二度目の挑戦で、おれは晴れてパルデアのチャンピオンランクとなった。当たり前だ。新しい環境において、同じ相手に同じパーティで二度も負けるわけがない。その相手があいつならば尚更だ。
「わあ!ほんとに勝っちゃったの!すごい!おめでとう!すごい!…………わ、私のこと置いてかないでっ!ずっと、ずっと、パルデアいなきゃだめっ」
「わあ、セキル、な、泣かないで……」
アオイを負かしたあと、「久しぶりに戦ったんだし、このあとご飯でもどう?」と誘われたのは……なんだったんだろう。は?急に何で?と思ったが、セキルと会う約束をしていたので当然断った。それに、アオイにはバトルで勝つためだけに会いに来たのだ。そう言ってさっさとポケモンリーグをあとにした。が、その時のあいつの表情が妙に気になる。まさかまだおれと友達気分でいるのか?ちょっと胸糞悪い。
「あのね、私、アカデミーやめようかな〜って」
「え……?なんで?」
「だって、卒業するまでの間スグリくんのこと待たせちゃうし……だったらいっそのことやめちゃった方が」
「やめないで!?おれのために、そこまでしなくていいから!おれ、ちゃんと待つから!」
+
「スグリくん、あのね、わたし、はじめてだから、なんも、わからなくて、だから、ど、どうすればいいのかな…………?」
「おれも…………わかんねぇ」
今日はハッコウシティでデートをした。たぶんパルデアで一番近代的なザ都会で、おれの故郷とも比べものにならないくらい発展した街だ。そこでセキルのお買い物に付き合ったり、ご飯を食べたり……(彼女は基本的にいつも上品な振る舞いで、いかにもお金持ちのお嬢さまって感じがするけど、お買い物をする時にはそれがさらに顕著で、今日だけで信じられない桁のものを買い漁っていたのでおれは恐怖で震えている)……今の俺なら決して払えなくはない金額だったけど、セキルはおれが財布を出すよりも前に即決でお会計にまわすから、奢るひまもなかった。なのでせめて食事の時だけは全力でおれが払った。
……これが日中までの話。
一日中街をまわって足も疲れてきたからと、日が沈んでしばらくした頃、このまま近くのホテルに泊まろうという流れになった。ちなみに、外観がめんこいという理由でセキルが選んだホテルは当然のようにラブホテルだった。セキルはそれに気づいているのかいないのか、ただ「かわいいかわいい」と建物内の装飾に目を輝かせている。
一応言っておくけど、おれたちはまだ一度も夜を共にしたことがない。今日が初めての夜になる。今まではなんとなく、良い時間になったら自然と別れる流れになったから。健全か?
セキルは今は学生だし、翌日の授業のためにもまあそうあるべきなのだろう。だが、今日は違った。あまりにも楽しかったのか、セキルが今日は絶対に別れたくないと今にも泣き出しそうな顔で、磁石みたいにおれを離さなかった。わやめんこい過ぎた。おれも男なので、朝からそんな考えがチラついてはいたけれど、意を決して「んだば、ホテルさ泊まる……?」とおそるおそる提案してみたら、「泊まりたい泊まりたい泊まりたい!!!」とすごい勢いで乗ってきたので、呆気にとられてしまった。わやめんこい過ぎた。
「とりあえず、風呂さ入ろっか……おれ待ってるから、先いいよ……」
「う、うん……」
とりあえず、とりあえずな……といつも通りを装って彼女を風呂へ促す。セキルが出てくるまでの間、おれは人生で一番テンションがあがっていたかもしれない。そんな中でゴムの確認を忘れなかったことだけは自分自身を褒めてあげたいと思う。
「おまたせ……」
「ん。もう疲れたべ、先ベッド入っててもいいよ。おれもすぐシャワー浴びてくる」
「うん……寝ないで待ってるね」
おれは光の速さで全身を洗った。
風呂場から出るとセキルはベッドに寝転がり、おれのスマホロトムでなにやら動画を眺めていた。寝転がってもバスローブがはだけていないのはさすがセキルというところだ。楽しげな口調の声がスピーカーから聞こえてくるから、たぶんあれは、パルデアで有名な動画配信者の……えっと、おれも一回ジムで戦ったトレーナーの人のチャンネルだろう。
セキルはお金持ちなのに何故かスマホロトムを持たないから、おれのが気になって仕方ないようだ。そういうことなら買えばいいのに、理由を尋ねても「まだ私にははやいよー」とよく分からないことを言う。おれは欲しくてたまらなかったのになぁ。
「セキル、髪乾かさねぇと」
「んー……めんどくさい」
「おれがやるから、こっち来て」
「スグリくんがやってくれるの?やった!」
おれが声をかけると一瞬にして動画を閉じて、こちらに駆け寄ってくるセキル。あー、めんこいいきもの過ぎて今すぐにでも襲いかかりたい、くそ。
セキルのまっすぐに伸びたさらさらの髪をなるたけ丁寧に乾かしていると、バスローブの隙間から勝手に彼女の湿ったうなじやら白い肌が目に入って心臓が持たない。今から彼女と寝るんだ、おれ。この部屋の中にたったひとつしかないベッドの中で。
「ねえ、……もっとくっついてもいい?」
「……うん、おいで」
お互い髪を乾かし終わったあと、おれたちは並んでベッドに入った。心臓がドックンドックンうるさくて聞こえていないか心配だ。
ていうかなに当たり前のようにベッドに入ってんだ、おれ!?まさかこのまま朝まで手出さないわけないよな、おれ!?しまった、完全にタイミングを逃した気がする。どうしよう、ここからどうやって切り出せばいい?
