『スグ!あんたもう何年も顔見せないで今頃どこほっつき歩いてんのよ!いい加減帰ってきなさいよ、じーちゃんたち悲しみに暮れて死んじゃってもいいの!?』
「ねーちゃん、うるさ……」
今日明日とアカデミーが休みなので、当然のようにセキルと待ち合わせてホテルに入ったのが数時間前。
『それで、本当はどこにいるのよ。そんなに言いにくいなら秘密にしてあげるから打ち明けなさい』
「パルデアのチャンピオンランクなってた」
『…………。ハァァ!?何よそれ!すごいじゃない!あんた今度はパルデアのチャンピオン倒したの?じーちゃん!ばーちゃん!聞いて!スグが!』
『ていうか、パルデアのチャンピオンって今アオイに変わったんじゃ?この前あたしに嬉しそうに連絡くれたのよ』
「……」
『……あーー、あんた、わざわざパルデアまでアオイ倒しに行ったんだ?』
「……こっち深夜だから、そろそろ切る」
『ほんっと、懲りないわねぇ〜。そんなふうに延々と過去の女に縛られてるんじゃ、いつまで経っても彼女出来ないわよ!?』
「うっさいなぁ、ほっといて!バカ」
通話が終了したあと、ふと後ろを見るとセキルが興味津々そうに
「あっ、れ……セキル、も、もう寝たんじゃ?」
「スグリくんがいないから起きた……一緒じゃないと寝れないのに……」
「ごめ、ごめん、電話が来て、うるさいと思ってさ」
「……お姉さま?」
「うん」
「スグリくん、お姉さまいるんだね。知らなかった」
「そういやそうだっけか。とっくに話してるもんだと……」
「んーん。初耳。……お姉さま、スグリくんのことスグって呼んでたね。かわいい」
「べつにかわいい……くはないべ」
「……スグ……スグくん……。私も、スグくんって呼んじゃおうかなぁ」
「それにしても、こんな時間に、電話……?どこにお住いなの?」
「さあ、どっかその辺の都会ってのは知ってんだけど……詳しくは覚えてねぇや。んでも、今電話さ寄越してきたのはおれんちの実家で、キタカミってとこ……知ってる?」
「キタカミ……。わかんない。どの辺りにあるの?」
「シンオウ地方の下らへん」
「ふぅん。行ったことないからなぁ」
「一応カントーの上でもある」
「ふぅん……」
「ちょっと行ってみたいかも。スグくんのおうち」
「うーん、しばらく帰ってないから顔出し辛いんだよな。ねーちゃんはうるさいし……そこにセキルまで連れてったら根掘り葉掘り聞かれまくってもう、わやなことになりそう」
「でも、私だってスグくんのおうちの方にご挨拶したいもの」
「ご挨拶って……」
「スグくんを私にくださいなって」
「……照れるなあ。でもセキルを貰うのはおれの方だからな」
「それよりセキル、誕生日さ近いよな。おれお祝いしたいからさ、どっか食べたいところとか、欲しいものとか……なんでも言って」
「ん〜……」
「スグくんがくれるものならなんでも嬉しいよ」
「」
「……ねーちゃんの声、どのくらい聞こえてた?」
「……部屋にいても聞こえた」
「ははっ、ほんと、うるさいよな……昔からああだ」
「……」
「……じゃあ話もさ、全部聞こえてた?」
「……ん」
「スグくんってあの子と、アオイ先生と……お付き合いしてたの?」
「は?いや、してないけど」
「そうなんだ……過去の女、とかって聞こえたから……」
「ねーちゃんが紛らわしい言い方しただけ」
「まあ、言っちまえば昔の話なんだけど、おれとアオイがお互い学生だった頃、林間学校で一緒になって……その時に、ねーちゃんとアオイに仲間外れにされたことがあってさ」
「……」
「今思えば、たまたまタイミングが悪かっただけで、本当に悪気なんて無かったんだろうけど……当時のおれには理解できなくて」
「アオイは昔から強くて、最初は全然バトルでも勝てなかったし。おれがずっと前から好きだったもんも取られちまうし」
「……」
「だから、負けることがトラウマになって。勝つこと以外考えられなくなって」
「でも、今更勝てるようになっても、あの時のおれは弱いままなんだよな」
「……スグくんが昔から好きだったものって、なんのこと?」
「ああ、それは」
「スグくん、鬼が好きなんだ?」
「……」
「私とどっちが好き?」
「そんなんセキルに決まってるべ……所詮昔の話さ」
セキルはおれの頭を胸元で抱きしめるように、腕を無理やりシーツの間に突っ込んできた。
「私は今こうして話を聞いただけだけど……スグくんの心の中には、まだその時の小さいスグくんがいるんだね」
「……」
「私も一緒によしよししてあげる」
セキルのあったかい手がおれの頭や背中を撫で付けて、セキルのやさしい声がおれの頭や胸の中にじんわりと響いた。
ずっとずっと、そんなふうに、あの時のおれを慰めてくれる存在が欲しかった。セキルが、セキルみたいな人が、あの時おれのそばにいてくれたら良かったのに。
