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見渡す限りの草。一面、草。最初にこの景色を目にした時は大感動して一度馬から下りてまでうっとりと眺めさせてもらったものだけど、進めども進めども同じ草原が広がっているから、さすがの此方でも感想に困ってしまう。
なんなのだ、この永遠に続く緑は!此方はこのままこの大陸どころか平原からも出られなくなってしまうのでは……と不安になるほど広大な大地。そう、これこそが煌帝国が支配する華安平原なのだ。

ここまでくると馬上ではチーシャンで手に入れた世界地図を眺めることしかやることが無く、言ってしまえば暇だった。もう周囲の景色も代わり映えしなくなってきたし……そんな暇人の真後ろでは白龍皇子が休みなく馬を走らせていて、彼に対しても馬に対しても申し訳なくなってしまう。そうは言っても大人しくする以外にできることが無い。
そこで地図の出番である!これを見ているだけで自分も旅の計画をきちんと考えてますよ感を演出できるし、なにより暇潰しにもなる。なんて素晴らしいアイテムなのだろう。
そろそろ乗馬の感覚にも慣れたので、あくまで皇子さまの視界を遮らないように巻物を広げ、なんか色々考えるふうにして地図をなぞっていたら、後ろからお声が。

「あなたはどうやらカモにされたようですね。そんなものを売りつけられるなど」
「えっ。偽物……?」
「そうではなく、古いんですよそれ。バルバッドが我が国の領土になったのはもう半年も前なのにその辺り改訂されていないようだし、そもそも西の国境がかなり手前にある……」

なんだ、呆れたように言うからてっきり馬鹿にされたのかと思った。此方が持っている世界地図をさりげなく盗み見たのだろう、そこに自国の領土が正確に記されていないことに対してただ苦言を呈したのだ。皇子さまらしいプライドというか。此方にとってはどうでもいいことだ。

「カモだなんて失礼ですね。これは帰国前に記念に買っただけなので、ちょっと古いくらい気にしませんよ。それに、此方は売られている中で一番安いのを選んだだけですから」
「そうですか。北天山にもバルバッドにもほど近いチーシャンなら、西方の国よりも煌帝国の情報は早いはずですなんですが」
「それがどうかしたのですか?」
「つまり、最新の地図もきっと売られていたはずで……それなのに今もわざわざ改訂前が売られているということは、世間知らずの客に向けた商品であることには違いありません。仰る通り、あなたにぴったりですね」
「……」

さっきの言葉は取り消す。どうやら本当に馬鹿にされているっぽい。これが皇子なりの冗談なのか、田舎者の下民に対する皮肉なのか、距離感が近くなったことの証明なのか、此方にはよく分からない。
だいたい今の煌帝国の国境がどこにあるのかなんて、皇子さまこそシンドリアにいたのだから正確には分からないのでは?心の中で文句を言うが、そもそも改訂前の地図でも煌帝国の広さは世界トップクラスなのだから、いちいち指摘されてもという感じである。

こう改めて地図を見てみると、シンドリアからその真上のアクティア王国へ行くよりも、北東方向にあるバルバッドへ直接船で行くことができたら近道だったのにな〜と切に思う。実際此方が鬼倭国からシンドリアに行く時は、華安平原の南の半島からバルバッドの港を経由したはずだ。
しかしバルバッドがまさに煌帝国の統治下に入ったことで、先の宣戦布告の事案もあってシンドリア間で船の運行が取りやめとなり、アラジンさまたちと共にアクティア王国から大陸へ上陸する運びとなった。
アクティア港でアラジンさまたちに別れを告げたあの日。此方はついつい怖いもの見たさで一人で去ろうとする白龍皇子の後を追ったが、そこでバルバッド行きの船に乗り換えるという選択肢もあった。……しかしあの海賊騒動では船が通常通り運行しているかも怪しかったし、今や煌帝国の領土となったバルバッドへ単身で向かうくらいならば、こうして白龍皇子の後を追ったのは正解だったと思いたい。
華安平原もまさしく煌帝国の領土なのだ。この地を横切るためには彼に同行して堂々と突っ切らせてもらうのが安泰であろう。

