「ニアちゃん、また増えとったな」
「えっ?何が?」
「桁が」
学校の帰り道。ガタンゴトンと電車に揺られながらはるかちゃんの左手をマッサージするみたいに両手でにぎにぎしていたら、ふいに太った発言をされたかと思ってびっくりした。いやあ最近ストレス発散のためにいっぱいお菓子を食べてるから、確かに体重は増えているだろうけれど、さすがに桁が増えることはないってば。
「あはは、ばかやろーめ」
「いたい!なんやねん褒めたってんのに」
「体重が増えたこと褒められて喜ぶ女の子ってそうそういないと思うよはるかちゃん」
「うん?んふ、ちゃうちゃう!誰も体重の話なんてしとらんわ。さすがのニアちゃんでも桁は増えんやろ、んふふふふ」
「わらうな」
「いたい!ごめんて!」
彼の手の関節を反対方向に折り曲げたら泣いて謝られたので許してあげた。
それにしてもはるかちゃんはさっきから何の話をしているんだろう。話の続きを促せば、彼は曲げられた手を涙目でぐーぱーしながら、もう片方の手でスマホの画面を見せつけてきた。
そこに映っていたのは三つ編みの女の子の可愛いイラストアイコンと、ひらがなで『あお』という名前が表示されたプロフィール画面。青い鳥がトレードマークのSNSといえば伝わるだろうか。ていうかツイッター。
言わずもがなこれは私のアカウントだ。はるかちゃんに示された通り、フォロワーの数が以前見た時よりかなり増えている。
「おお、ほんとだ」
「気づいてなかったん?」
「最近タイムラインしか見てなかったから…それにしても多くない?」
実は本垢として使っている閲覧用のほぼROM専の鍵垢とは別に、以前からお洋服関係のアカウントも開設していた私である。学校の授業で作るものもそうだし、自分用に服を作ったり刺繍をしたりと何かと制作物が多いので、それらを投稿するために作っていたのだ。
最初は放置気味だったけれど、二年次の終わり頃から積極的に投稿するようになったから、見る人も増えるというわけで……まさか四桁まで行くとは思ってもみなかったけど。将来プレス関係を目指している子に良い写真の撮り方を教わった成果が出たのかも。
「まあそりゃあ、ニアちゃんが作ってる作品は服も小物も全部可愛いし、女の子受けいいみたいやからなあ。僕も欲しいし」
「ふーん?欲しいならあげるのに」
「ていうか、実際に売れると思うで」
はるかちゃんの言葉についつい首を傾げた。
「売れ……る……?」
「ほら、よくハンドメイドの作品を通販とか即売会とかで販売してる作家さんおるやん?ああいう感じで」
「それは知ってるけど……私のが?」
「ニアちゃんの制作ペースと完成度なら十分可能やと思うんやけど」
「そうかなあ……」
自分のスマホでツイッターを開いて、鍵垢の方でフォローしている好きなハンドメイド作家さんを眺めてみる。世界観が確立されててどれも素敵な作品ばかりだ。お気に入りのものは実際に購入したこともあったりして……でもそういえば私、誰かに売るために作るとか、考えたことなかったな。
今は完全に自己満足でも、将来は人に見せるための服を作るのだから、実際に売れるほどの価値がなければ話にならないんだった。だけど、まだ私にはそのレベルに達していないと思ってる。だからこそ作品をよく見てくれる彼に褒められるのは……嬉しいことこの上ない。
まあ、でも即売会というものには興味がある。私ってほら、漫画が好きだから二次創作とかもよく見るし。それだけじゃなくハンドメイドだけの即売会があるのも知っている。参加するのは楽しいだろうなあ、自分が出展するとなると話は変わってくるけれど。
「それかニアちゃんの場合服そのものがメインなんやから、個展開くんもええと思うな」
思わず顔をぎゅんっと上げてはるかちゃんを凝視した。なんかさっきから私にはハードルが高いことばっかり。
「えっ、見に来てくれる人なんていないよ!みんながみんなはるかちゃんみたいな物好きじゃないんだから……」
「なんかひどい言い草やな」
「たぶん家族と学校の友だちくらいしか来なくて内輪だけで終わっちゃうよ」
「そんなことないやろ、こんなにフォロワーさんおって毎度毎度作品の反応もいいのに。だから僕は提案しとるんや」
別に茶化しているのでもふざけているのでもない、はるかちゃんのマジメな顔を見て思わず見つめ返してしまった。……すごいなあ、はるかちゃん、冗談で言ってるんじゃないんだ。私のことを一人のクリエイターとして見てくれている。なんか嬉しい。
お詫びにさっき折り曲げた手を優しくさすると変な顔をされた。
「ま、作品を売るんも個展開くんも最初のうちは赤字前提やし、労力もかかるしな。とても人から勧められてやることやない。気が向いたらどうやって話」
「ふ〜ん。でもちょっと面白そう。私入試終わるの人より早いし、考えてみる」
そうだ、ツイッターってせっかく投票機能あるんだし、ためしにフォロワーさんに聞いてみるのが早いかも。
