だらりとナマエの腕が力なく落ちた。
ああまずい、このままではナマエが――――、と最悪の結末を想像しそうになるのを頭を振って打ち消した。とにかく彼を助けなければ。その為になんとかしてこの忌々しい透明の檻から出たいのに、出ようと壁を叩けば叩くほど己の立場が危うくなるこの状況が腹立たしい。

「しまった、力を入れすぎたか。…脆いな」
「ロキ!いい加減にしろ!」
「…どうやら兄上は、随分とこいつに情が移っているらしいな?」
「………」

思わず語気が強くなる。そんな俺の様子を、ナマエの首を絞めるようにして持ち上げているロキがふ、とこちらを見て嗤った。その言葉にぎり、と歯を食い縛る。が、

「…ぁ………」

聞こえるか聞こえないかほどの小さな掠れ声と共に、透明な檻越しにロキに持ち上げられているナマエの手が、ささやかな抵抗をするようにロキの腕に添えられたのが見えた。

「…ナマエ…?」

薄く目を開けたナマエが、ゆっくりと俺を一瞥する。
その表情は、

「……レノス」
「何だ?さっきはレノスじゃないとしきりに言っていたくせに、…」

そこまで言って気づいたのか、ロキは驚いたようにナマエの方に顔を向けた。

「まさか、」

分かるのだ。俺でも感じる。今でも忘れない、これは彼の―――――

瞬間、強い力の波動を感じた。その痛い程の力の強さに、思わず体が震える。それでも自然と口角が上がった。



20160423

誰も知らない彼のこと



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