空っぽ


『シスはここで待ってて良いからね』
と、そう言ってカオはお菓子を貰ったり、仮装を見せるために人混みの中へと消えて行った。

ハロウィンなんて参加しない、そう毎年言ってきた自分だが、今年は参加するとグランに言って良かったのかもしれないと考えた。カオが参加しない自分に気を遣って、ここにいても良いだなんて言ったのだと思うと申し訳なかった。しかし仮装もしていない自分とハロウィンだなんて、きっと楽しくないと思うのが正直な感想だ。


一方で、カオは仮装を褒められては笑っていた。グランとルリアも途中から合流して、お菓子を貰い、お菓子を渡し、ジュースを飲んだ。

そのうちに大食いのルリアがごちそうに夢中になり、グランは少しトイレに行ってくるとカオが一人の時間ができてしまったのが運の尽き。

「十天衆さん、こんなところで。仕事ですかい?」

声をかけてきた男は酒臭く、カオに被さるように見下げてきた。大きい男だ。ドラフの中でも、かなり大きい部類ではないだろうか。

「し、仕事では……」
「こんな弱そうな女が十天衆、ねえ。知ってるか? 十天衆くらい有名人さんは、便利で、高く売れるってよ」

知らないと正直に首を横に振るカオに、男はニッと笑うと、カオを担ぐようにして捕まえた。

「あー簡単な仕事だ。ありがてえ」
「は、はなして!」
「十天衆なら俺を倒してみろよ」

カオが暴れるくらいでは、男はびくともせず。汚く笑いながら男は薄暗い路地へと進んで行った。

グランが戻った頃には、カオは見当たらず、ルリアの皿も空っぽになっていた。