添い寝


「これ、俺の前では外して下さいよ」
「……だ、だめ」
頭に伸びる白龍さまのお手を思わず掴んだ。けれどその隙に今度は彼のお顔が近づいてきて、有無を言わさず唇を奪われた。
「あ、う……、っ」
獲物に噛みつくような、それでいて愛おしむようなそのキスは、触れるだけでは飽き足らずいつまでも終わりが見えなかった。こんなことをされてはさすがに意識がそちらに持っていかれて、目の前の肩を押し返そうとするもそれは彼の狙い通りだった。
白龍さまはしばらくの間手で顔を包むなりして油断させ、此方がキスに気を取られている間に再び頭に手を伸ばし、此方の角を奪い去ってしまった。「あっ」と慌てて声をあげるももう遅い。この身長差と彼の長い腕で高く掲げられたらどれだけジャンプしても届きそうにない。
それどころか、白龍さまはザガンの力で部屋の中に植物のつるの束を天井まで伸ばし、あろうことかその中に隠してしまった。
「これでもう逃げられない」
なんてことだ。此方の宝物が取られた。しかもつるが木のようにぎちぎちになってどこに飲み込まれたか分からなくなってしまった。唖然とする此方に対して、思い通りにことを進める白龍さまはもう近くにはいなくて、素知らぬ顔をして向こうの寝台に腰かけている。
「あ、あんなことしたら壊れちゃう……」
「壊しはしません。あの木は柔らかい種なので傷もつきません。それに、すぐに返して差し上げますのでご安心下さい」
「ひどい」
なんかあの人余裕ぶっこいてるけど、角は取られちゃうし、キスされるしでてんやわんやになって此方は泣きそうになった。あれは此方の大事な大事な……。
「それより、こっちへ」
「……」
「二度も言わせないで」
このわがまま皇子さまめ。べつに眷族器がなくても窓から飛び出して屋根を伝って逃げることくらいわけないんだぞ。まあそんなことしたら十中八九お怒りに触れるのでしないけど。キッと睨みを効かせ、恨めしく思いながらしぶしぶ近くに行くと、白龍さまの方こそ仏頂面で此方の手を引いて寝台にあがらせた。
この皇子さま専用と言わんばかりの天蓋つきの寝台に乗るのは未だに慣れない。ぎこちない動きで履物を脱いだらすぐに彼に押し倒されて掛け布を勢いよくかけられた。此方を寝かせようとしているのだ。寝られないのを不憫に思ったのだろうか。優しいなー優しすぎて泣いちゃう。

白龍さまは左手の義手を外すといよいよ自分も寝台に寝転がった。此方の頭上に肘をつき見下ろしてくるから体を反対方向の壁側に向けた。そしたらここぞとばかりに距離を詰められ腹に腕をまわされた。
「赤琉殿」
「……はい、なんでしょう」
「もう観念して煌の人間になってはいかがです。祖国のことは忘れて」
「お得意の侵略文句ですこと」
「だってもう帰る場所がないんでしょ?」
「白龍さまのせいなのに」
「いつまで言ってるんですか。そんなの俺の知ったことじゃない。鬼倭がよそ者に厳しかったというだけの話でしょ」
「此方はよそ者なんかじゃない……」
「はい、はい。そんなあなたのことも煌帝国なら関係なく受け入れて差し上げますよ?というか、頭飾りがなければあなたはほとんど煌国民にしか見えませんね」

「此方は生粋の鬼倭人です。あなたがと一緒にしないでくださいな」
「はいはい」
「……」



一人で使っているだろうに、元々複数人で寝ることを想定しているかのような十分な広さの寝台に

此方が壁側だからいくら遠ざかろうとしても一定以上の距離をとることはできない。だいたい壁側に寄ったところで白龍さまの手がむりやり此方を抱き寄るからいつまでも離れられない。

けれども不思議なことに一人で寝るよりも随分と早く寝落ちた。


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