「白龍さま。少々お待ちくださいな」
鬼倭城下、吾妻 (東)地区。ここは一本の大通
りを中心にして出店の立ち並ぶ区画で、人々は買い出しや食べ歩きのために寄ってたかって朝から賑わいをみせているので有名。鍛錬もそこそこに息抜きでもしませんかとお誘いをしてみたところ、是非にとの返答があったために、此方は今白龍さまと、この吾妻デートスポットにやって来ていたのでありました。
つまり我々は愛瀬の最中で、此方は白龍さまが未だ城下に慣れないのをいいことに好き勝手に連れ歩いていたところなのだが、少し道行く先でなにやら騒ぎがあったらしい。店の繁盛とは雰囲気の違う人だかりができている。国の刑吏を務める者としてはたとえ休日でも見過ごせるものではなく、即座に足の向きを変える此方であった。
「待って、俺も行きますよ」
「そうですか?」
日陰でお茶でもしながらお待ちくだされと言ったのに、白龍さまはまあ当たり前のように着いてきた。煌の前皇帝ともあられるお方に自国の不祥事を見せるのは少し気が引けるところではあるが、そうはいっても気になるものは気になるのだろう。それとも此方といたいだけなのかな?仕方がないので頷いて彼と共に問題の店へ赴いた。
「此方、氷川大頭・刑吏の者でございまする。して、この騒ぎは一体何事か?」
「やや!これはこれは、かの氷川家当主であられる赤琉殿では御座いませぬか!良いところに参られました、宜しければ此奴に成敗を与えて下さいませぬか、何卒……」
「赤琉様。ただ今参上致しました」
「お前たちは直ちにこの者らを連行せよ。店の」
「は」
「た、大変お待たせ致しました。せっかくのお出かけでしたのに、退屈にさせてしまいましたよね。この埋め合わせは必ずや……」
「いえいえ。仕事ならば仕方がありません。全然気にしていませんよ。それより仕事モードの赤琉殿を見るのは退屈しませんから」
「……?」
「普段俺といる時と刑吏の時とでは、かなり様子が違いますよね。新鮮で、見ていて飽きないというか」
「それは……改めてご指摘されるとお恥ずかしいです」
「父上から『武器を使っての制圧』は余程のことがなければ御法度、との教えを受けております。刀をチラつかせることは出来るにしろ、それでも普段の威圧感が相手を上回っていなければ、簡単に舐められてしまうのです」
「ほう」
「ただでさえ此方は背が低く、なおかつ女でありますから、お仕事の時だけでも怖い顔をしようと……」
「なるほど。確かに俺も皇族として表に立つ時はそういうことを意識してましたね。そう教えられてきましたから」
「上に立つ者の定め、ですね」
皇帝の方がはるかに上だけど。
「しかし……赤琉殿がこのような命令する側の立場にあるとは思いもしませんでした。当主と聞いてもあまり実感が湧かなくて。だから初日こそ城内に入った時には驚いたものでした」
「鬼倭の実情など鬼倭に来てみなければ分からないですからね」
鬼倭城下、
りを中心にして出店の立ち並ぶ区画で、人々は買い出しや食べ歩きのために寄ってたかって朝から賑わいをみせているので有名。鍛錬もそこそこに息抜きでもしませんかとお誘いをしてみたところ、是非にとの返答があったために、此方は今白龍さまと、この吾妻デートスポットにやって来ていたのでありました。
つまり我々は愛瀬の最中で、此方は白龍さまが未だ城下に慣れないのをいいことに好き勝手に連れ歩いていたところなのだが、少し道行く先でなにやら騒ぎがあったらしい。店の繁盛とは雰囲気の違う人だかりができている。国の刑吏を務める者としてはたとえ休日でも見過ごせるものではなく、即座に足の向きを変える此方であった。
「待って、俺も行きますよ」
「そうですか?」
日陰でお茶でもしながらお待ちくだされと言ったのに、白龍さまはまあ当たり前のように着いてきた。煌の前皇帝ともあられるお方に自国の不祥事を見せるのは少し気が引けるところではあるが、そうはいっても気になるものは気になるのだろう。それとも此方といたいだけなのかな?仕方がないので頷いて彼と共に問題の店へ赴いた。
「此方、氷川大頭・刑吏の者でございまする。して、この騒ぎは一体何事か?」
「やや!これはこれは、かの氷川家当主であられる赤琉殿では御座いませぬか!良いところに参られました、宜しければ此奴に成敗を与えて下さいませぬか、何卒……」
「赤琉様。ただ今参上致しました」
「お前たちは直ちにこの者らを連行せよ。店の」
「は」
「た、大変お待たせ致しました。せっかくのお出かけでしたのに、退屈にさせてしまいましたよね。この埋め合わせは必ずや……」
「いえいえ。仕事ならば仕方がありません。全然気にしていませんよ。それより仕事モードの赤琉殿を見るのは退屈しませんから」
「……?」
「普段俺といる時と刑吏の時とでは、かなり様子が違いますよね。新鮮で、見ていて飽きないというか」
「それは……改めてご指摘されるとお恥ずかしいです」
「父上から『武器を使っての制圧』は余程のことがなければ御法度、との教えを受けております。刀をチラつかせることは出来るにしろ、それでも普段の威圧感が相手を上回っていなければ、簡単に舐められてしまうのです」
「ほう」
「ただでさえ此方は背が低く、なおかつ女でありますから、お仕事の時だけでも怖い顔をしようと……」
「なるほど。確かに俺も皇族として表に立つ時はそういうことを意識してましたね。そう教えられてきましたから」
「上に立つ者の定め、ですね」
皇帝の方がはるかに上だけど。
「しかし……赤琉殿がこのような命令する側の立場にあるとは思いもしませんでした。当主と聞いてもあまり実感が湧かなくて。だから初日こそ城内に入った時には驚いたものでした」
「鬼倭の実情など鬼倭に来てみなければ分からないですからね」