落ちたトコロ
「ああー終わった! 終わってしまったー!」
オロロジャイアが膝をついて泣く地獄絵図。
グランはシンクをジトリと見て、どうしてあんなことを言ったかと問いかけた。
「な、何か悪いことを言ったのか」
「自覚ないんだ。ハー……」
それからというもの、カオはまた深くフードを被るばかりで、女性人たちとの交流も控えめになった。口数や笑顔が増えていたのに、それもまた戻ってしまったのだった。それでももう少しだけ、この世界を見てみようとオロロジャイアは不安になりつつも様子見をしている。もし二人が上手くいかなくとも、もしかするとグランは無事かもしれない。
シンクはというと、グランにあれから何も言われてはいないものの、どこかムズムズモヤモヤとしている。しかしそれをどうすれば解決できるかなんて、カルムの暗殺の術ではわからない。
誰かわかる者はいないだろうかと、シンクがグランサイファーの中を歩いていた時のこと。角を曲がった人物が何かを落としていったではないか。洗濯物だろうかと拾い上げると、それはスベスベとしたスカーフであった。落とし主に渡そうと角を曲がれば、そこに居たのはカオである。落としたことには気がついたようで、引き返そうとこちらを向いていた。
「落とした、ぞ」
「ありがとう……」
スカーフを差し出すと、俯いたままでカオは受け取った。
「まだ待っていたんだな」
「……た、たまには、洗わないといけ、ないから」
慌ててスカーフをクシャクシャにポケットに詰め込むカオの目から、パラパラと涙が出ていた。シンクは驚いた。また何か悪いことをしたのだろうかと自分が言ったことを思い返してみたり、行動を思い返してみたりする。シンクはわからない。
「もうつけないのか?」
「お、同じだから……フードで、良い」
ハッとした。シンクはその言葉かとピンときた。
「もしかすると、俺が言ったから……つけないのか?」
カオがわかりやすく動揺する。動揺しているカオのポケットから、またスベスベスカーフは床に落ちていった。
「カオが何を身につけても、俺は似合うと思って言ったんだ。その、言葉選びが悪かったようだ、すまない」
シンクは落ちたスカーフを拾い上げると、カオのフードをゆっくり脱がせて、頭にスカーフを被せた。
「カオは何を着ても、何を身につけても、綺麗だ」
この時だろうか、ストンと恋に落ちる音がしたのは。