「ねーね、スグリくんの手、あったかいね」
「……」
おれはガバッと飛び起きた。
「だめだ……我慢できねぇ」
「わ、どうしたの」
おれは勢いのままに飛び起きて、そのままセキルの方を振り向いた。枕のそばに手をついて、不思議そうにおれを見あげるセキルに意を決して口を開く。
「セキル、……おれ……セキルとしたい」
「……なにするの?」
「それは聞くもんじゃねぇべ……」
予想通りというべきか、彼女はピンと来ていない様子で…………。あ、ちがうこれ。その顔は、しらばっくれてる顔だ。おれよりも真っ赤っかで、目が泳いでて、わや分かりやすい。ちょっと安心した。
「恋人になったら、することさ、あるよな?」
「……」
「……だめ?」
「だ、だ、……だめじゃない……」
セキルは言いながら起き上がった。恥ずかしくて顔を見てられないのか、一旦おれの肩に顔面を擦りつけてくる。それはまるでニャオハが甘えてくる時のような仕草で、わやめんこい過ぎた。
おれはセキルの両肩を横から優しく掴んだ。再度おれの顔を見るセキル。その視線はこのあとの行動を期待するかのように唇に標準を合わせている。
「セキル……いい?」
キスしても。あまりにも情けない声だったけど、精一杯問いかけたらセキルは少し笑って自分から近づいてきた。
「わあ!ほんとに勝っちゃったの!すごい!おめでとう!すごい!…………わ、私のこと置いてかないでっ!ずっと、ずっと、パルデアいなきゃだめっ」
「わあ、セキル、な、泣かないで……」
アオイを負かしたあと、「久しぶりに戦ったんだし、このあとご飯でもどう?」と誘われたのは……なんだったんだろう。は?急に何で?と思ったが、セキルと会う約束をしていたので当然断った。それに、アオイにはバトルで勝つためだけに会いに来たのだ。そう言ってさっさとポケモンリーグをあとにした。が、その時のあいつの表情が妙に気になる。まさかまだおれと友達気分でいるのか?ちょっと胸糞悪い。
「あのね、私、アカデミーやめようかな〜って」
「え……?なんで?」
「だって、卒業するまでの間スグリくんのこと待たせちゃうし……だったらいっそのことやめちゃった方が」
「やめないで!?おれのために、そこまでしなくていいから!おれ、ちゃんと待つから!」
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「スグリくん、あのね、わたし、はじめてだから、なんも、わからなくて、だから、ど、どうすればいいのかな…………?」
「おれも…………わかんねぇ」
今日はハッコウシティでデートをした。たぶんパルデアで一番近代的なザ都会で、おれの故郷とも比べものにならないくらい発展した街だ。そこでセキルのお買い物に付き合ったり、ご飯を食べたり……(彼女は基本的にいつも上品な振る舞いで、いかにもお金持ちのお嬢さまって感じがするけど、お買い物をする時にはそれがさらに顕著で、今日だけで信じられない桁のものを買い漁っていたのでおれは恐怖で震えている)……今の俺なら決して払えなくはない金額だったけど、セキルはおれが財布を出すよりも前に即決でお会計にまわすから、奢るひまもなかった。なのでせめて食事の時だけは全力でおれが払った。
……これが日中までの話。
一日中街をまわって足も疲れてきたからと、日が沈んでしばらくした頃、このまま近くのホテルに泊まろうという流れになった。ちなみに、外観がめんこいという理由でセキルが選んだホテルは当然のようにラブホテルだった。セキルはそれに気づいているのかいないのか、ただ「かわいいかわいい」と建物内の装飾に目を輝かせている。
一応言っておくけど、おれたちはまだ一度も夜を共にしたことがない。今日が初めての夜になる。今まではなんとなく、良い時間になったら自然と別れる流れになったから。健全か?
