楽屋に向かう途中、嫌な光景が飛び込んできた。
真衣と、スタッフらしき男の姿。
立ち話にしてはなんだか距離が近く、男の方が真衣に体を近付けている感じだった。
「……………」
ぐしゃ、と、持っていた紙を思わず握りつぶした。
早足で近付くと、男の手が真衣の頭に伸ばされたので、咄嗟にその手を掴んだ。
「触んな」
自分でも驚くくらい低い声が出て、男が小さく悲鳴を上げた。
「アンタ何してんの?今触ろうとしてましたよね?」
男の腕を掴む手に力が入る。
誰の許可を得て、俺の大切な人に触ろうとしてんの?
「い、いや、埃が…」
「埃?……付いてねぇけど?」
たぶん今の俺は、般若みたいな顔をしていると思う。
真衣に触れようとしたことも、真衣に触れるために嘘を付いたことも、全てが許せない。
男が情けなく悲鳴を上げたけど、ビビるくらいなら最初から真衣に近付くな。
「ひ、照!もういいから、行こう?」
正直まだこの男に言いたいことがあったけど、真衣が言うので仕方ない。
ていうか俺、真衣を怖がらせちゃったかな?
もしそうなら、悪いことをしたな。
最後に男を一睨みしてから、真衣の腰に手を回して歩き出す。
もしあのまま、男の手が真衣に触れていたら。
想像するだけでも嫌になる。
ねえ真衣、お願いだから、俺の目の届く場所にいてね。