「白龍皇子、これって具体的にはどこを目指しているのですか」
「言いませんでしたっけ?北天山に西征軍を率いている姉上のところに」
「ああ、お姉さま……」

そういえば、シンドリアで行き先を聞いた時にそう言っていた気がする。白龍皇子の姉君、つまり煌帝国の第一皇女であられる練白瑛さまが将軍として平原の西に駐留しているのだと。
……え?ということは、もしや此方はこれからそのお方に会うことになるのですか?彼の目的地に最後まで同行するつもりなんてなかったけれど、しかしよく考えなくとも鬼倭国の方が立地的には遠いのだから道中で立ち寄る可能性が少しも無い、なんてこともなかったか。

「この山脈を越えたらそろそろ基地が見えてくるはずです。これでようやく野宿から解放されますね」
「はい。ですが……」
「何か心配事でも?赤琉殿のことも受け入れてくださるよう、俺が姉上に掛け合いますから寝食についてはご心配なさらず」
「……あの、そうではなく、今我々は北へ向かっているんですよね。此方はどちらかと言えば南東方向へ進みたいですが」
「そこに何か?」
「華安平原の真下の、この半島の海岸で国の者と待ち合わせするので」

地図を指差すと、背中越しに白龍皇子が覗き込む。そうなるのは致し方ないが……耳のすぐ横に顔を近づけられると少々緊張する。馬を走らせているのに余所見しないで頂きたいところだが、皇子さまは相当乗り慣れているのか余裕そうである。こちらは地図を持ちながらだと安定して座っているのも一苦労なのに。

「確かにその半島の南端は大陸の西側よりも侵攻の優先順位が低く、煌の支配が滞っている地域ですね。鬼倭の使節が密かに大陸に立ち寄るにはぴったりの場所だ」
「はい。此方がお国を出た時も、実はこの順路で参ったのです。あの時は直接ここまでシンドリアの船が来ていたのですが……今回はそれが難しく」
「そこへ向かうなら天山高原を越えてから南下するのがよろしいかと。だから今すぐに、というわけにはいかないですよ?まずは姉上のところへ行きましょう」
「しかし、それだと此方の目的地に対して遠回りになってしまいませんか?ほら、地図を見ればそんなことは明白で……」
「あなた、俺に着いてきて良かったですね」
「え?」

後ろから白龍皇子がため息をつくのが聞こえてきた。何か変なことでも言ったか?この人が最近此方をよく馬鹿にするようになったから一つ一つの言動に敏感になっている。
白龍皇子は此方の言い分を把握した途端に地図から目を離し、言葉を続けた。まるで当たり前のことを言うように。

「いいですか?赤琉殿。今一度、お手元の地図をよくご覧ください」
「は、はい」
「俺たちが今いるのは北天山の左側。あなたの行き先はこの広い平原のど真ん中にある南の海岸。直接向かうにはあまりにも遠すぎて、たどり着く前に力尽きるのがオチです」
「はあ、確かに広く見えますけど……地図上では」

此方は島国の生まれだからか、今でも大陸の広さがいまいちピンと来ない。それもそのはず、この世界地図には煌帝国の東の海上に存在しているはずの鬼倭島がどこにも描画されていないのである。今は島ごと『霧隠れ』しているから国の座標があやふやになっている、というのが実態とはいえ。
それは普通に考えて由々しきことではあるが、今気にするべきはそこではなくて、この地図で一番広く見える華安平原と比べたら、鬼倭島なんて目に見えないくらい小さな島国であることを示唆しているのかもしれない……悲しいことに。

