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「なあ八虎」
「ん?」
「最近、僕の学校でニアちゃんと八虎が噂になってんねん」
「は!?」

昼休憩中、いつも通りコンビニから帰ってきたら、教室内で出迎えてくれた橋田がニコニコ笑いながらとんでもないことを言い出した。お、俺と橋田の彼女が噂になってる……?

「なんで……?」
「写真が出回っててなあ。ほら、八虎って見た目詐欺やん?写り方からしても疑うには充分なんよ」
「ちょ、待って待って。俺そんなん知らねーけど?」
「せやからニアちゃん、実は僕やなくて八虎みたいな見た目悪い子が好きなんやないかって、ここ最近よく話聞くようになって」
「……冗談だろ?何、写真?写真ってなんのことだよ?」
「写真は写真や」

あれ。なんか俺、疑われてね?橋田は言いながらこちらに歩み寄り、俺のことを上からじいっと見下ろしてくる。目が笑ってねえ。
もちろん俺には、そんな噂が立つ心当たりなど全くない。彼女と会うのはいつも必ず橋田が近くにいるときだ。会話こそすれ、たとえば手を繋いだことだって一度もない。誰かが噂をでっち上げでもしない限り、そんな馬鹿な勘違いは絶対に生まれないはずなのに。

「だから、それは一体いつの写真だって聞いてんだけど」
「ああ、今はその写真持ってないんよ。せやけど……八虎、なんか言うことあるんやないの?」
「いや、ないって。何もないって」
「ほんま?僕、八虎のこと信じてたんやけどなあ……」
「え、ちょまっ、そんな疑う?俺マジで記憶ないんだけど」
「記憶なくすほど、良いことしたん?」
「えっ」

明らかに疑われている。
橋田の様子はいつもと全く変わらない。それが逆に怖すぎる。

「ほんまに覚えてへんの?」
「だから、さっきからそう言ってんじゃん」
「しゃあないなあ、少しだけヒントや。八虎、結構前に駅の銅像前でニアちゃんとお喋りしてたやろ?」
「駅……銅像……?」

駅の銅像といえば、よく友人との待ち合わせで使っている……

「……あ!もしかして、あの時のか!」
「思い出した?」
「ああ、そうだそうだ!そういやあれ、新色さんだったわ!」

追い詰められる中ようやく心当たりが見つかって、俺はつい安堵した。
いつだったか、俺が友人と駅前で待ち合わせしている時に、たまたまそこでスカウトに絡まれていた新色さんに遭遇したことがある。初めは見過ごそうとした俺だが、結局は居ても立ってもいられなくなり彼氏面で声をかけたのだ。その時は俺たちはまだ初対面だったので、彼女が新色さんだったというのをすっかり忘れていた。もしその様子を橋田の学校の奴らが目撃していたのなら、勘違いするのも無理はない。
ギリギリのところで思い出せたが、問題はここからだ。俺の命運は橋田をどう説得するかにかかっている。

「いや違うんだよ橋田、怒んないで聞いてくれ。あの時の新色さん、変な男に絡まれてて、それで俺・・・」
「くくく、相変わらずマジメやねえ。どこまでも思った通りの反応やん」
「・・・は?」
「ええよ、説明してくれなくて。その件についてはその日のうちにニアちゃんから聞いてるから」
「は??」
「今の、全部冗談や」
「はあ!?」

橋田が突然態度を変えて、ふざけたことを言い出した。わけが分からなさすぎて今にも殴り掛かりそうだ。

「え、何?冗談?・・・じゃあ、初めから俺のことは疑ってなかったってこと?」
「当たり前やん。八虎はそういうことしない子やって、僕知っとるもん」

俺はこのやり取りでことの全貌を悟る。こいつ、俺を騙しやがった。良い奴だと思ってたのに、全然そんなことはなかった。

「おっまえさあ、そういうのビビるからマジやめて!?」
「いやあ。こんなに引っかかるとは思わんかったなあ」
「なんだよ、きっつー!冗談かよ、ほんとビビった・・・」
「ありがとうなあ。ニアちゃん助けてくれて。今度ちゃんとお礼させてな」

