「レニー、レニー」
「ロキ様?どうかしましたか?」
「レニーは、僕が変だとは思わない?」
「どうしたんですか、いきなり」
「だって、…僕は、兄上とも父上とも、母上とも違うから…。目の色も、髪の色も、全部違う…同じところが一つもないんだ」
「…ロキ様」
「…………」
「そんなことありませんよ。貴方は聡明さと魔法の力をお持ちになっていらっしゃいます。お母様と同じように」
「…レニー、」
「ロキ様、外見も大事かもしれないですが、一番大事なものは貴方の中にあります。ちゃんと貴方は受け継いでいらっしゃいますよ。それをどう発揮するかは、貴方がこれからどう生きていくかで変わっていきます」
「…うん」
「それに…これは私情になりますが、私は貴方の髪や目の色が好きですよ」
「……う、ん」


「ありがとう、レニー」というその言葉が、やけに胸に響いた。



「う…………」



痛い。ズキズキとした痛みで目が覚めた。

「(どこだここ………)」

景色がゆらゆらと動いている。いや違う、俺の視界が揺れている?どうなってるんだ、これ、

「………」

一瞬間をおいて思い出した。俺敵に見つかったんだ。頭が痛いのは殴られたからだろうか。なんにせよ痛みがあるってことは生きてるってことだ。そのことに可笑しいけれどホッとした。

「………………」

揺れていた視界が徐々に止まって、段々と視界がハッキリしてきた。少し暗い部屋だ。俺は壁に寄りかかって、足を投げ出して座っていた。ガラス張りなのか、それともプラスチックなのか分からないけど透明な部屋?檻?みたいなものにソーが閉じ込められている…ように見える。ソーは誰と会話しているのか、少なくとも友好的な会話には聞こえなかった。
視線をソーと会話している人物の方へ向ける。後ろ姿を見ただけだったけど、


「………ロキ」


自然とそう呟いていた。いつもの自分の声じゃないような、全然違うトーンで。
驚いたようにロキが俺の方を向いた。いや驚いたのはこっちだ、と言いたいところだけどそんなこと言える訳がない。なんとなく気まずくてロキから目を逸らすとソーと目が合った。よく声が聞こえない。小さくナマエ、と名前を呼ばれたような気がする。


「…レニー」
「あ、…………」

まただ、またその名前だ。
ロキが俺を見て「レニー」と呼ぶ。どういう反応をしていいか分からず何も答えられないでいると、ロキは薄く笑みを浮かべた。ゆっくりと俺の方に近づいてきてしゃがむ。そして些か乱暴に顎を掴まれた。顔を左右や上下に動かされて、まるで見定められているみたいだ。

「…なるほど、見れば見るほど生き写しのようだな」

何を言ってるのか、聞き取れなくてよく分からなかった。この人は何を考えているんだろう。表情が読めない。悲しいのか、嬉しいのか、怒っているのか、ただ複雑な表情をしているのはなんとなく分かった。


「だんまりか。私のことなど覚えてすらいないか?」
「……………ぁ、」

だめだ、頭が働かない。何を言っているのか分からない。なんでこの人は笑ってるんだ?


………怖い。


「ロキ違う!彼はレニーじゃない、ナマエだ!」
「…レニーじゃない?」

ソーが透明な壁越しにロキに怒鳴った。ロキはそのソーの言葉に可笑しそうに笑う。

「はは、兄上、分からないのか?…いや、兄上も気づいているだろう?こいつはレニーの力を身に宿している」
「…だとしてもだ、ナマエがレニーだという証拠はどこにもないだろう!ナマエは俺やお前のことも知らないんだぞ!」
「……………」

早口すぎて何言ってるのか分からない。けれど俺を見たロキの表情が、なんだか、不穏な、感じが、する。

「…だったら、思い出させてやればいいじゃないか。なあ兄上?」
「おいロキ!何をする気だ?!」
「……っ?!」

ロキに無理矢理立たされる。俺の身体は強張って動かないし、小刻みに震えている。だからもう持ち上げられているに近い。ロキが段々と距離を詰めてくる。どうしよう俺今度こそ死ぬかもしれない、誰かたすけて、

「い、やだ、…ロキ、」

カラカラに乾いた喉を振り絞って声を出そうとするが、掠れた声しか出なかった。


「なんだ、ちゃんと話せるじゃないか、…レノス」
「ま、っ」



そこで、俺の意識はブラックアウトした。

俺、本当に死ぬかもしれない



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