ナニエ
「じゃあ行こっか」
シエテが口角を上げる。足を積み上げて作った門、塀に中の様子がわからないこの町への第一歩だ。
この町の名前は「ナニエ」という。名前の意味は余所者にはわからない。この町は外との交流を拒み、独自の文化やルールを作り上げて来た。きっと名前にも何かの意味があるのだろう。
もうひとつこの町の特徴といえば、武器を持たないこと。その分、呪いや祈りが馴染み浸透している。武器が無いのは残念だとシエテは笑っていた。今日ここへ訪れた理由として、この町が外との交流をするようになったのは近年であり、もちろん呪いや祈りで命を守ることはできるわけもなく、十天衆に同盟を持ちかけてきたからなのだった。
「カオ、寒くはないか」
「うん。ありがとう」
大きな塀は、きっとこの北風を防ぐ役目もあるのだろう。ウーノいわくこの地域は気温があまり上がらない谷になっているらしい。
今日はカオもついて来た。ファスティバのおつかいらしいが、いくら武器を持たない町とはいえシスとしては心配である。
「えーっと、門を開けてくださいって言葉は……」
シエテが本を出し確認をしていると、大きな音と共に門が開いた。中の門番は「どうぞこちらへ」と普通の言葉を話しているじゃないかとシスが睨むと、シエテは苦笑いした。
「あ! キゥニカキクエ」
そう思っていたのも束の間、門番は不思議な言葉を話した。
「え? な、なにかな」
「そこのエルーン、顔隠さないで」
「な、なに!」
指を刺されたシスは絶対に取られてなるものかと仮面を抑えた。シエテが説明をすると、門番は渋い顔をする。どうやらこの町で顔を隠すということは不吉なことらしく、この町の変わった文化のひとつらしい。
「とくべつにする。皆恐がると思うが、許してほしい。この町、顔を隠すのは死んだとき、怨み呪いをかけるとき、この二つだけ」
「すまない」
屋敷まで、確かに町人は仮面のシスを見るたびに悲鳴をあげて隠れていた。なかなか根強い文化である。
「あ、そこの女」
「ひゃ!」
屋敷へあがろうとしたところ、門番はカオの帽子を取った。カオの小さな悲鳴と同時に、シスは門番の手首を掴む。ギリギリと追ってしまいそうな勢いに、門番もヒッと悲鳴をあげた。
「何のつもりだ。どのような文明であれ、カオに手を出すことは俺が許さん」
「そ、それならいい、離してくれ」
シスが手を離すと、カオに帽子が戻された。小さな声でありがとうとカオがシスに伝えれば、シスはフン、と鼻で返事をした。シエテが少しニヤニヤしている。
屋敷に入れば、そこはツルツルした石に囲まれた屋敷だった。