「えっ?何が?」
「桁が」
学校の帰り道。ガタンゴトンと電車に揺られながらはるかちゃんの左手をマッサージするみたいに両手でにぎにぎしていたら、ふいに太った発言をされたかと思ってびっくりした。いやあ最近ストレス発散のためにいっぱいお菓子を食べてるから、確かに体重は増えているだろうけれど、さすがに桁が増えることはないってば。
「あはは、ばかやろーめ」
「いたい!なんやねん褒めたってんのに」
「体重が増えたこと褒められて喜ぶ女の子ってそうそういないと思うよはるかちゃん」
「うん?んふ、ちゃうちゃう!誰も体重の話なんてしとらんわ。さすがのニアちゃんでも桁は増えんやろ、んふふふふ」
「わらうな」
「いたい!ごめんて!」
彼の手の関節を反対方向に折り曲げたら泣いて謝られたので許してあげた。
それにしてもはるかちゃんはさっきから何の話をしているんだろう。話の続きを促せば、彼は曲げられた手を涙目でぐーぱーしながら、もう片方の手でスマホの画面を見せつけてきた。
そこに映っていたのは三つ編みの女の子の可愛いイラストアイコンと、ひらがなで『あお』という名前が表示されたプロフィール画面。青い鳥がトレードマークのSNSといえば伝わるだろうか。ていうかツイッター。
言わずもがなこれは私のアカウントだ。はるかちゃんに示された通り、フォロワーの数が以前見た時よりかなり増えている。
「おお、ほんとだ」
「気づいてなかったん?」
「最近タイムラインしか見てなかったから…それにしても多くない?」
実は本垢として使っている閲覧用のほぼROM専の鍵垢とは別に、以前からお洋服関係のアカウントも開設していた私である。学校の授業で作るものもそうだし、自分用に服を作ったり刺繍をしたりと何かと制作物が多いので、それらを投稿するために作っていたのだ。
最初は放置気味だったけれど、二年次の終わり頃から積極的に投稿するようになったから、見る人も増えるというわけで……まさか四桁まで行くとは思ってもみなかったけど。将来プレス関係を目指している子に良い写真の撮り方を教わった成果が出たのかも。
「まあそりゃあ、ニアちゃんが作ってる作品は服も小物も全部可愛いし、女の子受けいいみたいやからなあ。僕も欲しいし」
「ふーん?欲しいならあげるのに」
「ていうか、実際に売れると思うで」
はるかちゃんの言葉についつい首を傾げた。
「売れ……る……?」
「ほら、よくハンドメイドの作品を通販とか即売会とかで販売してる作家さんおるやん?ああいう感じで」
「それは知ってるけど……私のが?」
「ニアちゃんの制作ペースと完成度なら十分可能やと思うんやけど」
「そうかなあ……」
自分のスマホでツイッターを開いて、鍵垢の方でフォローしている好きなハンドメイド作家さんを眺めてみる。世界観が確立されててどれも素敵な作品ばかりだ。お気に入りのものは実際に購入したこともあったりして……でもそういえば私、誰かに売るために作るとか、考えたことなかったな。
今は完全に自己満足でも、将来は人に見せるための服を作るのだから、実際に売れるほどの価値がなければ話にならないんだった。だけど、まだ私にはそのレベルに達していないと思ってる。だからこそ作品をよく見てくれる彼に褒められるのは……嬉しいことこの上ない。
まあ、でも即売会というものには興味がある。私ってほら、漫画が好きだから二次創作とかもよく見るし。それだけじゃなくハンドメイドだけの即売会があるのも知っている。参加するのは楽しいだろうなあ、自分が出展するとなると話は変わってくるけれど。
「それかニアちゃんの場合服そのものがメインなんやから、個展開くんもええと思うな」
思わず顔をぎゅんっと上げてはるかちゃんを凝視した。なんかさっきから私にはハードルが高いことばっかり。
「えっ、見に来てくれる人なんていないよ!みんながみんなはるかちゃんみたいな物好きじゃないんだから……」
「なんかひどい言い草やな」
「たぶん家族と学校の友だちくらいしか来なくて内輪だけで終わっちゃうよ」
「そんなことないやろ、こんなにフォロワーさんおって毎度毎度作品の反応もいいのに。だから僕は提案しとるんや」
別に茶化しているのでもふざけているのでもない、はるかちゃんのマジメな顔を見て思わず見つめ返してしまった。……すごいなあ、はるかちゃん、冗談で言ってるんじゃないんだ。私のことを一人のクリエイターとして見てくれている。なんか嬉しい。
お詫びにさっき折り曲げた手を優しくさすると変な顔をされた。
「ま、作品を売るんも個展開くんも最初のうちは赤字前提やし、労力もかかるしな。とても人から勧められてやることやない。気が向いたらどうやって話」
「ふ〜ん。でもちょっと面白そう。私入試終わるの人より早いし、考えてみる」
そうだ、ツイッターってせっかく投票機能あるんだし、ためしにフォロワーさんに聞いてみるのが早いかも。