ジャキヤミ
「はやくどうにかしろ!」と無言の圧力に、シエテはこの町の言葉を調べていた。タンコブがふたつ、シエテの頭にはプレゼントされている。
「ああこれだ! よし、カオちゃん取り戻しに行こう!」
シエテが本をパタンと閉じると、シスはヨシキタとばかりにカオの所へと走った。
カオは不思議な場所、不思議な儀式めいたことに夢でも見ているのではないかと思っていた頃、シスとシエテはやって来た。そして、ジャムの瓶が置かれたテーブルの周りを半周した頃だった。何をしているのだ……とシスが戸惑うと、あれは婚約の儀式の途中だと親切にハーヴィンの男性が教えてくれた。シエテには、シスの何かが切れるプチプチという音が聞こえて苦笑いすらできない。
「シス! 助けて、何されてるかわからない!」
カオは助けを求めて男から離れようとするが、腕を掴まれて逃げられず。またそれを見たシスからはプチプチと音が聞こえた。
「貴様に聞かせてやる! いいか、カオはラタヴだ! スヒートだ!」
シエテが調べた言葉を使って大きな声でシスは叫んだ。シエテが「シスくんそんなに大きな声で言わなくても」と抑えるがシスは聞かなかった。プッツンシスだ。
驚いたエルーンの男は、笑った。何がおかしいとシスが歯を食いしばっていると、カオの背を押して戻るように促す。
「それならそうと、はやく、言えばよかった!」
「わ、わかったようだな」
「フフ。スー、ジャキヤミ、レア」
「何と言ったのかわからんが、カオは返してもらうぞ」
男はまた笑った。きっと今の言葉はシスがわからないと分かっていて、話したのだろう。カオがすぐにシスの元へと走って抱きついている様子を見て、深く深く頷いていた。
契約も終わり、やれやれ帰る時になった頃。シスは来た時よりも周りの視線が集まっていることに疑問を抱いていた。じろじろと見てくる住民の顔はオホホと笑って穏やかだ。
「シエテ、あの言葉の意味だが」
「あー、やっぱり聞く? 言ってもいいけど、怒らない?」
「怒るようなことでなければな」
ラタヴは「愛する人」という意味であり、スヒートは「腹に子どもがいる人」という意味であった。つまりカオは愛する人で、俺の子どもが腹にいるぞ! とシスは叫んでいたのである。シエテはこれを嘘でも説明をすればわかってもらえるのではないかと考えていたのだが、あんなに大っぴらに叫ぶとは想定していなかったのだ。
シエテはヒソヒソとシスの耳にそう説明をした。
「シスくん聞くような状態じゃなかったしさー。でもほら、まあ、半分は当たってるし、ねえ?」
「な、な……カオに意味を教えてないだろうな!」
「教えちゃおっかな〜」
シスはそんなことさせるかとシエテに関節技をかける。だがカオに「シスは何て言っていたの」と声をかけられ、シスは仮面の下で真っ赤になりながら早足で町を出たらしい。