トラレル

「ここの習わしなんだって。頭を隠すことは今夫になる人を探していますって意味があって、建物にその姿で入ってきたらそれはもうここの人に求婚します! っていうことになっちゃうわけで、あの、だからさシスくん……」

ムスリ。シスはとんでもなく不機嫌である。

「シエテ、わざとではないのか?」
「本当に知らなかったんだよー!」

シエテを痛ぶるのはまたにすることに決めた。それよりも、今目の前でエルーンの男は無理矢理にカオを膝に乗せていることが気に食わない。

「式、いつになる?」
「あの、えと、いや……」
「アサリュー。メホマチカ、スー」

またわけのわからん言葉でカオに言い寄っている!
シスは感じたことのないくらいに黒い感情がメラメラとしていた。この感情はなんだ。

「貴様、どういうつもりか知らんがカオは……」

シスが男に近寄り、肩を掴むと男はシスの方へ不思議な顔を向けた。

「スー、カオの旦那なのか?」
「だ……」
「言葉、違うか? ダーリン、と呼ぶか?」
「ち、ちがうが……」

シスの性格上、俺の女だなんて言えるはずもなく。違うなら向こうへ行けと追い払われてしまった。

「シ、シス!」
「スー、わしの妻なる。食うに困らせない」
「でもわたしは……」

モゴモゴとカオも言葉が出ない。シスもカオも、ハッキリと言い切ることができなかった。