王様のカーブ


「買い物、みんな忙しいんだって」
「俺一人で行く。二人で行く必要はないだろう」
「いやいやいや! シンクくんには入りづらい女の子っぽい店だからさ! ね!」
「それなら、わたし一人で……」
「治安が悪いからさ!」

治安が悪い女の子っぽい店に疑問を抱きながらも、二人はびっしりと書かれた買い物メモを待たされて出発した。

「フン。夕飯まで食べて帰れだと。おかしなグランだ」

シスはメモを見ながらサカサカと歩いた。人混みをスイスイと避けながら速足である。

「ま、待って」

一方でカオは人混みにもまれもまれ、モタモタ。

「来い」
「ご、ごめんなさい」

立ち止まりシンクはカオを待つ。そして速足、カオがもまれる、シンクが待つ。それの繰り返しだ。

そんなことを5回繰り返したころ、シンクが振り向くとカオがいなかった。シンクが目を凝らすと、カオはチンピラに絡まれて足を止めていた。

「ぶつかって来て、わざとなの? かわいいね、美味しいパイでも食べに行かない?」
「アハ、エルーン用の服も合わせに行こ」
「い、わたし……いまは…」

男がカオの手を掴もうとしたその時、咄嗟にシンクは男の手首をギチギチと掴み上げた。

「男がいたのかよ! チッ」
「カオ、大丈夫か」

男たちは舌打ちをすると人混みに消えていく。シンクがため息をつくと、カオは俯いた。

「すまない。カオに、俺が合わせるべきだな」
「ううん。わたし、歩くの遅くて……」
「ひとつ策がある。昔グランと街へ出た時は、こうしていた」

シンクはトマトを掴むようにカオの手を握った。

「嫌じゃないか? ヒモを結ぶ手もあるが……」
「手が、良い」

キュ、とカオに手を握り返されると、なんだかシンクは心臓がコロコロした。

「シンクさんの手が良いね」

ニコッとカオが微笑むと、シンクは爆発しそうになった。突然顔がカァーッと熱くなる。これは19年生きたシンクに取って初めての経験であった。風邪をひいた時に似ていたが、どうも少し違う。

それからゆっくりと歩みを合わせて店へと向かった。