きれいなコエ


もしかしたら、ひょっとしたら、あったかもしれない世界。シスがシンクとして生き、一族を殺さず、少し人見知りをしないで生きた世界。

その世界でカオは、シエテの救いが来ないままであった。

「こいつは顔がきれいにできたから生かしておく。さあ次だ」

カオはそうして、今日も明日も『失敗作』として殺されていく仲間たちを見送る日々を過ごしていた。その度に耳が気に食わないと引っ張られ、切られ、縫われた。耳さえ成功していたらと願っていたが、最近では何もかも失敗して生まれて、すぐに殺されていればよかったと考えるようになった。

「今日は好みのエルーンの遺伝子や、部位を揃える為に屋敷をあける。逃げ出しても、お前のきみの悪い耳では生きてはいけまい」

頷く。しかし主人はそう言って出て行ったきり、戻っては来なかった。エルーン狩りの被害を調べていた騎空団に捕まったのだと知ることになったのは、突き破られた窓からだった。

「生きている者がいるならば、手を伸ばせ!」

釘が打ち付けられた窓を破り、差し出された手。その隙間から溢れ出す光。眩しさに目を細めながら、カオは手を掴んでいた。