「俺はしばらくは留学前と同じように慎ましやかに過ごします。大人しく従僕な第四皇子として。その間、あなたには俺の知り得ない情報や帝都内の近況をなるべく仕入れてきてほしいのです」
「つまり、宮殿内では必ずしも俺の近くにいる必要はありません。組織の魔導師が多く存在しているので、くれぐれも気をつけて……ご自分の判断で、見つからぬよう動いてください」
「もし急を要する場合は『ザガン』で合図しますので」
偵察を始めてまず思ったのは、白龍皇子は事前に言われていたよりもずっと従者に慕われている感じがするということ。彼自身が物悲しそうに諦めたように国では孤立していると言うから、てっきり誰からも毛嫌いされているのかと思ったが、専属の女中や日頃鍛錬に付き合う武官などはそこらの主人と接する時と何ら変わらない態度だ。
それどころか、留学以前よりも少し顔つきが変わったことについて心配そうに話していたり、会う機会が極端に減った白瑛姫や新皇帝となった実の母君との関係についても、良い方向に進んでいくことを陰ながら願っているようだった……白龍皇子は幼少の頃は大火傷や地位陥落のこともあり実際疎まれていた時期もあったのかもしれぬが、きっと成長するにつれて本来の性格である誠実さや真面目さを評価してくれる人もたくさんいたと思うのだ。
それなのに、彼が使用人たちに向ける視線はどこか冷めていて……それでも今そばにいる使用人たちは、誰しもが過去の事件や境遇のことをきちんと分かっているから、たった一人の主である悲劇の皇子の平穏な人生を、ただひたすらに願っているのだ。
白龍皇子はシンドリアで出会った人に対してはこうではなかった。煌帝国の人間だから、それだけの理由で一線を引いてご自分の心を守っているのだ。ほんの些細な敬意のみでは簡単には覆せないほどの人間不信に陥っている。それは悲しきことだ。
しかしいくら外野が取り繕おうと、その霞掛かったフィルターを取り除けるかどうかは本人の抱く感情次第でしかないので、此方にはどうすることもできないだろう。此方にできる程度のことは、きっと白瑛姫が既に解決しているはずだもの。
「つまり、宮殿内では必ずしも俺の近くにいる必要はありません。組織の魔導師が多く存在しているので、くれぐれも気をつけて……ご自分の判断で、見つからぬよう動いてください」
「もし急を要する場合は『ザガン』で合図しますので」
偵察を始めてまず思ったのは、白龍皇子は事前に言われていたよりもずっと従者に慕われている感じがするということ。彼自身が物悲しそうに諦めたように国では孤立していると言うから、てっきり誰からも毛嫌いされているのかと思ったが、専属の女中や日頃鍛錬に付き合う武官などはそこらの主人と接する時と何ら変わらない態度だ。
それどころか、留学以前よりも少し顔つきが変わったことについて心配そうに話していたり、会う機会が極端に減った白瑛姫や新皇帝となった実の母君との関係についても、良い方向に進んでいくことを陰ながら願っているようだった……白龍皇子は幼少の頃は大火傷や地位陥落のこともあり実際疎まれていた時期もあったのかもしれぬが、きっと成長するにつれて本来の性格である誠実さや真面目さを評価してくれる人もたくさんいたと思うのだ。
それなのに、彼が使用人たちに向ける視線はどこか冷めていて……それでも今そばにいる使用人たちは、誰しもが過去の事件や境遇のことをきちんと分かっているから、たった一人の主である悲劇の皇子の平穏な人生を、ただひたすらに願っているのだ。
白龍皇子はシンドリアで出会った人に対してはこうではなかった。煌帝国の人間だから、それだけの理由で一線を引いてご自分の心を守っているのだ。ほんの些細な敬意のみでは簡単には覆せないほどの人間不信に陥っている。それは悲しきことだ。
しかしいくら外野が取り繕おうと、その霞掛かったフィルターを取り除けるかどうかは本人の抱く感情次第でしかないので、此方にはどうすることもできないだろう。此方にできる程度のことは、きっと白瑛姫が既に解決しているはずだもの。