
「み……見ないでくださいよ!」

クロワッサンを皿に乗せながら笑うマクワに近づいて、カオはマクワの背中に頭を当てる。

「わたしもマクワくんの寝顔見たい」
「見られますかね」
「見せてくださいよ」
「さあてどうでしょう」

いじわるね、とぽこぽこ腰をパンチするカオにまたマクワはクツクツと笑う。パンの焼けた良い匂いがテーブルへと誘い、コーヒーの香りが二人を着席させた。

「食べてまた横になるのはどうです、今日はぐうたら曜日ということで」
「先に寝てしまうくせに」
「ね、寝ないようにします!」
「ふふ。頑張って」

寝顔を見るという意地をはって、ベッドに転がり「さあきなさい!」と言うカオ。おかしな誘い方だとマクワは笑いながら、どこまで我慢できるものか葛藤していた。今日はぐうたら曜日、そういうことにしよう。