うなばら

美味しいと評判の饅頭を手に入れた。
これをページワン様とうるティ様に、と足を速める。朝早くから並んで手に入れたこの饅頭、喜んでもらえるかと歓を尽くす。

「あ、お前」

左見右見していると呼び止められたのは屋敷の廊下。他の遊女が相手をしている者であったが、顔だけは見たことがあった。

「身請けされたんだったよな。なら、大丈夫だな。部屋に来いよ」

顔だけは見たことがあった、そして悪評である。遊女の相手を変えることは、厳しい罰があった。しかしこの男は今日はこの女、明日はこの女と好き勝手をし、出入りを禁止されている。大丈夫という言葉の意味は、もう身請けされて自由なのだから自由にしても構わないだろうという意味であろう。

「わたしはこれを届けなければなりません」
「なら無かったことにすれば良い」
「あっ」

抱えていた袋を取り上げられ、それを踏み付けられ、カオのショックを受けた顔に男は憫笑。

「それはページワン様に……」
「ページワン? あのガキに?」

ますます男は笑顔になる。カオの腕を掴んで、それもあざができるほどに力を入れて、持ち上げた。

「何が飛び六胞だ。戦うチャンスがあれば、おれが変わってやるんだ!」

平手打ちをカオに食らわせると、男は続けてカオの肩を蹴り、貴笑った。手足をへし折ってダルマにしてやると、恐ろしく囁く。カオは観念の臍を固めると、目を閉じた。

「何がそんなにおかしいんだ」

ぬらりと現れたそれは、人獣の姿に変わると男の首をメキメキと締めた。

「戦うチャンスを作ってやった。どうした、倒せばいいだろ」

ページワンは先程カオを放り投げたその時より強く放り投げた。いくつか壁を壊して飛んでいき、なんだなんだと中の人間は騒いでいる様だった。

意識が遠のく中、カオは大丈夫かという声を聞いた。



カランと氷が崩れる音で目を覚ました。

「あ……」
「カオ?」

ゆっくり起き上がると、カオはページワンの方へと体を向けた。

「大丈夫か。骨は折れてねえ。でも痛むだろ、まだ寝てろ」
「ページワン様が助けてくれたのですか」
「通り掛かりだ。気に食わねえ奴だったし、灸をすえてやったんだよ」

手元を見ると、薬とクシャクシャになった紙袋が置いてあった。饅頭の入っていた袋と良く似ている、というよりソレである。これも拾ってくれていたのかと袋を手に取ると、中身が無いことに気がつく。

「それ、食っちまった」
「あれを食べたのですか?」
「腹が減ってた」

踏み潰されてぐちゃぐちゃだった饅頭だが、しっかりと回収していた。姉には食べさせられなかったが、自分だけはそれを食べた。聞き間違いでなければ、自分の為に手に入れてきたものを嬉しく思うと、形は気にならなかった。

「ページワン様……」
「なんだよ」
「お慕いして、間違いはなかったようです」
「それ意味わかって言ってんのかよ」
「ページワン様に恋し……」
「だー! 皆まで言うな! 姉貴と違うタイプの恥ずかしい奴だな! 寝てろ!」

パシッと叩かれて、無理矢理に横にさせられる。

「面映ゆいのですか。うるティ様が鍾愛の的にするのもわかります」
「うるさい」
「これを恋慕と呼ぶのですね、ページワン様」


ページワンの周りに、ベタベタする女性が増えた日になった。