ナマエの部屋の窓枠には、くじの当たったアイスの棒が吊るされている。実際にそれを食べてからは随分経っていたのだが、捨てるタイミングを失ってからそこにずっと吊るされていた。
今では部屋の一部だ。だから、ナマエは然程その光景に違和感を抱いていなかった。
「これインテリア?」
「え? まあ……そうかな」
ホットケーキパーティのためにナマエの部屋を訪れた暴力の魔人は、それを見つけると不思議そうに首を傾げた。ナマエはホットプレートを出しながら、曖昧に返事をした。
「交換しに行かないの?」
「買ったコンビニ、潰れたんだ」
「あらら残念!」
ナマエがホットケーキミックスをボウルに開けようとするのを、暴力の魔人は頬杖をついて眺めていた。「わぶ!」粉が散ってナマエが咽せている。それを彼は不思議と冷静に見ていた。
机上に置かれたトッピングは充実していた。申し分なく、いいホットケーキパーティになるだろう。しかし、それを一通り眺めた暴力の魔人は、不意に「アイス乗っけたいな」と呟いた。
「え、アイス?」
「アイス。カップのやつ」
「アイスはうちにないよ」
「俺が買ってくるからさ」
「……だったら僕も行きたい。マキマさんに連絡してみる」
「オッケ〜」
そうして、マキマから許可をもらった2人の魔人は、再び街へと繰り出した。
街は晴れていて静かだった。人通りもそう多くはない。割に、どこからか食べ物のいい匂いがしていた。そんな日だった。
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