あちこちで
「あ! マクワく、さん……」
花屋で母への花を選んでいた時だ。マクワを見かけてカオが声をかけて来た。キョロキョロと店員が近くにいないことを確認すると、カオは続けて話しをする。
「贈り物ですか?」
「ええ。毎年、母さんに花を贈っているもので」
「わあ素敵! わたしも花って大好き!」
「……っ、」
眩しい笑顔だ、とマクワは見惚れた。こんなに近くでこの笑顔を向けられると、どうしようもなく恥ずかしくなってしまう。
「カオさんも、花を貰ったりしますか?」
「わたし花束って貰ったことがないの。あ、一本だけなら昔学校の卒業式で貰ったかな」
「じゃあぼくが」
マクワが言いかけたところで店員が近寄って来た。カオは慌てずに(慌てるとバレてしまうので)小さな声でまた後で聞くねと呟いてその場を離れた。
「ブーケはこんな感じでどうでしょう」
「あの、これとは別で花を選んでも良いですか」
「追加ですか? もちろん!」
母のものとは違い、花言葉や色を時間をかけて選抜。店員も一体何の花を選んでいるのだろうと気になるほど真剣に。
事情を知らないカオは、お母さんにあんなに真剣に花を選ぶのだなと遠巻きに見て考えていた。親子の間を邪魔してはいけない、と思い「先に帰ります」とロトムにメールを送らせて花屋を離れた。
「花でプロポーズ……いや、カオさんのことだからバラくらいストレートでないと花言葉なんて気にしないでしょう。好きな花をどこかで聞いておくべきでした。あっ、鉢植えの方が良かったのかもしれません。ウーン、ウーン……」
マクワはメールにも気がつかずに花を選ぶ。店員は一体どこ宛ての花なんだろうと気になって仕方がない。この後、ファンの中で特別に花を贈られた人がいるのではないかと噂になってしまい、マクワの知らないところで争いが起きていたことを本人は知る由もなかった。