「まあ、今まで極東の島国で生きてきたならご存知なくても仕方がありませんが、平原をただ端から端へ横切るだけでゆうに一月はかかるんですよ」
「ええっ」
「それも、馬に乗って休みなく、です。向かう前に基地に立ち寄って十分に補給をしないと、死にますよあなた。ほらね?地図を見ればそんなことは明白、でしょう?」
「……」
「俺の案内が無いと野垂れ死にするところでしたよ?いえ、真面目に。赤琉殿は本当に世間知らずなんですから、まったく」
「皇子さま。そろそろお黙りになってくださいまし」
「はい。すみません」

この人、さっきから明らかに此方をおちょくっている。殴られると思わなかったのかな?でも駄目だ、そんなことをして彼が落馬でもしようものなら、此方は馬の制御なんてできないから振り落とされて蹴り殺されるに決まっている。やっぱりこの人、タイミングを選んで此方を貶しているんだ。そんなのただのくそ野郎じゃないか。おっと、口が滑りました。
そんなことはさておき(本当はおきたくない)平原にものすご〜く詳しい博識な白龍皇子さまの言う通り、彼の言葉にはどこにも言い返す余地がない。端から端へ行くのに一月もかかるという場所で休みなく目的地へ突き進むよりも、物資を補給しながら寝泊まりできる場所を確保するべきというのは納得せざるを得ない。
だけど、此方の心配は別にもあった。だって今から立ち寄ろうとしているのは、あの煌帝国の軍の基地だと言うではないか。近くの町とか、村とかではなく。こんなところに人里が無いのは見れば分かることだけど、そうは言っても他国の軍の施設に乗り込むというのは此方にはちょっと……。

「あの、此方は……。それでも、野宿のままで構いませんので。あなたにはこのまま着いていきますが、基地に近づいたらドロンさせて頂きますね」
「それは、どういう意味ですか?」
「空腹はどうにもならないので食べ物だけは是非とも恵んで頂きたいですが、寝る場所まで用意して頂くことはない……ということです」
「どうして?」
「どうしてもなにも。白龍皇子に同行するのが一番安全だからここまでご一緒させて頂きましたが、貴国の軍基地にお邪魔してまで世話になるつもりは毛頭ありませぬ」
「ですから、遠慮はいりませんよ。姉上は寝食に困った旅人をわざわざ追い返すような人ではありません。その上俺がついているんだし」
「いいえ。此方は煌帝国の方々に遠慮しているのではなく、大勢の前に素性を晒したくないだけです。貴国の方々とこれ以上表立って関わり合いを持とうなどとは、此方の意思に反しますゆえ」

此方の迷わぬ返答に、白龍皇子は思い出したように「ああ」と声を漏らした。
あえて遠慮などしていないなんて言ったが、もちろん遠慮する気持ちも当たり前にある。だがそれ以上に、此方は人前に姿を現したくない事情がある。それも煌帝国の平軍人だけならまだ考慮の余地があるが、そこにおられるのは彼らだけではないのだろう。
白龍皇子の姉君……つまり煌帝国の他の皇族がこの先にいらっしゃるのですよね。
皇子さまと関わりを持ったことでさえ、此方にとっては未だに正しかったのかどうか悩むべき事態なのだ、実は。だから気遣いに対して申し訳ないけれど、此方はこのまま基地に顔を出す訳にはいかない。少なくとも人の形を保った状態では、とても。

「……なるほど。申し訳ない、その点について頭から抜けていました。赤琉殿の立場は前からお話頂いていたのに……そういえば赤琉殿はそうでした」
「今向かっているのがどれほどの規模の軍勢なのかは分かりませぬが……煌が領土を拡大するために遣わされている西征軍が、少人数であるはずも無いでしょう」
「ええ。今姉上の軍属となっているのは本来の煌の兵士たちだけでなく、異民族の者たち、特に元大黄牙帝国の騎士たちも含まれています。規模で言えばかなりのものでしょうね」

やはり、想像した通り。そんなところに鬼の飾りを付けた女が突然顔を出したら、人々の間で噂になるに決まっている。煌帝国の人が鬼倭国についてご存知なのは、白龍皇子がまさに証明してくれたことだ。
このまま向かうと言うのなら、此方は基地の中では姿を隠すしかない。少なくとも、此方はそうしたい。