全部今更なのに、涙が出た。ちょっと嗚咽も出た。でもこれは、悔し涙じゃない。
「ねーちゃん、うるさ……」
今日明日とアカデミーが休みなので、当然のようにセキルと待ち合わせてホテルに入ったのが数時間前。
『それで、本当はどこにいるのよ。そんなに言いにくいなら秘密にしてあげるから打ち明けなさい』
「パルデアのチャンピオンランクなってた」
『…………。ハァァ!?何よそれ!すごいじゃない!あんた今度はパルデアのチャンピオン倒したの?じーちゃん!ばーちゃん!聞いて!スグが!』
『ていうか、パルデアのチャンピオンって今アオイに変わったんじゃ?この前あたしに嬉しそうに連絡くれたのよ』
「……」
『……あーー、あんた、わざわざパルデアまでアオイ倒しに行ったんだ?』
「……こっち深夜だから、そろそろ切る」
『ほんっと、懲りないわねぇ〜。そんなふうに延々と過去の女に縛られてるんじゃ、いつまで経っても彼女出来ないわよ!?』
「うっさいなぁ、ほっといて!バカ」
通話が終了したあと、ふと後ろを見るとセキルが興味津々そうに
「あっ、れ……セキル、も、もう寝たんじゃ?」
「スグリくんがいないから起きた……一緒じゃないと寝れないのに……」
「ごめ、ごめん、電話が来て、うるさいと思ってさ」
「……お姉さま?」
「うん」
「スグリくん、お姉さまいるんだね。知らなかった」
「そういやそうだっけか。とっくに話してるもんだと……」
「んーん。初耳。……お姉さま、スグリくんのことスグって呼んでたね。かわいい」
「べつにかわいい……くはないべ」
「……スグ……スグくん……。私も、スグくんって呼んじゃおうかなぁ」
「それにしても、こんな時間に、電話……?どこにお住いなの?」
「さあ、どっかその辺の都会ってのは知ってんだけど……詳しくは覚えてねぇや。んでも、今電話さ寄越してきたのはおれんちの実家で、キタカミってとこ……知ってる?」
「キタカミ……。わかんない。どの辺りにあるの?」
「シンオウ地方の下らへん」
「ふぅん。行ったことないからなぁ」
「一応カントーの上でもある」
「ふぅん……」
「ちょっと行ってみたいかも。スグくんのおうち」
「うーん、しばらく帰ってないから顔出し辛いんだよな。ねーちゃんはうるさいし……そこにセキルまで連れてったら根掘り葉掘り聞かれまくってもう、わやなことになりそう」
「でも、私だってスグくんのおうちの方にご挨拶したいもの」
「ご挨拶って……」
「スグくんを私にくださいなって」
「……照れるなあ。でもセキルを貰うのはおれの方だからな」
「それよりセキル、誕生日さ近いよな。おれお祝いしたいからさ、どっか食べたいところとか、欲しいものとか……なんでも言って」
「ん〜……」
「スグくんがくれるものならなんでも嬉しいよ」
「」
「……ねーちゃんの声、どのくらい聞こえてた?」
「……部屋にいても聞こえた」
「ははっ、ほんと、うるさいよな……昔からああだ」
「……」
「……じゃあ話もさ、全部聞こえてた?」
「……ん」
「スグくんってあの子と、アオイ先生と……お付き合いしてたの?」
「は?いや、してないけど」
「そうなんだ……過去の女、とかって聞こえたから……」
「ねーちゃんが紛らわしい言い方しただけ」
「まあ、言っちまえば昔の話なんだけど、おれとアオイがお互い学生だった頃、林間学校で一緒になって……その時に、ねーちゃんとアオイに仲間外れにされたことがあってさ」
「……」
「今思えば、たまたまタイミングが悪かっただけで、本当に悪気なんて無かったんだろうけど……当時のおれには理解できなくて」
「アオイは昔から強くて、最初は全然バトルでも勝てなかったし。おれがずっと前から好きだったもんも取られちまうし」
「……」
「だから、負けることがトラウマになって。勝つこと以外考えられなくなって」
「でも、今更勝てるようになっても、あの時のおれは弱いままなんだよな」
「……スグくんが昔から好きだったものって、なんのこと?」
「ああ、それは」
「スグくん、鬼が好きなんだ?」
「……」
「私とどっちが好き?」
「そんなんセキルに決まってるべ……所詮昔の話さ」
セキルはおれの頭を胸元で抱きしめるように、腕を無理やりシーツの間に突っ込んできた。
「私は今こうして話を聞いただけだけど……スグくんの心の中には、まだその時の小さいスグくんがいるんだね」
「……」
「私も一緒によしよししてあげる」
セキルのあったかい手がおれの頭や背中を撫で付けて、セキルのやさしい声がおれの頭や胸の中にじんわりと響いた。
ずっとずっと、そんなふうに、あの時のおれを慰めてくれる存在が欲しかった。セキルが、セキルみたいな人が、あの時おれのそばにいてくれたら良かったのに。
全部今更なのに、涙が出た。ちょっと嗚咽も出た。でもこれは、悔し涙じゃない。