アセアセ
「これはどういうことだ!」
シスは案内された部屋の前でカトルに叫んでいた。
「カオと同室とは聞いていないぞ!」
「仕方ないでしょう。今回は人数も多いんですから、一緒の部屋になれる人は一緒になってもらわないと」
カトルはやれやれと呆れた顔だ。黙って従っていればいいのにと雰囲気をばちばちと出している。
「だからと言って、カオは女で……」
「分かっています。もし間違いを起こしたら殺しますからね。あくまでもシスさんなら、耳をみられても良いというカオさんの気持ちを尊重しただけです」
もう一度、カトルは変なことをするなとピシャリと伝えてから、姉であるエッセルの待つ部屋へと帰って行った。髪を掻きむしりながらどうしようどうしようと部屋の前で右往左往していれば、カオがジュースを買って戻って来た。
「シス?」
「ひ! あ、カオ、か……なんでもない」
「シスとお泊まり部屋、楽しいね。温泉も一緒に行こうね、ごはんも一緒ね!」
一緒の部屋、お楽しみ……シスは頭にフワフワとしたことが浮かぶ。変なことを考えては駄目だと頭を左右に振って自分を正気に戻した。
部屋に入るとすでに布団が敷いてあった。先程準備をするために旅館の者がやって来た為、驚きはない。しかし並んだ布団に、またフワフワとした考えが浮かんでしまう。
「あ、シス─────!」
先に靴を脱いで上がったカオが何か言っているというのにぼんやりとフワフワと戦っていたシスは段差に足を取られて勢いよく倒れた。普段ならこんな段差に躓くだなんてシスなら有り得ないことだが、それほど上の空だったのだろう。ひゃーとカオの悲鳴が聞こえ、慌てて手をついて目を開ける。
「ハッ」
倒れたシスはカオも押し倒してしまったようで、カオの背中が目の前にあった。まるで背後から襲いかかったかのような体制に、シスは冷静に戻らないとまずいとますます焦りを覚える。
「変な段差があるよって言ったのに、いたた…大丈夫シス?」
「だ、大丈……」
そんな時、こんな時、タイミング悪くカトルが伝え忘れたことを言うために扉を開けてしまった。
「変なことをするなと言いましたよね。シスさん、見損ないましたよ」
「ま、待て! これは、誤解だ!」
「その仮面ひん剥いて汚ねえ面を拝みながらブッ殺してやるよ!」