たしかに橋田は変わった見た目をしているけど、中身は普通に温厚で穏やかな性格だ(たぶん)。考えてみれば、そんな奴が一方的に決めつけて問い詰めるわけがない。しかし、冗談が悪質でふざけんなとは思った。やり方を変えろ。

「まあ、ほんの少しだけ疑っとったところはあったよ?だから一応な、聞いておくことにしたんや」
「あっそ・・・まあ、俺の潔白は晴れたんだからもういいや」
「そうそう、問題なのはそんなことやないんよ」
「・・・(俺のことも大問題だろ)」
「僕が気になるのは八虎がどうこうやなくて、2人を写した写真なんよ」
「写真は冗談じゃないんだな?」
「せやねん。2人が駅前で話しとったのを、誰かが写真で撮ってたってことや。これって怖ない?」

ああ、たしかに。本当にその写真があるのなら、撮影者は必ずいる。わざわざ俺と彼女が一緒にいるところを撮影しているんだから、その理由はかなり絞られてくるだろう。

「お前の彼女、もしかしてストーカーされてんの?」
「ふふ、かもなあ。学校やと隠れファンとか多いみたいやからなあ」
「・・・なんで嬉しそうなんだよ」
「ストーカーも、ニアちゃんに目え付けるなんて見る目あるなあと思うわ」

おまえ怖。

「意外とさ、橋田のストーカーだったりするかもよ?」
「ぼ、僕う?なんで僕やねん」
「お前が好きなら、彼女の同行を探っててもおかしくはねえし」
「いやいや、ないない。そないなことあらへんて。僕は誰かに好かれるような人やない」

いや、お前・・・自分の彼女に絶賛好かれ中じゃん。橋田を好きな女の子が一人でもいるんだから、当然他にもいるかもしれない。

「・・・あ、八虎はストーカーとかされてへんか?」
「されてるわけねーだろ!なんで俺に来るんだよ!」
「ほんま?実は、八虎が気づいとらんだけとか、ない?」
「ぜっったいに有り得ない。まあ、百歩譲って俺にストーカーがいたとしても、撮影者が俺側なら噂になんのは俺の学校だろ?」
「・・・たしかに。八虎、頭ええなあ」
「いやこれくらい分かんだろ」

ちょっとしたことで感心する橋田に、俺はつい苦笑いをする。橋田ってこんなに心配性だったか?いつもなら、新色さんがどこで何をしていようと許せる心の広さを持っているのに、今回ばかりは結構気にしているみたいだ。まあそんなのは当たり前か。盗撮なんて、犯罪の一歩手前だからな。
今のところ、そのパパラッチ写真がSNSやネットに上がっているという話は聞かないらしいが、写真の出処を突き止めなければいつまた同じことが起きるか分からない。・・・と、橋田は言う。

「そこでや。嫌なのは百も承知で、八虎に頼みがあるんやけど・・・」
「・・・おう」

マジで嫌な予感がする。





予想通り、嫌な予感は的中した。

「え、なにあれ、金髪・・・?」
「しかも軟骨にピアス・・・!なんか校門前に制服の不良がいる・・・」

橋田の高校は制服が無く、校門から出てくる生徒はみんなそれぞれ私服を着ていた。そんな学校の校門前に、異様に視線を集める他校の生徒が一人。言うまでもなく俺のことである。
俺は昨日橋田に頼まれて、この高校の校門前に、当たり前だけど普段の制服姿で立っていた。

「え、ほんとに不良だ。先生呼んできた方がいいかな・・・?」
「タバコとかもろ吸ってそ〜・・・」

やっべえ、帰りてえ〜。俺も無関係なわけではないので、橋田の頼みを二つ返事で引き受けてしまったが、今は断然気持ちが180度逆転していた。何が悲しくて他校の校門で人の彼女を待たなきゃいけないんだよ・・・。

