01


「咥えて」
ベッドの上にへたっと足を折りたたんでしゃがみ込むこなたの目の前に、白龍さまのむくむくと成長しかけたそれが迫ってくるを見て、ごくりと唾を呑んだ。 きょろきょろを目を泳がせながら白龍さまを見上げると、彼はいつもと変わらぬ王さまらしい毅然とした態度でこなたのことを見下ろしている。いつまで経っても口を開こうとしないから、彼は少し目を細めて急かしてきた。「早く」だなんて、そんなこと言われても今この部屋にはこなたの主治医のせんせいが、このあとの健診のために自分の荷物を広げているところで……他のひとがいるのに当たり前のように始めようとする白龍さまが何を思ってそんな行動に出たのかが分からなくて、固まってしまったのだ。こなたは自分のお顔が真っ赤になるのを感じながら、小さく口を開いた。
「せんせいが、みてる……」
「それがどうかしましたか?」
「……」
今の白龍さまは話が通じないモードだった。こなたは困り果てた。白龍さまは一度やると決めたらやり遂げるまで止まらないひとだ。このままだとこなたは本当に先生の見ている前で恥ずかしいことをしなくちゃいけないことになる。なんというかそれは、恥ずかしいからやだ。いくら白龍さまの言うことは絶対だからって、言いなりばっかになりたくない……の。だから、なんとか白龍さまを説得して、がんばって、後でにしてもらわないと、こなた、こなたは、
「赤琉、ほら」
「で、でも……」
「はぁ……聞こえませんか?早く口を開けろと言っているんです」
「ん、んぁっ……!」
とうとう痺れを切らした白龍さまが、こなたのお口に指を突っ込んで無理やり大きく開かせると、抵抗する間もなく待ちくたびれたそれがこなたのお口の中に侵入してきた。舌に触れる温かい白龍さま。なんとも言えない独特な味と匂いに包まれると同時に、いっきに喉の奥まで押し込まれて、頭も喉もびっくりして何度か咳こんでしまった。けれど白龍さまは遠慮なく後頭部を両手で掴んで、腰を動かし始めた。
「ぅ、うぅ♡」
「ふふ、最初からそうしていればいいものを」
「っうぇ、うぐ……♡」
「ほら、ほら……。どうせあなたは俺に逆らえないんだから……そうでしょう?でも、恥じらうあなたも可愛いな。俺に辱められるのが好きなこと、知っていますよ。俺がそう教え込んであげたから」
両耳を塞がれているせいで、口の中の水音がダイレクトに脳みそに響いて頭がくらくらする。早くも酸欠になって息が苦しいけど、白龍さまに教えてもらった通りに必至に舌を絡めるこなた。白龍さまの液が少しずつ喉を通過していくことで、だんだんとくらくらが強くなって、体の奥がむずむずしてきた。自分の体を支えるのがやっとになり白龍さまのお洋服を掴んで握りしめていると、いつの間にかベッドに腰掛けて近くで様子をみていた先生が、苦しそうにするこなたを見てにこやかに笑ってる。
「相変わらず凄まじい精力だねェ、龍の体液ってのは。赤琉がもうこんなになってる」
じっと観察してくるせんせいについ気を取られて一瞬気を緩めた途端、白龍さまが「よそ見しないで」と前髪をくしゃりと握りしめてきた。ご、ごめんなさい。気を取り直して白龍さまにしがみつくこなた。
「あぅ……ぅ♡」
「静六殿。なに見ているんですか」
「なにって、見学だよ。それ以外にやることあるかい?」
「ん、んぁ……う♡」
「……そうですね。人払いは?」
「それは君の家臣の仕事だろう?俺は知ったこっちゃないねェ」
「ふん……気の利かないひとですね」
「横暴だなぁ。なんのために来てやったと思ってんだ」
「!ぅ、あ……♡」
二人の会話に気を取られているすきに、お口のなかに温かくて白いものがいっぱい出てきた。こぼしちゃうと怒られちゃうから、白龍さまがようやくお口を解放したあとに両手で口元を塞いで一生懸命飲み下す。すると、さっきまでより格別に体に変化がうまれ、ドカンと心臓が動き出すような、ドクドク全身が波打つような、強い色欲に襲われた。目をぐるぐるさせながら肩で息をするこなたに、白龍さまは優しく微笑んで頭をなでなでしてくれた。
「可愛い赤琉、これからたくさん気持ちよくしてあげますからね」
「……う、うん♡」
「じゃあ、静六殿。準備が出来たようならあとはお好きなように。俺はそこで見ているので」
「……へ?」
予想外なことを言う白龍さまに、ついぽかんと口が開いた。さっきので溢れ出るよだれが反動で口端から垂れてしまったのを、「もったいねぇ」と言いながらすかさず人差し指ですくって不敵に微笑むせんせい。せんせいと、やるの?白龍さまじゃ、ないの……?すっかりそのつもりでいたのに、いざそんなことを言われたら困惑して不安な気持ちが生まれてしまう。白龍さまのにおいでいっぱいになったのに、お預けなんて、やだ。心よりも体が白龍さまを欲してるのに。白龍さまはそんなこなたを置いてけぼりにするように、せっせと着崩れたお着物をただし、ベッドから離れていく。行ってしまう前に思わず手を掴むと、白龍さまは不思議そうにこなたを振り返った。
「なんです?」
「こ、こなた、……」
