まさかこんなことになるとは思わなかったんだ、ちょっと見知ったシールドの施設とはいえ、呑気に鼻歌なんか歌ってよそ見しながら歩いてたから、変なところで(しかも何もないところ)で躓いて転びそうになったところをスティーブに受け止めてもらったのだが。

「ぷ、っわ」
「ナマエ、大丈夫?」
「ごめん、大丈夫…………、」
「?どうした?」

まさかスティーブの胸に正面から突っ込むとは思わなかったわけで。
まさか突っ込んだスティーブの胸がこんなに柔らかいとは思わなかったわけで。

「………や、…柔らかい」

思わずスティーブの胸をつついてしまった俺は悪くないと言いたい。え、筋肉って柔らかいんだ………?とよく分からない感動をしてしまった。

「……(女の子の胸くらい柔らかいんじゃ…悲しいことに俺女の子の胸触ったことないけど…)」
「…ナマエ?」
「へ、…っあ、」

見上げればスティーブの少し困ったような顔。しかもほんのり顔が赤い。

…………待って俺、…やってしまった、

「ごっごめんスティーブほんとごめんほんとにごめんなさい!!ああ俺は何てことを…!!!」
「ナマエ、」
「あのべつに俺はスティーブの胸を触りたかったわけではなくてだな!ただその、ぶつかったときに俺がスティーブの胸に突っ込んでしまってそれが思いの外柔らかくて思わず触ってしまっただけで確信犯というわけでは」
「ナマエ、落ち着いて、」

思わず効果音が付きそうな勢いで後ずさった俺をどうどう、とでも言うようにスティーブが俺の肩に優しく触れるがこれが落ち着いていられるかまさかスティーブの胸がこんな柔らかいなんてって待て違うそっちじゃなくてだな!!!やばい頭が混乱してきた!!ていうかおっぱい触るって完璧セクハラじゃん!!やばい!!

「ほんと、ごめんなさい、土下座でもなんでもするんで許してスティーブ」
「ナマエ落ち着いて、English please」
「そうそうイングリッシュプリ、え?…………あ」

スティーブのその言葉で気付いた。動揺のあまりどうやらさっきからずっと我を忘れて日本語で話していたらしい。…恥ずかしい。

「…………ごめん」
「落ち着いた?」
「………うん、ごめん」
「もういいよ、気にしないで」

スティーブは「いいよ」と言ってくれているが、さっきから俺英語でごめんしか言ってない。俺の英語力がないばっかりに謝罪のワードがアイムソーリーしかないのだ。同じワードを連呼しても誠意など伝わる訳がない、辛すぎる。申し訳なさすぎてスティーブの顔見れない………。ていうか俺何してんだよ……何で俺スティーブにパイタッチしてんだよ馬鹿……。頭抱えそう……

「そんな顔しないでナマエ。僕は怒ってないから」

スティーブはそう言って俯いたままの俺の頭を撫でる。そのスティーブの言葉で恐る恐る顔を上げれば、俺の顔がよほど酷かったのか、スティーブは困ったように笑った。

「すごい顔してるよナマエ」
「だって俺、スティーブにセクハラしたし………ちゃんと謝りたいのに、I'm sorryしか言えないし……。」

俺のその言葉にスティーブは少し考える素振りをしてから、何か思いついたのか「じゃあこうしよう、」と俺に言った。

「ナマエ、お詫びとして僕に現代の色々なことについて教えてくれる?その代わり僕は君に英語を教えるから」
「え、」
「どうかな?」

「勿論、君が良ければの話だけど、」とスティーブは続けた。
俺が現代のことについて教える代わりにスティーブが俺に英語を教えてくれるって…、なんだそれ、

「でも、スティーブ忙しいだろ?訓練とか、任務とか……」
「それくらい平気さ、良い息抜きになるし、君と話すのは楽しいしね。」
「楽しい?ほんとに?俺、全然喋れないのに」
「本当に楽しいよ。それに一生懸命話そうとしてるナマエを見るとなんだか癒される」
「………」

癒されるとは………。
一体俺はスティーブにどんな風に思われているのか……。けど、スティーブが本当に英語を教えてくれるなら、ありがたいことこの上ない。

「じゃあ、…先生、どうぞよろしくお願いします」
「僕なりに頑張るよ、こちらこそよろしくお願いします」

俺がお辞儀をするとスティーブも俺を真似てお辞儀をした。スティーブのお辞儀なんてなかなか貴重だ。なんかかわいい。



「ナマエが流暢に喋れるようになったらいくらでも触っていいよ」
「え。どこを?」
「胸」
「…っやっぱり根に持ってるだろスティーブ!」
「ははは、English please」


20150718

スティーブにセクハラ(事故)



prev | back | next