「あれ?・・・あの人、もしかしてあのアイちゃんの写真の・・・?」

ふと、どこかから驚くような声が聞こえてきて、俺は内心ハッとした。今誰かが言った「アイちゃんの写真」。それ、絶対に橋田が言っていた写真に違いない。俺は実際にその写真に見たわけじゃないから今まで確信がなかったけど、俺が彼女と一緒に写ってたのってマジだったんだ。
うわ、やば。だんだん怖い目で見られてる。さっきまでは金髪ピアスに驚いてただけだったのに、一部野次馬ができてるのはさすがにヤバくね?そろそろ本気で帰りたくなるが、このまま放置しておくと彼女にストーカーがいる説を立証することができない。友だちの彼女が危険な目に会うのは嫌だし、我慢だ、我慢。俺はなるべく気にしない素振りでスマホをいじっていた。

「あ、矢口くんほんとにいた!」

その時、ようやく待ちに待った女子生徒が現れた。橋田の彼女で俺の友だち。この学校では結構な有名人である、新色藍さん。彼女は校門前に立つ俺を見つけると、周囲の視線を気にすることなく俺の近くまでやって来た。

「悠ちゃんから全部聞いたよ〜。わざわざごめんね、付き合わせちゃって」
「いいって、俺もちょっと手伝いたい気持ちあったし」
「ほんと?矢口くんって優しいね!ただ駅前まで買い物行くだけなのにね〜」
「え?」

思わず声に出た。買い物に行くだけ?たしかに今日は、2人で買い物をすることでデートと見せかける算段だが・・・もしかして、彼女は橋田から写真のことを聞いてないのか?いやいや、それはない。橋田には、彼女には全部話してあるから安心しろと言われている。

「あの・・・新色さん。写真のことは聞いてるよね?」
「あー、写真?聞いてるよ。悠ちゃんからも、友だちからも」
「なんだ、それならいいんだけど」
「でもね、私はその写真を実際に見てるわけじゃないの。だからほんとはどうでもいいんだよ、全部」
「どうでもいい?」
「私の為に、いるかも分からないストーカーを見つけ出すとか。そんなの、受験生で忙しい矢口くんに協力させてまで検証することじゃないから」

新色さんは、不満丸出しでこう言った。なんだ、彼女は全然気にしてないんだ。今この瞬間も周囲の生徒に注目されているというのに、彼女にとってそんなことは全く眼中になく、それどころか俺をこうして呼び出したことを申し訳なく思っているようだ。

「でも、悠ちゃんが心配する気持ちも分かるよ。本当は、私があの男の人に見つかんなきゃよかっただけなのに」
「いや、それは違うだろ。悪いのはしつこく絡んできた男の方だ。新色さんは何も悪くない」
「ほら、そういうところだよ」
「・・・何が?」
「不本意かもしれないけど・・・矢口くんは優しいから、一旦巻き込まれたら最後まで協力してくれるのは知ってたよ」
「俺は優しくなんて・・・」
「だから、ありがとう。今日は私の買い物に付き合ってくれて。どうせなら楽しもうよ。受験の息抜きだと思ってさ」

新色さんはそう言って深々とお辞儀をした。俺は驚いて、すぐに顔を上げさせようとする。

「あ、息抜きが私でごめんなさい・・・」
「いや、なんでそうなるんだよ!なんだろう・・・新色さんって、すごいな」
「え?全然すごくないよ」
「いやすごいって。俺たち、もしかしたらここの全校生徒に疑われてんのに、それを楽しもうとするって・・・」
「あはは、全校生徒っていうのは大袈裟だけど・・・大丈夫だよ。私の考えでは、写真を撮った人はそんなに悪い人じゃないと思うんだよね。」

写真を撮った人は悪い人じゃない?何を根拠にしてそう言うのだろうか。非があるのはあくまで自分と考えて、盗撮した人を咎める気がないなんて。今から失礼なこと言うけど、彼女、やっぱり橋田にはもったいないような・・・。


その時。俺と新色さんをなるべく視界に入れないようにしているのか、颯爽と校門を通り過ぎようとする一人の男子生徒が目に入った。

「あ、世田介くんじゃん」
「・・・」

見間違えるはずがない。予備校にはもう来なくなってしまったけれど、彼には随分とお世話になったんだから。そういえば、美術と特進でコースは違うが、橋田と同じ高校に通ってたんだった。
俺が声をかけると、世田介くんはいつも通りに嫌そうな顔をして、少し離れたところで立ち止まる。マジで俺のことが嫌いなんだな・・・。

