意識すること
「マクワくーん! ほら、海!」
浜を走って振り向きこちらに笑顔を向ける彼女に、今日は少しハラハラとする。もしサニーゴを蹴っ飛ばしでもしたら大変なことで、蹴ってしまえば祟られてしまうというのは有名な話だ。
「気をつけてー!」
「わたし向こうを見てくるね!」
嬉しそうに駆けていくカオをしばらく見た後、そうだ飲み物でもと海の家に寄った。するとそこの怪しげな男が「おにいさんもサニーゴのツノ目当て?」と尋ねてきた。それを「サニーゴのツノがどうかしたのか」と質問を質問で返す。
「ほら、サニーゴのツノって宝石扱いするところもあるでしょ。だからなのかな〜どこからか噂が広まって、ここでサニーゴのツノをプレゼントすれば末長くラブラブカップルでいられるってね。ン まあ宝石貰えた女がそれ目当てに擦り寄ってるだけだと思うんだけど」
ベラベラベラ! 男は話した。どうもサニーゴ目当てにやってくるカップルにウンザリしているようで、長々とまだ話を続けていた。
しかしマクワの耳にはもう届かない。サニーゴのツノ、喜ぶかもしれない。そしてずっとラブラブに!
ラブラブカップルのマクワとカオが勝負をしかけてきた! ……なんて考えて、ひゃあ! と恥ずかしくなった。
サニーゴのツノだなんてそれこそ祟られてしまいそうだが、こうしちゃいられない……探さねばとマクワは手を強く握った。
そうマクワが熱くなっていたころ、カオはチョンチーの群れを眺めていた。こんな浅瀬にも来るんだ、とほっこり。そんなほっこりにグッタリの影あり。
「ねえちゃん、ひとり?」
声をかけられ振り向くと、海パンの男が3人。ほっこりしていた時間も束の間、バトルだろうかと身構える。
「サニーゴでしょ。有名だもんね〜。よく見る所知ってんだよ、いっしょに行かない?」
「サニーゴのツノで作った特産品、ネックレスにピアスに指輪、店もやってるから見に来てよ!」
「色違いのサニーゴの写真も売ってるよ〜」
囲まれてしまい、カオは内心これならバトルの方がよかったと考えた。ナンパに見せかけて高いものを売りつけられてしまう、どうしよう。困り果てていれば、セキタンザンのロックブラストが男三人の足下へ勢いよく飛んできた。
「あなたたち、離れないと砂になりますよ」
「マクワくん!」
男たちは散り散りになりながら「チッ、黙しやすそうな顔だったのに!」と叫んでいた。
すぐに駆け寄り、マクワはカオの手を取った。
「怪我は?」
「ありません、あ、ありがとうございます」
「やはり一人にはできませんね。離れないで」
手を繋いだまま歩き出すマクワに、恥ずかしく嬉しいとカオは熱くなっていた。マクワはサニーゴを蹴っ飛ばさないようにとそればかりに集中して手を繋いだのだが、カオからすれば浜を仲良く歩けて嬉しいったらない。
「カオさん、意識して歩いていませんから(サニーゴに)。ちゃんと意識しないと」
「い、意識します(デートだということ)」
そうして少しすれ違いながら、二人はサニーゴを探して端から端まで歩き続けたのだ。