世継ぎ問題


最近執務の合間や夜の宴会にてやたらと女の芸を見せられるから何かと思えば国の者たちが俺に早いところ身を固めるため行動に出たらしいと気づく白龍
自分もそのつもりでせきるを説得しようとしていたが前にそのせいで泣かせてしまったことが割かし応えており、無理強いさせることを諦めていた
(これまではせきるが従者たちに目をつけられないように、あとモルさんアラジンにも多少遠慮して一度も人前でいちゃいちゃしたことがなく、密かにせきるの部屋に忍び込み会いに行っていたか、もしくはその逆に密かに訪ねてきたところを襲いかかっていたから、国の者たちはせきるとの関係がどんなもんか知るよしもないというかただの眷属の一人だと思っている)(その上最近は同じ宮中に住んでいるのに会う頻度も減ってしまっているし、せきるに本気だからいくら女に接待されようと追い払っていたせいで、白龍にほぼ女の気が無く世継ぎが生まれないことを心配しているらしい)

「皇帝陛下はもしや女に興味がないのだろうか……?」
「それでは困る。そうだとしても、なんとかして世継ぎを生んでいただかないことには」

このままではしつこいのがずっと続いてしまうので、仕方なく従者をたくさん引き連れたところにせきるを呼び出して、人前でいちゃいちゃし始めた。ベンチのとこで膝に乗せてキスをしたら中庭の少し離れたところとはいえ人前だからと慌てて離れようとするせきるに「俺はもうなりふり構わないことにしたんです。いいえ、あなたを妃にするために、ではなくて。あの者らを分からせるために」と言って言うことを聞かせた。その後もあえて頻繁に人目も気にせず堂々とせきるの部屋を訪れたら(えっちするときもしないときも)、皇帝が女に興味がないのは存命のただ一人の眷属と恋仲だったからなのだと噂になり、思った通りせきるを妃にしようと提案された。

「陛下と眷属殿がそんなような関係だったとは……」
「これで満足か?俺だとて女を知らぬ訳ではない」
「では、妃になさらないのはあえてのご判断ということでしょうか?互いに想いあっておられるようですし、ぴったりではありませぬか」
「彼女を妃にするかどうかは俺の裁量次第だ。あなた方はとやかく言わないでほしい」
「しかし、お言葉ですが我々にはどうにもあなた様にはその気が全く無いように見えまする。眷属殿のお立場を考慮なさっておられるのか?ならば彼女の出身国である鬼倭王国にその旨を……」
「いいから放っておけ。今はその時ではない」
「陛下。我々は」
「いいか?赤琉や鬼倭国には一切掛け合うな。全ては俺がその気になってからだ。お前たちの独断で何かしようとすれば一人残らず殺す」
「ひいっ」←笑

その後はもう隠す意味もないと思い、見せつける目的ではなく普通に人前でもいちゃいちゃするようになった(モルさんもアラジンも既に勘づいているし今更こんなことでアリババを思い出され悲しまれてもどうでもよかった)。従者は相変わらず妃にして欲しそうだったが、皇帝の言いつけ通りせきるに近づく者も鬼倭国に連絡をとる者もいなかった。
肝心のせきるの方は人前でいちゃいちゃすること自体恥ずかしくて嫌がったし、妃にさせるために周囲に知らしめているんだ!と思いますます会い来なくなり、その上わざと避けられるようになってしまった。でもいちゃいちゃしたくなった時は「最近後宮に興味が」とか「他国の使節に美しい人が」とか言ってかるーく脅しをかければ目論見通りすぐに「いやだこなたを捨てないで」と懇願に来るから、普段は安心して放っておけるし、好きな時にいちゃいちゃできるから鬼倭国に亡命する話が出てくるまでの数ヶ月間そんな感じで現状維持を保った。

