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「やぁとら〜、今度暇やったら国立新美術館行かん?」


この前もこの前もこの前も誘われたなあ。違う大学でも変わらず誘ってくれるのはすっごくありがたいけど……それにしてもだ。

「橋田、もしかして新色さんと別れた?」

軽い気持ちで尋ねると、橋田は割とマジな顔をして首を傾げた。

「はあ?なわけないやん。何言っとん」
「だって最近俺ばっか誘ってくるから……」
「の前にニアちゃんに先に声かけてるに決まっとるやん。僕の中の優先順位は、八虎より断然ニアちゃんの方が上やで」
「あ、そう」


「けど、最近はどこ行くのも断られてばっかで寂しいわあ。前一緒に出かけたのいつやっけ」

スマホのカレンダーを見つめながら呟く橋田。どことなく哀愁漂うというか、本当に寂しそうな顔をしている。なんか心配になってきたな。

「お前、大丈夫?」
「何がや」
「だから、新色さん」

他に男できたんじゃね?なんてストレートに言えば、またマジな顔で「はあ?」とキレられてしまいそうだ。けど、俺の言いたいことは分かるだろ?そんなしょっちゅうデートの誘いを断るなんて、他に誰かいるとしか……。
言い淀む俺だが、表情には思いっきりでていたようで。橋田は色々納得したように相槌を打ってから、ピンと人差し指を立てた。

「八虎って、ニアちゃんが今どこの学校に通ってるか知っとる?」
「なんだっけ、服飾の専門のとこだろ?」
「そ、文化服装学院や」

あ、そうそれ。割と有名な服飾の専門学校で、留学生も多いらしい。他に知ってることといえば新宿にある……ということくらいだろうか。

「僕もよう知らんけど、そこ、退学率が毎年結構高めらしいねん」
「へえ?なんで」
「忙しすぎて」

「まあ専門なんてどこもそんな感じやと思うけど。」


「ニアちゃん、バイトもしとるんや。せやから僕とどっか行く時間なんて滅多にとれへん。その代わりお家デートの時間は増えたけどな」





「課題な、僕にできるとこはいつもいつも手伝わされてて大変やわ。まあ僕の方が圧倒的に暇やから、頼ってもらえて嬉しいとこはあるな」
「課題ってどんなことすんの?」
「ニアちゃんは」




「まあ疑って悪かったけど」
「けど心配してくれたんやろ?八虎のそういうとこ、僕に好きやで。ありがとうな」
「やっぱお前良い奴だよな」
「せやろ?あ、今度秋にニアちゃんとこも文化祭あるみたいやから、八虎も暇やったら一緒に行こか」
「はいはい、予定空けとくわ」




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