あなたと共に地獄まで

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 あの日――全国大会の決勝戦が終わったあの日から、柳さんは俺によく謝るようになった。
「すまない」そのたった四文字に、柳さんがどんな思いを込めているのか、俺にはわからない。わかりたくもない。その四文字に込められている柳さんの気持ちを知ってしまったら、俺はきっと、柳さんと一緒にテニスができなくなってしまうから。だから、今日も俺は気づかないフリをする。何もわからない、馬鹿を演じるのだ。

「何言ってるんスか、柳さん。そんなことより、テニスしましょーよ、テニス! 今日こそぶっ潰してやりますから!」
「はは、そうだな」

 何も知らないフリをしていれば、柳さんは笑っていてくれる。
 ヒジンドーテキ、とか、ヒドウトクテキ、とか知ったこっちゃない。これが俺らのテニス、勝つためのテニス。今更とやかく言われる筋合いはないし、そのヒジンドーテキなテニスをしたからって地獄に落とされようが何しようが、そんなの関係ない。柳さんといれば、俺は常に最強でいられる。怖いものなんて何もないんだ。
 気づかなければ、何も変わらない今まで通りの日々が続いてくれる。だから、今日も俺は馬鹿を演じる。今までのやり方を肯定するために。これからの日々を続けるために。