セキルは今は学生だし、翌日の授業のためにもまあそうあるべきなのだろう。だが、今日は違った。あまりにも楽しかったのか、セキルが今日は絶対に別れたくないと今にも泣き出しそうな顔で、磁石みたいにおれを離さなかった。わやめんこい過ぎた。おれも男なので、朝からそんな考えがチラついてはいたけれど、意を決して「んだば、ホテルさ泊まる……?」とおそるおそる提案してみたら、「泊まりたい泊まりたい泊まりたい!!!」とすごい勢いで乗ってきたので、呆気にとられてしまった。わやめんこい過ぎた。
「とりあえず、風呂さ入ろっか……おれ待ってるから、先いいよ……」
「う、うん……」
とりあえず、とりあえずな……といつも通りを装って彼女を風呂へ促す。セキルが出てくるまでの間、おれは人生で一番テンションがあがっていたかもしれない。そんな中でゴムの確認を忘れなかったことだけは自分自身を褒めてあげたいと思う。
「おまたせ……」
「ん。もう疲れたべ、先ベッド入っててもいいよ。おれもすぐシャワー浴びてくる」
「うん……寝ないで待ってるね」
おれは光の速さで全身を洗った。
風呂場から出るとセキルはベッドに寝転がり、おれのスマホロトムでなにやら動画を眺めていた。寝転がってもバスローブがはだけていないのはさすがセキルというところだ。楽しげな口調の声がスピーカーから聞こえてくるから、たぶんあれは、パルデアで有名な動画配信者の……えっと、おれも一回ジムで戦ったトレーナーの人のチャンネルだろう。
セキルはお金持ちなのに何故かスマホロトムを持たないから、おれのが気になって仕方ないようだ。そういうことなら買えばいいのに、理由を尋ねても「まだ私にははやいよー」とよく分からないことを言う。おれは欲しくてたまらなかったのになぁ。
「セキル、髪乾かさねぇと」
「んー……めんどくさい」
「おれがやるから、こっち来て」
「スグリくんがやってくれるの?やった!」
おれが声をかけると一瞬にして動画を閉じて、こちらに駆け寄ってくるセキル。あー、めんこいいきもの過ぎて今すぐにでも襲いかかりたい、くそ。
セキルのまっすぐに伸びたさらさらの髪をなるたけ丁寧に乾かしていると、バスローブの隙間から勝手に彼女の湿ったうなじやら白い肌が目に入って心臓が持たない。今から彼女と寝るんだ、おれ。この部屋の中にたったひとつしかないベッドの中で。
「ねえ、……もっとくっついてもいい?」
「……うん、おいで」
お互い髪を乾かし終わったあと、おれたちは並んでベッドに入った。心臓がドックンドックンうるさくて聞こえていないか心配だ。
ていうかなに当たり前のようにベッドに入ってんだ、おれ!?まさかこのまま朝まで手出さないわけないよな、おれ!?しまった、完全にタイミングを逃した気がする。どうしよう、ここからどうやって切り出せばいい?
「ねーね、スグリくんの手、あったかいね」
「……」
おれはガバッと飛び起きた。
「だめだ……我慢できねぇ」
「わ、どうしたの」
おれは勢いのままに飛び起きて、そのままセキルの方を振り向いた。枕のそばに手をついて、不思議そうにおれを見あげるセキルに意を決して口を開く。
「セキル、……おれ……セキルとしたい」
「……なにするの?」
「それは聞くもんじゃねぇべ……」
予想通りというべきか、彼女はピンと来ていない様子で…………。あ、ちがうこれ。その顔は、しらばっくれてる顔だ。おれよりも真っ赤っかで、目が泳いでて、わや分かりやすい。ちょっと安心した。
「恋人になったら、することさ、あるよな?」
「……」
「……だめ?」
「だ、だ、……だめじゃない……」
セキルは言いながら起き上がった。恥ずかしくて顔を見てられないのか、一旦おれの肩に顔面を擦りつけてくる。それはまるでニャオハが甘えてくる時のような仕草で、わやめんこい過ぎた。
おれはセキルの両肩を横から優しく掴んだ。再度おれの顔を見るセキル。その視線はこのあとの行動を期待するかのように唇に標準を合わせている。
「セキル……いい?」
キスしても。あまりにも情けない声だったけど、精一杯問いかけたらセキルは少し笑って自分から近づいてきた。