鳥の巣
「おはようございます。以蔵さん」
昨日飲みすぎたと唸って寝ている所へ、カオが起こしにやって来た。朝から三つ指を立てて挨拶しているおなごを見るのは実にけしからんと以蔵はボーっとカオの油断している胸元を眺めていた。
「お水でもお待ちしましょうか? ごはんは、喉を通りそうですか」
「飯は遠慮……」
「以蔵さんに合わせて、わたしなりにお味噌汁などを作ってみたのですが」
「食う」
カオが作ったものなら熱があろうとも二日酔いでゲロゲロボーであろうとも食わねばならない。以蔵は立ち上がった。髪を結おうと乱雑に髪を手で持ち上げると、するっと近寄って来たカオが「わたしがやりますよ」と手を伸ばして来たので、他のところも立ち上がりそうであった。
「以蔵さんたら、髪にとても癖があるのだと思っていましたが、まあ、これは梳かしていないだけなのですね」
カオの手櫛が気持ち良い。そして何より近すぎじゃろ!と以蔵はたまに当たるカオの胸の柔らかさや、動くたびに香るカオの匂いに顔に少し熱を集めた。
「櫛を持って来ましょう。それに少しお水を……」
部屋を出て行こうとするカオの手首を掴んで、以蔵は首を振った。
「えい。おまんの手櫛でえいがじゃ。その、変な意味じゃのうて、わしはこれでえい」
カオは目を丸くさせた。
「それなら、これで。ちょっとはねていたくらいが、男前かもしれませんね」
以蔵のこめかみ辺りの髪を触って、カオは微笑んだ。以蔵には効果抜群だった。このおなごは何も考えずにこげなことをサラリとやりよって……と体を震わせた。