グイッと


サーッと血の気が引いた。
キッチンにあるお弁当は灰色のハンカチで包まれているのだから。

「マクワくんのお弁当がここにあるということはアレがマクワくんの方にいったのかもしれない」

アレ。
サンドイッチを作るために食パンの真ん中をくり抜き、その時に出たパンの端。飾り切りのために出てきたハムや野菜のかけらたち、など。それらのクズたちは家ならばお皿に入れて朝ご飯にするのだが、マクワくんの家では見られたくないという気持ちからお弁当箱に隠してお昼ご飯にしていたのだ。

あれをマクワくんがいまお腹ご飯にしているかと思うと、ああなんてこと!

渡すはずだった方のお弁当を開けてみれば、ツボツボ風に飾り切りしたミニトマトが光っていた。よくできたと朝は誇らしく思っていたが、このツボツボを作るために出たミニトマトの中身やハム片、からあげをイワークにするために切り取られた海苔、あれもこれも今、キルクスのジムで、マクワくんの口に……。

届けるにも誰かに見られれば迷惑がかかるし、帰って来たら謝るしかない。お弁当の写真を撮ってとスマホロトムにお願いして、自分がお弁当を食べた。




「ただいま」と聞こえた声に恐る恐る「おかえりなさい」と出迎えた。マクワくんはしっかりとイチゴ柄のお弁当包みを抱えていた。

「ごめんなさい、その……お弁当、わたし……」

渡すはずだった方のお弁当の写真を見せて、本当はこっちと弁解をした。写真を見ながら、あのパンはだからあんな変な形をしていたのかとマクワくんは関心していた。

「ここ、これ。丸くこんなに綺麗にパンを切れるものなんですか?」
「これはコップで、こう、グイッと……」
「うちにあるものでできるんだ、へえ」

恥ずかしいから聞かないで! と心で叫ぶカオに対して、料理をしないマクワはとても興味津々だった。