「……まあ、こんな要望を通すのはきっと難しいですよね。世話になる身で筋が通らないことを言っている自覚はあります」
「いえ、赤琉殿のご意向を尊重しますよ」
「本当ですか?ありがとうございます」
「だって、あなたは俺の大切な協力者となり得るお人だから。せっかく霧に包まれている今の鬼倭国の存在を煌内部に悟らせるのは、俺にとっても不利に働く可能性があるかも」

此方はともかく、タケル様が白龍皇子に協力するかどうかなんてまだ決まっていないことなのに、広い視野で考慮してくださった。まあ本当にシンドバッド王さまが彼のお手を取るならば、高い確率で鬼倭国はお味方に着くことになるのだ、白龍皇子の判断は決して間違ってはいまい。

「それに、あなたの特技を今活用せずにどうするのかって話ですよね」
「……何の話です?」
「いえ、こちらの話です」
「?」
「それより、軍人の前で姿を隠すのは自由にして頂いて構いませんが、だからと言ってあなたに野宿をさせるつもりはありません。その辺は俺がどうにかします」

それは嬉しいお言葉だ。ありがとうございますと感謝の意を述べると、当たり前のことです、とはっきりとした返事が返ってきた。この辺りの誠実なところは結構感心するところではある。

「ですが、一つだけ。姉上にだけは顔を見せて頂けませんか。『ザガン』を手に入れたことと同時に、眷属であるあなたのことも紹介したく思いまして」
「えっと……たぶん、皇女さまにこそ会わない方が良いような気がするのですが」
「そうですか?俺の姉上は特別警戒すべきお人ではありませんよ。どこの誰と繋がっているか分からないそこらの軍人よりは確実にね」

そうは言ってもだ。シンドリアでは紅玉姫と直接かち合わないように過ごしていたくらい、隣国の貴人を警戒していた此方である。白龍皇子とは、シンドバッド王さまからザガン同行のご命令を頂いたから仕方なく知り合っただけなのだ。“仕方なく”なんて言ったら悲しまれそうだから黙っておくけど。

「でも……煌帝国のお姫さまに此方ごときが、なんと顔を合わせればよいのです」
「難しいことは考えず、ただ俺の後ろに立っているだけでいいですよ」
「そんなわけにはいかぬでしょう……」
「それに、“ごとき”ではありません。今のあなたはもはや単なる異郷の友ではなく、俺の『ザガン』の眷属になりました。しかもあの時、あなただけが後を追ってくれた……これでも感謝しているんですよ」
「め、滅相もありませぬ」
「俺の唯一の姉にくらい、ご紹介させてくださいよ。俺が頼めば決して口外することはありません」
「でも……此方は本来人見知りというか……人前に出るのは性に合わないというか、人知れず密やかに生きていたいというか……」
「はあ、言い訳がましい人だな。面倒くさい」
「えーっ」

とうとうどストレートに悪口を言われた。ひどい。ため息まで追加しちゃって。

「俺の力になってくれると言ったでしょう?少なくとも敵対する相手ではないのだから、俺の関係者に今から顔を合わせておくのも必要なことだと割り切ってください」
「は、はい。わかりました……」
「分かればいいんです」

語気の感じからして、彼がもう何を言っても無駄モードに入ってしまったのを察した。此方は素直に頷くことしかできなかった。主の命令は絶対ということか……。そこまで言われたら従うしかないじゃないか。意思の弱い此方。

「ちなみに、姉上ならば鬼倭国のことも当然ご存知のはず。誤魔化しは効きませんので、聞かれたら正直に名乗ってくださいね。くれぐれも失礼のないように」
「は、はい。承知……」

