「……ん?」
廊下を歩いていると、なんだか男性スタッフに絡まれているような雰囲気の真衣を見つけて、思わず声が出た。
人を見た目で判断するのは良くないけれど、なんだか軽そうな見た目の男性だ。
足早に近付いて、会話を遮るように割って入った。
「お疲れ様です。真衣、何してるの?」
「あ…阿部ちゃん」
ちらっと男性を見ると、見かけない顔のスタッフさんで。
ああ、新人さんかな?なんて思いつつ、確認作業に入る。
「見かけないスタッフさんですね。お名前伺ってもいいですか?」
「え…あ、北野です…」
「北野さんですね。新人さんですか?」
「あ…はい」
ふうん、新人の北野さんね。
まあ新人なら、この暗黙のルールを知らなくても仕方ないか。
でも、これからはしっかり覚えておいてね。
「『メンバーのいない所で伊藤真衣に接触するな』」
隣で真衣が小さく、えっ、と声をあげたのが聞こえた。
そりゃそうだ、真衣本人はこんなルール知らないんだから。
けど、真衣はそれでいい。
知らないところで、俺たちに守られていてくれればいい。
「じゃあ、失礼します。ご縁があれば、またご一緒できるといいですね?」
なんて言って、首を傾げる。
もちろん、「ご一緒できるといいですね」なんて思ってるわけもなくて。
いつもなら「あざとい」と言われる仕草だろうけど、たぶん今の俺は全然あざとくない。
顔と名前は覚えたから、あとでメンバーに共有しないとね。