ぴーる
「シス様」
そう呼ばれ、顔を難しくする。シスはどうもガビガビとしていた。ラードゥガに今日はジャミルが来ており、カオと店の手伝いをしていたからである。
最近カオの話には、よくジャミルが出てきていた。
嫉妬なんて見苦しいことはしない。カオが他の奴と交流するのは良いことだ。これは決して『決して!』嫉妬では無く、カオの様子を見るためにでは無く、『たまたま!』夜間に腹が減ってここに来たのだ。これは重要なことなので何度も語りかけておくことにする。
「シス、いらっしゃい。いま、ファスティバさん……ちょっといないの。だから、お酒は、ない……」
「酒は良い。水をくれ。それと腹が減った」
「うん」と返事をして笑うカオの顔も目に入らず、シスは『ファスティバが居ないということは2人きりじゃないか! どうなっているんだここの経営は!』と下唇を噛んだ。ガビガビ。
「おにぎり食べる? これ、おかかが入っているの。おいしいよ。味見して、はいあーん」
有無を言わさずにカオがおにぎりを口に運んでくる。ムグッ!とつい食べてしまったが、こんな人前であーんされてしまった。まあ、ファスティバが不在で2人きりなことはこれで許そう……絆されたシスは、むぐむぐとおにぎりを口にしていると、ジャミルのあたたかい視線に気がつく。すぐにお茶を飲んで誤魔化すが、「仲のよろしいこと、羨ましいですね」と声をかけられてしまった。
「シスは、優しい」
そう答えながら、カオはレモンの皮を照れ隠しのように削っていく。