試行錯誤


大量のホワイトデーのお返し準備かできた。ファンには統一して同じものを返すことにしている。山になったお返しに、ツボツボはキュキューと変な声を出した。

「問題は……」

カオの分。バレンタインにカオは手作りで特別なものをくれた。あれからどんなお返しをしたものかと悩み続けている。

『マクワくんを貰います』と言うカオを思い出すといやらしい考えが浮かび上がりその考えを打ち消す、ということを繰り返して日々は過ぎていった。


「マクワくんマクワくんマクワくん!」
「どうしたんですか藪から棒に」
「なんでもないけど、マクワくんに会えたらいつも嬉しいの」

ぺかー! 眩しいとマクワはサングラスの下、目を細めて赤くなった。人の気も知らないで甘えてこないで欲しいものだ!

「最近カブが美味しいの。たくさん買ったので、いっぱい食べてくださいね」
「いつもいっぱい食べているじゃないですか」
「いつもよりもっとです」

カオは腕にしがみついて来た。どうしてこんな時にこんなに甘えてくるのだろう。考えがまとまらないじゃないかとマクワは下唇を噛んだ。

「カオさん、欲しいものとか……何かありませんか」
「わたし? ウーン、もうすぐ家のハチミツが無くなりそうだし、卵もないかも……あとは、ネギ……」
「そういうものじゃなくて。ああ、ううん、忘れてください今の質問」

本人に聞いても良い答えが返ってくるかなんてわからない。きっとお返しなんて要らないと言われるか、なんでも良いと言われるだけだ。
部屋で観ている映画の内容なんて、頭に入ってくるはずもなく、いまどうなった何が起こったと映画のことを話すカオに上の空で返事をしていたマクワ。いつのまにか肩に頭を預けられていることに気がつくと、ますますお返しを考えることができなくなった。


「だから、母さんならと話しているんです」
『珍しく電話してきたかと思えば! 彼女にお返しなんて、ホワイトデーの定番のもので良いんじゃないの?』
「例えば?」
『マシュマロとかクッキーとかマカロンとか、あれなんかそれぞれ意味があるんだっけね? だーいたい、なんでも良いでしょ』
「そんな適当なことを!」
『アンタからならなんでも喜ぶでしょって言ってるの。そんなに物で左右される子なら、わたしは別れることを薦めるね』

カオさんはそんな人じゃありません! マクワがそう言うと、電話の向こうでメロンは笑っていた。息子が女のことで悩んでいて、それをどうしようもなくなって自分に相談してくるなんて誰が想像しただろう! メロンはとても嬉しく、なんだかんだで自分は嫌われてはいないのだとニコニコしていた。

『ねえアタシにはないの?』
「いつもの花で良いでしょう。他にそれとも欲しいものでも?」
『怒るな怒るな! 花が嬉しいよー』

毎年、マクワはメロンにお返しとして花を贈っていた。シャクだが、貰ったものは返すという真面目さがホワイトデーにも出ていたのだった。