07:マーキング

どーも調子が狂う。ゴールドマスクの最近の気持ち。
はっきりと男として好きと言われたわけではないが、カオは前より柔らかく接してくれるし、思い違いでなければよく笑ってくれる。
しかしもしかしてもしかすると友達として好きというだけで、前より仲良くなっただけという可能性もある。

はっきりと聞くのはこわかった。マスクは好きだ惚れただと一方的に言うばかりで、好きだとか好きではないとか、嫌いとか、愛せないとか、答えを聞いたことがなかったのだから。

「マスクくん、オイルこぼれそうだよ」

その声に我に帰り、マスクはオイル缶をしっかりと持ち直した。

「マスクくんはたまに、ポヤーとしてるね。悩みとか、あるの?」

「何でもねえよ、ほら、最近試合が続いてるからな、試合のフォーメーションとか考えてるだけだって!」

自分のことをじっと見るカオに、目を合わせられないマスク。


「私より好きな人ができたとかじゃない?」


それを聞いてカオの目を見ると、こちらも目線が合わない。どこかカオは照れているような、それでいて不安で悲しそうな感じだった。
マスクはその反対に、安心してしまった。なんだか悩んでいたのは自分だけではなかったような気がして。的確に考えを読み取れる能力は無いが、マスクはカオが自分のことを考えてくれていると思った。

「カオが一番好きだ」

マスクから、ちう、と音を立ててキスをした。
「私も好きです」と小さな声をマスクは聞き逃すはずもなく。

「敬語は反則だろ…」

「お慕い申し上げますみたいな、古風で良いでしょう」

トン、とマスクにもたれかかるとほんのりとあたたかい。


「でも必殺技はあった方が良いよね、もうできた?」

「できてねえ…」


マスクの心は急に崖から突き落とされた気持ちになったのであった。