「なんか用」
「ああ、えと・・・今日、これからどっか行くの?」
「別に。普通に家に帰るだけだけど」
「あ、そっか。ごめんね、用もないのにわざわざ引き止めて・・・」
「・・・」
「・・・?俺の顔に何かついてる?」

世田介くんは、無言で俺の方を見つめてきた。空気が痛い。しばらく経って、彼はようやく口を開いた。

「いや、受験生なのに他人巻き込んで、随分と暇なんだなって思っただけ」

ひゅ、と息が詰まる。そういや世田介くんって、いつでもどこでもこんな奴だった。コースは違くても橋田と知り合いではあるんだから、写真の噂を知っていても不思議ではない。
正論過ぎて俺は何も言えなかった。が、代わりに声を上げてくれたのは新色さんだった。

「ねえ"セカイ"くん、謝って。矢口くんに謝って。今すぐその言葉取り消して」
「・・・なんで新色さんが怒るの?」
「どうして何も知らない高橋くんがそんなことを言えるの?矢口くんはどこも悪くない、何か言うなら私の方にして」
「いや、いいって新色さん・・・世田介くんが正しいし・・・」
「正しくない。だって矢口くんは何も悪くないから」

新色さんがガチで怒っているところ、初めて見た気がする。しかもそれが橋田のことや自分自身のことではなく、俺のことで怒ってくれているのがなかなか衝撃的だ。
世田介くんは正しい。けれど、それを認めようとしない新色さんの気持ちもありがたい。ど、どうしよう、一触即発だ。とにかくこの場を収めようと2人の間に割って入ろうとしたら、世田介くんはさらに怪訝そうな顔をした。

「・・・何怒ってんの?俺、この人に対して言ったつもりないけど」

そして、俺のことを指差した。

「え?だって今、受験生なのに他人を巻き込んでって・・・。矢口くんが私を巻き込んだって意味じゃないの?」
「はあ、違うよ。受験生なのに写真くらいで面白がるなんて、そいつは随分と暇なんだなって言ったんだよ」
「え、もしかして世田介くん、写真撮った奴のこと知ってんの!?」
「君は知らないでここに来てんの?なんで自分から敵に近づいてんだよ」

いやまあ、ここに来いって言ったのは橋田だけど・・・。ていうか、噂を聞いているだけならまだしも、そういうことには全然興味がなさそうな世田介くんが、写真のことを知っているとは思わなかった。

「な、なんだ・・・ごめんね、よく考えずに怒り出して。私の方こそ謝るね」
「別にいいよ。この人が君に迷惑をかけてることには変わりないんだし」
「あのねえ、高橋くん!」
「ちょっとちょっと、俺のことはもういいから!これじゃ話が進まねえよ」

世田介くんは早く話を終わらせたいようで、さっさと知っていることを全て話してくれた。

「僕と同じ特進の奴だよ。たまたま駅前で君らを目撃したから、興味本位で撮ったって言ってたのを聞いただけ」
「でもさ、矢口くん。あれから結構時間経ってるよね?私たちが最初に会った時から・・・」
「ああ、たしかに。どうして今頃俺たちの写真なんて出てきたんだ?」
「僕が知るわけないだろ。勉強ばっかで気が参ったんじゃない?その人、いつも成績が下の方だから」
「ちなみに、そいつの名前は?」
「なんだっけ?僕あんまり記憶ないからさ。・・・たしか天野だったかな」

情報を持っていてもやはり興味は無いらしく、世田介くんはそれだけ言うとさっさと歩いて行ってしまった。
2人で彼を見送って、少しの間沈黙に包まれる。先程までそこかしこに溜まっていたはずの野次馬は、いつのまにか徐々に姿を消していた。

「思わぬところで収穫があったね・・・」
「それな。犯人の名前も分かったし、とりあえず橋田に連絡する?」
「うん、そうだね。悠ちゃんには私から言っとくよ。にしても、天野くんだったんだ・・・意外だったな」
「新色さん、天野ってやつのこと知ってるの?」
「知ってるよ。一年生はコース関係なく混合クラスだったから、その時にクラスメイトだったの」
「へえ。どんなやつ?」
「真面目そうな感じの男の子。でも話したことはないから、よく分かんないや」

