結論から言うと、小さな女の子は真衣だった。
とてつもなくファンタジーだが、最初に部屋に到着していた真衣が、なんらかの理由で小さくなった…というより若返ってしまったようだ。
確かに部屋をきちんと見てみると、真衣の鞄は確かにあるが本人はいない。
色素の薄い瞳は、見慣れた彼女のもので間違いない。
極めつけは、この子の名前だ。
まだ舌足らずではあったが、間違いなく「いとうまい」だと言った。
全ての状況が、この女の子が真衣だということを物語っていた。
こんな状況で撮影なんてできないが、更新のスケジュールもあるので撮らないわけにもいかない。
本当に信頼できる昔からのスタッフさんにだけ事情を話して、急遽半数での撮影に変更してもらった。
半数なら、真衣がいなくても別段不思議はない。
俺は初対面で泣かれたという理由から、阿部によって半強制的に撮影組にさせられた。
あと撮影組は、岩本、目黒、ラウール(三人とも背がデカくて怖がられるから)、そして向井(うるさくて泣かれそうだから)。
背がデカくて怖いのは分かるけど、顔がデカくて怖いは納得がいかない(いや、別にデカくねぇけど!)。
撮影組にされた四人は寂しそうにしょんぼりしていたが、撮影はいつも通りきちんと終えたので、足早に部屋に戻る。
そして部屋の扉を開けると、そこにはなんともまぁ羨ましい光景が広がっていた。
「俺のお名前言えるー?」
「んと、……しゃく、?」
「そう、正解!じゃあこのお兄さんは?」
「あえちゃ、!」
「そう、阿部ちゃん。じゃあこっちは?」
「…りょーた?」
「正解!最後はこのお兄さん!」
「……しょった!」
「ぐはぁ…!」
あ、翔太が死んだ。
…って、そうじゃなくて!
「お前らなに羨ましいことやってんの!?」
「あ、おかえり」
おかえり、じゃねぇ!
俺たちが撮影に勤しんでいる間、コイツらはなんと真衣に自分たちの名前を覚えさせることに成功していたようで。
なんだ最後の「しょった」って!
可愛すぎるにもほどがあるだろ!
「まあまあ、そう怒らないで。ちゃんとみんなの名前も教えたから」
舘さんがそう言って、ね?と真衣と目を合わせて微笑むと、真衣はにこにこしながら、う!と嬉しそうに頷いた。
…おいおい、なんだこの天使は。
先程まで赤かった目や頬もすっかり元の白さを取り戻していて、一体何があったらこの一時間ほどでここまで打ち解けられるんだ。
「はい、じゃあこのおじ…、んん!お兄さんの名前覚えてる?」
「おい今おじさんっつったろ」
「…う、!……うっか!」
………はい、終わった。
もう佐久間におじさんって言われたことなんてどうでもいい。
目の前の天使が可愛すぎて、ちょっとどうにかなりそうです。
「じゃあこの人は?」
「……めぇ!」
「……俺、今日からめぇに改名する」
「このお兄さんは?」
「ひぃ!」
「………」
めめは涙を流しながら改名宣言をし、照は可愛さを処理しきれないのか眉間に皺を寄せて目を瞑ってしまった。
おいおい、そんな顔してるとまた真衣が怖がるよ?
「こっちのお兄さんは?」
「………こじ、?」
「ま…真衣姉〜!」
「康二、ストップ!」
「じゃあ最後、一番大きなお兄さんは?」
「………らぁう?」
「〜〜っ!」
康二がいつもの勢いで真衣に抱きつこうとして照に止められ、ラウールはあまりの可愛さに天を仰ぐ。
本当にこの天使は、小さくなってしまっても俺たちの心を鷲掴みにする天才だ。
「え、この短時間で覚えるのすごくない…?」
「ね。さすが真衣って感じ」
「にしてもホントに可愛い。可愛すぎる。この世に存在していいの?こんな可愛い天使」
「真衣ちゃん。もっかい俺のこと呼んで?」
「めぇ!」
「可愛い…」
「あっ、めめズルいぞ!真衣、俺は!?」
「しょったぁ」
「ぐはぁ…!」
「お前何回その反応すんだよ(笑)」
真衣はすっかり俺たちのことが怖くなくなったのか、にこにこしながら男九人に取り囲まれている。
傍から見たら、ちょっと危ない光景かもしれない。
真衣がいつ元に戻るのか分からないけれど、戻るその時まで、このにこにこの天使を俺たちが守ろうと思う。