「はい?」
「こなた、白龍さまが、いい……」
おどおどしながら白龍さまの手を両手で掴んで引き寄せようとするけど、あんまり力が入らなくて意味がなかった。こなたの言葉を聞いて、また微笑む白龍さまとせんせい。
「ああ、少し効き過ぎたようですね。でも大丈夫。あとは静六殿におまかせすれば……」
「や、やあだ。白龍さまがいいの……」
喋るごとによだれが溢れて、視界も泪のせいで霧がかってくる。全身が汗ばんで、すっかり濡らされ、身動ぎすることもためらうほど。白龍さまの体液をのんだら、すぐにこうなってしまうのだ。自分ではどうすることもできない、強い欲求。そのことを白龍さまも分かっているから、今はただこなたを説得するために優しく頭を撫でて目尻の泪を舌ですくう。
「赤琉。あなたは今から静六殿に全身くまなく診てもらうんです。これは、そのための事前準備。これまでにも何回かやってきたことだ。怖くなんかないですよ」
「で、でも、白龍さまがいい……」
「聞き分けのない子ですね」
「……うう」
白龍さまは、その大きな手でこなたの頬を撫でつけて、くちびるの隙間から二本の小さな牙をちらつかせた。彼はれっきとした龍の王族。こなたのような身分の低い人間は本来口を聞くのも不敬にあたる……らしい。こなたは物心ついた時には白龍さまの所有物の証である首輪をつけられていたから、そういった世界の事情についてはよく知らないけど、そうじゃなくてもこなたは白龍さまに見つめられると何も言えなくなってしまう。
「いいですか?俺はあなたの体を大事にしたくて、大切にしたくて言っているんです。あなたはとってもとっても貴重な血の持ち主なんですから……健康でいてもらわなくては」
両手で頬を包んで、優しく優しく語りかけてくる。ゆっくり瞬きをする彼の瞳は、人間のこなたとは全然違う透き通った綺麗な青で、目を合わせた途端に惹き付けられるような不思議な何かを感じる。今日もまた、磁石のように目が離せなくなってしまった。なおさら今は身体中が緊張していて、普段通りに反応できない。白龍さまの声が脳に直接届くような。
「静六殿は鬼の中でも名のある名医です。彼の体液は万病に効くという……この話はもう何度も何度もしています。あなたのため、なんですよ。赤琉、わがままは後でたくさん聞いてあげますから……分かりましたか?」
白龍さまはこなたが頷くしかないということを分かっているから、そこまで言うとこなたの返事を待たずに手をそっと離して今度こそいってしまった。ベッドから十歩ほどの距離を瞬く間に移動して、そこに置かれたソファーに腰掛けて足を組む。白龍さま……。諦めきれなくて名前を呼ぼうと開いた口から、またも溢れ出るよだれに一瞬気を取られ、その隙を縫ってせんせいに捕まえられてしまった。逃がすまいとこなたの体を抱きとめると、口を塞いで美味しそうにごくごくよだれを飲み干していく。邪魔しないでほしいのに……せんせいのばか。泪が止まらなくなってしまった。
「やぁ、やだぁ、……うう」
「こんな状態にすんなら、一回抱いてやりゃいいのに……。大丈夫、すぐ収まるよ。さすがに白龍の『強さ』には及ばねぇけど、俺と交合うのも結構好きだろう?おまえさんは」
「う……うぇぇ……」
「おお、よしよし。さみしいねェ……大丈夫、大丈夫。俺はあいつみたいに冷たくしねぇから安心しな。ちょっと頑張りゃ、わがままたくさん聞いてくれるってさ」
「ひっく、……う、うん……ぅう」
せんせいはこなたをよしよしとなだめながら、お履き物を脱いでベッドに乗りあがってきた。わんわんと泣くこなたを組み敷いて、どこからともなく引っ張り出してきた細い糸を噛んで、こなたの両手首を胸の上に集めるとしばるようにぐるぐると巻き始める。視界に煌めく金色のきらきらな糸。枕元の灯篭の光に反射するのが綺麗でじっと眺めていると、だんだんと落ち着いてきたような気がする。せんせいはその様子に微笑みながら、糸の端を起用に固結びした。いつ見てもお医者さんらしい手さばきだ。細い糸なのに全然手首は痛くない。
「いい子だねェ、落ち着いた?」
「……う……」
「ふふ。今日は暗いのと明るいのと、どっちにしようか?好きに決めていいぜ」
「……く、暗いの……がいい」
「分かった。じゃあ目を閉じてくれ」
言われた通りに目を閉じると、まぶたの向こうにも一切の光を感じないほど目の前が真っ暗闇に包まれた。白龍さまに突き放されたのが悲しくて、やけになって暗いのがいいって言ったけど……少し怖くなっちゃった。胸の上で両腕を抱くように縮こまると、せんせいの声がすぐ耳の近くから聞こえてくる。
「大丈夫、大丈夫。怖くない、怖くない」
「……ん……」
「そんじゃ、始めていくとするか。準備はいいか?」
「……う……、うん……」





「……ん、ん♡」



「ぁ、あっ♡やぁ、やだ♡せんせぇ……っ♡」
「いい子、いい子。……いい感じだ、もっと気持ちよくなろうねェ……」



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