その天野って男子生徒、明らかに新色さんに好意持ってんな。彼の頭では、悪意ある噂で貶めるという馬鹿な方法しか思いつかなかったのだろう。
橋田がいる手前、なかなか真正面から告白はできない。そんな折に、偶然自分に都合のいい噂が立ちそうな写真を手に入れた。好きな子の為なら、たとえそれが嘘でも全世界にばら撒きたくなる気持ちは分かる。しかし、それでもせめて学校中にではなく、橋田だけに打ち明ければ良かったのに。

「サイテーなやつだな」
「そうかな?私はまだ優しい方法だと思うけど」
「え、本気か?」
「たしかに褒められたことはしてないけど、やろうと思えばもっと大々的に噂を広められたでしょ?」
「・・・大々的に?」
「私、友だちからはどうせ勘違いだよって励まされたくらいだし、悠ちゃんも合成じゃないかって言われながら写真を見せられたみたいだし」
「ああ、味方が多かったんだ。天野じゃなくて、新色さんと橋田側に」
「そうそう。だからさっき、写真を撮ったのはそんなに悪い人じゃないって言ったんだよ」

なるほど、そういうことか。新色さんが言っていた言葉の意味がようやく分かった。たった一枚の写真を簡単な嘘と共に校内で広めただけだから、犯人にはまだ多少の良心が残っているのだろう、ということ。

「ところで、もう解決したことだし、ここまで付き合ってくれて本当にありがとう」
「そうだな。とりま何事もなくてよかったよ。天野のことは、あとは橋田がなんとかしてくれるだろうし」
「そうだね。天野くんが不登校にならないように祈るだけ」
「えっ」

今この子、さらっと怖いこと言った。

「買い物は私一人で済ませるから、また今度会ったらよろしくね」
「あ、俺せっかくだから付き合うよ。予備校まで時間あるし、やっぱり迷惑はかかってるから」
「ほんと?矢口くんは優しいね。私、矢口くんみたいな人と結婚したいな」
「けっ・・・!?」
「うそうそ、こういうこと言うから誤解されちゃうんだよね」

はあ、驚いた。今日の少しのやり取りだけで、新色さんのことをだいぶ知れた気がする。もう一度失礼なこと言うけど、やっぱり彼女、橋田にはもったいないと思うわ・・・。





「おー八虎。今日はほんまにありがとうなあ。ニアちゃん喜んでたで」
「俺は別に、そんな大したことはしてないけどな」

その日の予備校で、橋田は俺を見つけるとすぐに声をかけてきた。そう、俺は何もしてない。たまたま通りかかった世田介くんが、全て解決してくれたのだ。

「大したことやん。ニアちゃんの荷物、自分から沢山持ってくれたんやって?力持ちやねって褒めてたよ」
「あ、そっち?」
「そうそう、天野くんやけど・・・たった今会いに行って話聞いて来たんよ。八虎は当時者やから、話してもええよな?」
「え?なに怖いんだけど」

新色さんが言っていた通り、不登校にしてないよな・・・?いや、橋田ならやりかねない。

「実はな、天野くん僕みたいなのがタイプらしいねん」
「・・・へ?」
「僕みたいに背が高くて、方言混じりの男の子が好きなんやって」
「・・・マジで?」
「珍しいやろ?まあ僕はニアちゃんのことが好きやから、気持ちに答えられんでごめんなって断ってきたんや」

いや、意外過ぎて言葉も出ないわ。たしかに俺は天野本人を見たわけじゃないから、橋田の言うことを信じるしかないけれども。完全に新色さんが好きなのかと確信してたのに、なんか裏切られた。

「せやから、結局八虎の言うことは正しかったんよね。やっぱり八虎に相談して正解やったわあ」
「あはは・・・それは良かったです」

万が一橋田の方にストーカーがいるとしても、それは女の子が犯人の場合で言ったつもりだった。・・・しかしまあ、俺にも龍二という知り合いがいるから、あまり偉そうなことは言えない。
とにもかくにも、一件落着だ。俺は一安心して準備に取り掛かった。


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