麻酔は結構

「わたしは買い出しに行って来ます」

カオは大きなリュックとカゴを持ち、船を降りて行った。

カオは花市場を見かけて心躍らせていると、お店の主人がビスケットを渡してくれた。それを頬張りながら花街道を歩いていると、素敵な紳士がバスケットから一本のスカビオサをプレゼントしてくださった。

そうしてカオは幸せに過ごしていた。


一方でキラーは心臓が飛び出しそうなくらい緊張してバラの花束を購入していた。マスクをせずにやってきたせいで、緊張した顔は店の者にも丸わかりだったらしい。お幸せに、と声をかけられた。

キラーは早くカオにこれを、と思いつつもプロポーズの言葉が浮かばない。あちこちウロウロしながら、どう伝えればと思い悩んだ。気がつけば町の中へ中へと入り込んで行く。

「カオは鈍いからストレートに言わないと……」

と、角を曲がればバッタリ。カオが現れた!
ドキーッ!

「キラーさん?」
「あ、え、えっ」

カオがどうしてここに!と困惑と同時に、今まで考えていたプロポーズの言葉や想像していたカオの顔が走馬灯のように駆け巡ると、キラーは顔が真っ赤になった。

「どこにいらしてたんですか? また武器商人の方と? いけません、花粉が付いていますよ。花市場に? 花粉は取れませんからね」

カオは流れるようにハンカチを取り出して、キラーの服についた花粉をトントンとたたき落とした。

「カオ、その」
「はい?」
「おれは」
「キラーさん、花束は下を向けて持ってはいけませんよ」
「そ、そうだな」

流され流され、キラーとカオはそのまま町を歩くことになる。花束はキラーが持ったまま、つまり渡さず終いでだ。せめてカオがキラーがなぜ花束を持っているかを疑問に思ってくれたなら、渡すチャンスはあったろうに。

カオはすっかり、武器商人に会うものだと思い込んでいた。そして、最近読んだ本に『花束を目印に集合場所に集まるマフィア』というおかしな設定があったのだ。てっきりキラーも同じように集合の目印にしているのだと思い込んでいたのだ。

キラーの言う通り、カオは鈍かった。