意気消沈。なんかもう遠慮がないというか、言葉を選ばくなったという感じだ。もしかしなくても、此方が例の告白のことをいつまでも擦っているからその仕返しをされているのかもしれない。あーごめんなさい、悪いことをしました、もうしませんから許してくださいまし。
自分がやられた途端にそんなふうに都合よく反省したところで、此方はふいに顔をあげた。周囲に人の気配を感じたからだ。周りを見てもただの草原しかないこの地で何を言っているのかと思うだろうが、忍の勘がそう言っているのだから仕方がない。

「……」
「赤琉殿?どうかなさいました?」
「お静かに」
「……?はい」

複数人の足音だ。否、人ではなくこれは馬か。どこかから複数の馬の足音がする。この地域のことは此方には何も分からない……けれどこの音の正体がもしここらに住まう民族のものでないとしたら、彼らこそ煌帝国の軍人に違いあるまい。
かなり遠くから聞こえてくる音のようだ。今この瞬間に我々が狙われている感じはしないが、遮蔽物が何もないこの場所で敵に出くわしたらひとたまりもないので警戒は必要である。顔を左右方向へ動かし周囲に気を配り始めた此方の様子を見て、白龍皇子も何かを察したのか背中に背負っていたザガンの槍を手にした。
そのまましばらく直線的に進み続けると、やがて前方に人だかりが見えてくる。見渡す限りの平原だからまだ米粒のように小さいが、数十人規模の武装集団と見える。

「前方……馬に乗った人の群れが、向かって左方向に進んでいるのが見えます。あの方々は白龍皇子のお知り合いですか?」
「……ええ、知り合いというか、我が国の軍で間違いないようです。遠くて見えづらいですが煌帝国の旗が見えます。……ちょっと待ってください?あなた、この距離でどうやって事前に存在を察知したんですか」
「普通に足音が聞こえただけですが……」
「はあ?」
「そんな反応をされましても」

煌帝国の軍人ならば話は早い。なんせこちらは第四皇子の練白龍さまであらせられるぞ。彼がほんの少し顔を見せれば、軍人たちは頭を垂れて姉君のところへすぐに案内してくれることだろう、たぶん。
白龍皇子も同じことを考えているのか、あの集団が向かっている方へ軌道修正して、やや速度を上げた。相手はあまり移動が早くないから軍事的な行動をしているのではないと勝手に予想してみた。見回りにしては数が多いから、遠征から基地へ帰るところなのか、偵察みたいなことをしているのか……まあそういう事情は全部白龍皇子が把握すればよいことだ。
そろそろ相手方もこちらの存在に気がつく頃だろう。ならばそろそろ退散せねば。此方は真上を見上げて申し上げた。

「では白龍皇子、示し合わせた通りに。どうぞ気にせずこのままお進み下さいな。この赤琉、あなたがお呼び立てしたところに即座に参上いたします」

そこまで言って、返事も待たずに此方は忽然と身を消した。『霧隠れ』を発動させて全身を空気に変えた。もっと言えば、体を消した状態で馬と並走し始めた。
目の前に跨っていた人間が急に消えたことで白龍皇子は驚いたようだが、もう見慣れた光景には違いないので特に大した反応もなかった。一人分の重さが無くなったことで馬も身軽になったらしい。先程よりもさらに加速していくから此方も負けじと地面を蹴る。
空気なのにどうやって蹴っているのかなどはあまり気にしなくてもいいことだ。此方にも上手く説明ができない。とにかく今は文字通り風になって走っている。

「なるほど。もうどこにいるのかも分かりませんが……耳の良いあなたなら、どこから呼んでも参られると」

白龍皇子は引き続き馬を走らせながら、先の言動に色々と腑に落ちたようにそんな独り言を言った。此方がさっき消えた地点を振り返っているが、残念ながらそんなところを探してももう此方の幻影は見つかりはしない。実際にはおそばを離れることなく真横を走っているのだから。
あなたのお言葉通り、たとえどこにいようと合図があれば姿を現すようにしよう。それは逆に言えば、あなたの声が聞こえないところには行かないということだ。安心してほしい、此方は空気に身を隠しても視界ははっきり見えるし音もきちんと聞こえている。


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