ソヨリ
「おはよ、シス」
朝の出会った彼女は元にすっかり戻っていた。シエテいわく、薬が効いている間のことは催眠状態のようでよく覚えていないらしい。
朝飯を食べるカオを見ながら、あのままだったらとか、もし自分のことを好きにならない生き方をしていたらとか、本当に自分のことを好きなのかとか、ばんやりと考えては食事の手が止まっていた。
「ねえ、ねえシス」
「うん」
「ケチャップって魚にも合うと思う? もしかしたら、ケチャップって、なんでも合うんじゃないかと思うの」
ヒソヒソと話しかけてくる事に、なんだそれはと思って束の間、カオは焼き魚にケチャップをつけて一口。うーんやらない方がいいよと難しい顔をした。なんとまあくだらいことなのに、フッと笑いが溢れてしまう。
シスは先に食べ終わると、自然とカオが食べ終わるまで待っていた。そういえばこれも、なんだか当たり前になってしまったが、別に待たなくても良いのだとシスはまた笑った。
「今日はシス、よく笑う」
「そう、か?」
「あんまり笑わないで。ここ、ドキドキするから」
カオは胸をとんとんと抑えた。
「シスの、笑った顔好き」
「おかしなやつだ」
「好きだから仕方ない」
「カオは物好きなやつだ」
「ふへへ」
ふにゃりとカオは照れ笑いする。それがすごく久しぶりに見たようで、自分でも驚くくらいに胸がキュウとした。
「カオ」
「うん」
「よかった」
穏やかな顔をして、シスは風に吹かれた。今日の風はそよそよと前髪を揺らすばかり。よくわからないまま、カオはシスの顔を目に焼き付けていた。