フーフー
目覚めると今が何時で、何日なのかとぼんやりした。
熱が下がり、咳も無く、体も楽になっている。団長のところへ行って、良くなったと伝えて、仕事をしなければ。カオはそう考えてベッドから足を下ろし、部屋を出た。
「カオ……?」
廊下を出たところ、背後からシスに声をかけられた。シスはトレーに粥と水と、すりおろしたりんごを乗せて、カオを見て驚いた様子だった。
「シス、団長のところに行こうと、思って」
「それよりもう良いのか! 今カオのところに……いや、だから、飯をだな、フン……」
驚いた顔でワッと話したと思えば、シスは次第に目を逸らして声がか細くなっていった。心配されていたのだとカオは申し訳なく、ごめんなさいと呟いた。
「め、飯は食えるか? どうだ」
「うん」
「なら団長にはそれからだ。部屋に運ぶ、戻れ」
頷いてカオは部屋に、それに続いてシスも朝食と共にやって来た。カオが御礼を言おうと振り向いた途端、シスは素早くトレーをテーブルに置いてカオを抱き締めた。
「よかった」
それだけを声にして、グッとシスは力を入れる。カオは驚きか恥ずかしさかわからないけれど、心臓はとてもドキドキした。
「シス、心配してくれた?」
「当たり前だ。俺のカオが弱っているのに、心配しないわけがないだろう」
俺の、なのか、わたし。今度はハッキリと恥ずかしさで、カオは心臓がドキドキした。しばらく抱き締めていたシスが手を緩めると、顔を覗き込んで飯を食うかと聞いて来た。頷くとシスは顔をやわらかくして、ベッドにカオを座らせた。いつもこうして並んで座ることが当たり前になっているのだ。トレーはシスの膝に置かれて、カオは粥をすくった匙を渡された。
「熱いぞ」
シスが気をつけるようにカオに言ったとき、カオは時計を目にする。随分と早い時間だった。
「こんなに早いのに、もう食堂は開いていたの?」
「…………た」
「シス?」
「お、おれが作った。だから味の保証はない。まずければ、俺が食おう」
シスがキッチンに立つ姿をカオは想像して、似合わないと失礼なことを思った。一口食べると、おかしなところは無く、むしろ空いた腹には身体にしみるように美味しい。
「おいしい」
「そうか!」
「シス、料理ができるの知らなかった」
ウッとシスは言葉につまり、顔をそらせてから昨日ファスティバに習ったのだと話した。
「ありがとう。シス、優しいね」
「ふ、ふん。黙って食え」
シスはトレーごとカオに渡すと、腕を組んだ。フーフーと冷ましながらカオはゆっくり食事をすすめる。