本心


「どんな形であれ好意的な気持ちを抱いていなければ、自室に匿うなんてことはいたしませんよ」
「……」
「他の誰もが俺に理解を示さなかった、そんな時に危険を顧みず、単身で敵地に乗り込んでまで俺のそばにいてくれるあなたのことを、特別視しないはずがないでしょう?」

「どうしてあの時の俺は……本当のあなたの魅力に気が付かなかったのでしょう」

「もう俺にはあなたしかいない」


「赤琉殿にも……俺しかいない、そうでしょう?」



白龍皇子の唇が、確実に此方のそれに触れた。

「あ、“あの方”のことは、どう……」
「……」
「あ、えと、その……」

今の発言を激しく後悔した。名前を出しはしなかったけれど、誰のことを言ったのかは丸わかりだった。白龍皇子は目を細めたまま微笑んだ。その笑顔が少し怖かった。

「あれは、一時の気の迷いでした」
「……そんな」
「赤琉殿。今後、俺の前で再びその話をしたら二度と口を聞けなくしますよ」
「……」
「分かりましたか?物分かりの悪い人は嫌いです。でもあなたは違いますよね。俺には分かっていますよ」

此方が発言をやめたのは、彼の手が此方の唇に触れているからだ。親指が優しく撫でているのだ。でも例え触れられていなくても何も話せなくなっていたかもしれない。そんなふうに近くから白龍皇子の青い瞳に見つめられたら、言葉が出てこなくなる。

「赤琉殿、俺の近くにいたいと言うなら、俺の言うことを聞いてくださいね」
「……は、はい」
「どうしてそんなにも自信なさげに返事をするんですか?あなたはもっと溌剌な人だったでしょう?どこか記憶と違うような」
「……」

あなたに言われたくない。あなたの変わりように比べれば、此方の変化など些細なことだ。



「後悔していますか?俺のところに戻って来たこと」
「後悔などとは……」
「この眷属器の、本当の主は今頃何を思っているのでしょうね。誠実なあなたががまさか煌帝国に寝返るだなんて、夢にも思わないでしょうね」
「……」

母上は何を思っているだろうか。そんなことは常日頃から気になっていたことだ。何年も目覚めないあの方のことを、此方が考えなかったことはない。

「此方は国を裏切ったのではなく、あなたさまを裏切らなかっただけです」
「“愛国者”の赤琉殿がいつから俺の味方になったんですか?」
「……」
「まあそんなことはいいか。今のあなたこそ、俺の唯一の味方なんですから」

「赤琉殿。あなたのことを、心から愛してもいいですか?」
「……」
「これからも裏切らないでいてください。俺のことだけは。あなたにまで手を離されたら、いよいよ壊れてしまいそうだ」





「赤琉殿。今日も眠れなかったんですか?」

「なら、今夜は一緒に寝ましょうか」
「え、」
「そろそろあなたの全てが欲しいと思っていたところなんです。身も、心も全部」


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