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「あのね、私の家、本当はカントーにあるんだけど、私が育ったのはアローラの別荘で……」
「別荘?はぁ、やっぱりお金持ちだよな、セキルは」
「ふふん。すごいでしょ」



「でもすごいのは私の両親だけで、私自身は何かに秀でているわけではないの」
「……いきなり、何を」
「だから別荘に単身で島流しにされたの。ずっと放ったらかしにされて、家庭教師から習うのも極一般的な常識だけで……暇つぶしのためにひたすら編み物とかしてた」
「……」
「放ったらかしとは言っても、監視の目は常にあって、だから、ずっと」

島流し?家族からの扱いを自らそう例えるなんて、すごい家庭だな。それに、自分の話をしているのにまるで他人事のようだ。経済的な認識の差と表現していいのか?これを。おれは何を言えばいいのかわからなくて、黙ってセキルの話を聞いた。


「一度別荘から家出した時、物分りのいい使用人からスマホロトムを渡されたの。餞別だと思って喜んで受け取ったら、両親がGPSから居場所を割り出して、三日も経たないうちに連れ戻されちゃった」
つい口が開いてしまうようなエピソードを、淡々と話す人だ。
「……え、もしかして、セキルがスマホ持たないのってそういう理由だった、の?」
「もちろん、両親の息がかかっていないものじゃなく、私が自分で買えば問題ないんでしょうけど……外でスマホを持つの、ちょっとトラウマになっちゃったよね」


「両親は私の命は大切にしてるけど、私のことは無関心だから、今もアローラで呑気に暮らしてると思ってる。でもね、たまにアローラに顔を出すこともあって……その時だけは絶対に別荘に帰らなきゃならないの。使用人の命がかかってるからね」



「おれさ、セキルのご両親に、挨拶したい」
「…………え、」
「一度は顔見せとかないと、今後のためにもさ」

「……やめたほうがいいかも。少なくとも私が二十歳になるまでは。私、スグリくんとお別れしたくないもん」
「……そんなに深刻なんだ?」
「うん。あの人たち、アローラの幼なじみにすら警告文送り付けてたからね。私に手を出したらコロスって」
「ころす……!?」
「意訳だよ、意訳」

「だから、あの時友達が私と手を繋いでくれなかった理由、本当はわかってたんだ。スグリくんが教えてくれたのも、たぶんその通りではあるんだけどね」


「それを考えたら、スグリくんは本当の本当に手出しちゃってるから、すっごく危ないね!」
「あはは、笑いごとかな、これ」



「もし、ある日突然私がいなくなったら、私の両親に攫われた可能性が高いから、あんまり心配しなくてもいいよ」
「心配はするべ……!?」
「大丈夫だよ。私、絶対にスグリくんのところに帰ってくるから、心配しないで」
なにこの会話?フラグか?


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