もしピーターとくっついたら
ヤバイ。
スマホの画面を見つめて部屋のソファに座り一人固まる俺。そんな俺を見てピーターは顔を覗き込んできた。
「ナマエ?どうしたの?」
「ピーター……」
「すごい怖い顔してるけど、」
何かあった?とピーターは心配そうに聞いてくれた。ありがとうピーター、その優しさが心に沁みる。
「あのさ、」
「うん」
「お、俺、性犯罪者になる……?」
怖すぎて声が小さくなってしまったが、その言葉を聞いてピーターが思い切り噴き出した。
「え、ど、いきなりどうしたの?大丈夫?」
「だ、だって、俺20歳超えてるし、ピーターはまだ15歳だし」
「は?」
そう、俺が何を知ったかというと、アメリカでは未成年との交際が法律違反だということだ。アメリカで暮らし始めてしばらく経つというのに、それもついさっき知ったのだ。どうやらここニューヨーク州の法律によれば、21歳以上が17歳以下と交際すると最大4年以下の懲役になる、らしい。なんだよそれ、怖すぎるだろ!とそれ関連のニュースを見ながら最初は他人事で考えていたが、そういえばピーターって15歳じゃね?とはたと思い出して、固まった。俺的には15歳には全く見えないのだが、彼はピチピチの男子高校生だ。全く外国の人は年齢不詳で困る。まあそれはともかく、ということは、未成年(ピーター)と付き合ってる俺は、それが見つかったら逮捕されるということか?という考えに至って、今戦々恐々としているのだ。
「……ああ、そういことか!」
依然として固まる俺を見つめて、俺が言わんとしていることが分かったのかピーターは納得したように頷いて、そしてしばらく黙って、
「………大丈夫だよ!」
と笑顔で言ってきた。いや待て、結構な間があったけど?!不安すぎる!
「だ、大丈夫?ほんとに?」
「うん、たしかあの法律って、性行為をしたら法律違反になるけど、」
とそこまで言ったピーターは、少し頬を染めて言葉を続けた。
「…ほら、僕たちまだエッチしてないからさ、………たぶん、大丈夫…だと思う」
「………おお」
ピーターの言葉にもう一度法律の概要を確かめてみると、なるほど、「21歳以上が17歳以下と性行為をすると第3級性的虐待罪」と書いてある。動揺して「性行為」の文字を見落としてたみたいだ。つまり、…性行為をせずに清い交際なら大丈夫ってことなのか?グレーに近い気はするけど…。
「そっか、…じゃあ、大丈夫、だよね?俺たち」
「うん、だと思う」
ほんのり顔が赤いままピーターがこくりと頷く。それに少し安心した。日頃スパイダーマンとして活躍している彼を見ているだけに、エッチという言葉に顔を赤くするところは、ウブで年相応らしくてかわいいなと思ったのは言わないでおこう。
「…そうか…、そしたら、ピーターが18歳になるまで、エッチはお預けだね」
「………」
スマホの画面を見ながらぽつりと呟く。それにピーターが少し残念そうにうん、と頷いた。合意の上でもやっちゃったら法律違反になるのか…アメリカって大変だなと、ぼんやりとどこか他人事のように考えた。全く他人事ではないが。
「…でもさ、ナマエは20歳超えてるように見えないからバレないと思うよ!」
笑いながらそう元気に言うピーター。うん、これはいつも散々言われてることだし、自分でも分かっていることなのだが今回ばかりは冗談に聞こえない。
「…だめだよ?」
「わ、分かってるよ!」
念を押すように俺がそう言うと、ピーターは慌ててそう返してきた。正直この年頃の子にえろいことを我慢しろっていうのは酷だろうなと思うが、致し方ない。
「でもさ、」
「ん?」
「キスはいいでしょ?ね、ナマエ」
俺の隣に座って、ピーターは身を乗り出してきた。うーん、…この場合、キスは性行為の1つに入るのだろうか。そう悶々と考えていると、
「性行為かどうかとか真面目なこと考えてるんだろ?キスは愛情表現だよ!」
とピーターがどこか得意げな表情でなかなか上手いことを言うもんだから、思わず納得してしまった。まあでも、恋人同士なのにキスもしないんじゃ、さすがに俺もどうかと思うし、そのうち我慢できなくなる気がする。
「……………人前じゃなきゃ、いいよ」
「ん、了解」
そう考えて出した答えがそれだった。それににこにこと笑って頷いたピーター。本当に分かってんのかなこの子は。
俺の手に自分のを重ねて顔を寄せてくるピーターに、俺もそれに応じる。柔らかくて少し薄い唇が触れて、触れるだけのキスを少し繰り返す。唇が離れた拍子に至近距離で見つめたら、ピーターがどこか恥ずかしそうに目を逸らした。それがかわいくて頬が緩む。
「なに?」
「なんでもない」
かわいいなあと思いつつ、今度は俺からキスをする。重ねられていた手はいつの間にかお互いの指を絡ませていた。
唇を食まれたり吸われたりして、それが気持ちよくて力が抜ける。自然と軽く開いた唇に、ピーターの舌が差し込まれた。舌を出してそれをつつくと擦り合わされた。その刺激にぁ、と声が漏れる。こいつ、高校生のクセになんでこんな上手いんだと思いつつ、俺も負けないように(何にと言う話だが)舌を絡める。
そんなキスを繰り返しているうちに、段々と身体が熱くなって、ぼうっとして、ふわふわしてきた。ああだめだ、
「っん、ピーター、だめ、えろいキスはだめ」
「なんで、」
堪らず唇を離してそう言うと、俺の言葉にピーターは眉根を少し寄せる。なんで?!なんでってそんなの決まってるだろ!
「分かるだろ!そういうことしたくなるから!だめ!我慢!」
「うー…かわいいんだから!もう!」
顔を熱くしてそう言う俺を、たまらない、とでもいうかのようにピーターは抱きしめる。またかわいいって言ったなと思いつつ背中に腕を回すと、ぎゅう、と抱きしめられる力が強くなった。
「俺を性犯罪者にしないでね」
「努力するよ」
「冗談じゃないからな!」
「分かってるよ!」
笑って俺に擦り寄るピーターの頭を撫でてやる。彼に「我慢しろ」と言ったはいいものの、俺だってそれは同じで、そういことを我慢しなければいけない。俺の場合さっきのキスでも身体が熱くなり始めてしまうのだ、これは気をつけないといけない。こんなんであと3年もやっていけるのか、前途多難だ。
ああ、とりあえず、早くこの熱がバレないうちに治まりますようにと、俺はピーターの肩に顔を埋めた。
20170403