とろとろ
並べられた布団。あまりに近すぎるのではないか、少し布団を離しておくべきだろうか、いいや宿の者が勝手にやったのだからこのままでも構わないだろう。胡座をかいたままシスは一人そんなことを悩んでいた。
カオは部屋にある押し入れやポットの中や、シュガーポットの中、窓の外、端から端まで覗き込んでいた。どれもこれものチェックが終わると、カオは布団の前に座る。
「シスはどっちの布団で寝るの?」
「お前が決めろ」
「じゃあ、わたし左! シスは、右!」
ころり、とカオは嬉しそうに布団に転がり込んだ。
「シスとこうして寝るの初めてね」
「ああ」
カオが布団に入ると、シスは立ち上がりパチッと電気を消した。自分もゆっくりと布団に潜り込むと、カオをチラリと見る。薄暗い中で目が合うとカオが微笑むので、ついカッと恥ずかしくなってそっぽを向く。それから少しごそりと布団の擦れる音がして、カオが呼びかけてきた。
「シス」
「ん」
「お、おやすみのチュウしてみない?」
カオはすぐに布団で顔を隠した。馬鹿なことを言っちゃったと言い訳のようにぼそりぼそり。だって、前に見た映画のカップルはおやすみってチュウしていたもの。カオはシスにはっきりと付き合っているだとか、恋人だとか、そういったことを言われたことがなかった。だからこそ、映画の二人の行動に憧れてしまったのだ。
シスは馬鹿を言うなって怒るかも。カオはおやすみとだけ言って目を閉じた。するとタシタシと畳を踏む音が聞こえ、シスが動いているのだと布団を顔から外した。
チュ
布団から顔を出してすぐに、四つん這いになったシスがキスをしてきた。驚いて瞬きも忘れていると、シスは素早く布団に戻ってしまう。体が動いてくれた時には、もうシスの背中しか見えなかった。
「シ、シス」
「こ……これでいいのか」
シスは背中でそう言って確かめてきた。
「うん」
「これで寝られそうか?」
「うん、シスありがとう」
ずりずりとカオは立ち上がらずにシスの方へと近寄る。近寄るだけでは動じないという様子のシスの背中に、カオは指でなぞった。シスの耳がピクピク。すいすい、カオはシスの背中にスキと書いて頭をシスの背中に預ける。
「シス、おやすみ」
「ん」
シスもカオも互いのあたたかさに、とろりと溶けるように眠った。