「ねえモルさん。最近さぁ、白龍くんさぁ」
「はい。私もそう思います」
「なんですか。目の前で俺の噂話などしないで頂いて」
「だって君さぁ……赤琉おねえさんから聞いたよ?これまでのこと。眷属だってことにかこつけて、わざと気を持たせて言うこと聞かせてたんでしょ?やりたくないことを無理やり。その上今も皇帝って身分を振りかざして色々好きにやってるみたいじゃない?どうなの?それはさぁ」
余裕そうに茶を飲んで尋ねる白龍。
「赤琉殿がそう言っていたんですか?」
「そのまま言葉通りって訳ではありませんが……でもそう解釈できました」
「はぁ。それで、何が言いたいんですか?お二人は」
「何ってそんなの!そろそろ赤琉おねえさんを解放してあげるべきじゃないの!?だって七海おねえさんも白龍くんの命令のせいで国に帰れないんだって怒ってたじゃないか」
「いやいや、俺の方こそ当初はそう勧めましたよ?残ったのはご本人の意思でしょ?」
「でも今の赤琉おねえさん、とっても苦しそうだよ。本当は国に帰りたいけど、白龍くんを気遣ってそばにいてあげてるんだよ、きっと。そんなの可哀想じゃない」

「そんなことを言われても。結局煌帝国に残ってるんだから、赤琉殿は健彦殿よりも俺の方を優先したってことでしょう。なにより、俺のことが好きなんですよ、彼女は」

「モルさん、やっぱり白龍くんって、なんかさ、変わっちゃったよね」
「はい。そうですね」
「前はさ、こんなに独善的な感じじゃなかったのにね。皇帝って皆そうなのかな」
「はい。そうなのかもしれませんね」
「あんたら何しに来たんですか?冷やかしに来ただけなら帰って頂けます?」


「そんなに気になるなら俺にではなくご本人に助言すればいいじゃないですか。どうせ今の会話もその辺で聞いてるんでしょう?」
「え?」
「赤琉殿、出て来てください」

シーン。

「いないっぽいよ?」
「いないっぽいですね」
「赤琉殿。出てこないと健彦殿に言いつけますよ」
「何を言いつけるんですか?」
「そうですね。寝言の内容とか、いつも俺に甘えてくる時の様子とか、あとは健彦殿の悪口とか、」

出てきた。

「タケル様の悪口なんて此方がいつ言ったのですか!戯言はおやめくださいな!」
「うわっ本当にいたの!?」
「ほら。俺たちがこそこそと集まっていたら話を聞かない訳にはいかないですもんね、赤琉殿」
「は、白龍さま、ずるい」
「盗み聞きしてる人が何を言ってるんですか」


「それで、この二人があなたに何か言いたいことがあるそうですよ」
「……」
「や、やあ。赤琉おねえさん」
「こんにちは。赤琉さん」
「こ、こんにちは……」

「赤琉おねえさんは白龍くんと一緒にいて楽しいの?」
「どういう意味ですかそれ」
「白龍くんは黙ってて!」
「……はいはい」

「た、楽しいも何も、此方は眷属で……」
「それは『ザガン』の眷属の意思ですよね。金属器の主というだけの白龍さんが赤琉さんの行動を縛る権利などないはずです」
「だいたい一度鬼倭国を追い出されちゃったのも、元は白龍くんの眷属になったことが要因だったんでしょう?鬼倭国の王さまが帰ってきてもいいって言ったなら、白龍くんのところに留まる必要なんて無いと思うんだけど……」

「此方は必要不必要のためではなく、自分の意思でここにいるのです」
「本当に?白龍くんに脅されてない?ほら、彼ってわりとそういうところあるじゃない?うわっ!ちょっと白龍くん殴りかかるのはやめて!机の上に乗るのはお行儀よくないよ!」
「うるさいな!いちいち俺を下げるのが気に障るんですよ!」
「は、白龍さまっ」

「仰る通り、白龍さまってこんな感じですけど……」
「はい?」
「でも、この方は此方のことをとっても大切にして下さっているのですよ。お二人にはそう見えなくとも、此方には分かっているのです。それでいいのです。白龍さまのことを分かっているのは此方だけで」
「それを聞いて安心したけど、白龍くんがすっごい勝ち誇ったような顔してるのムカつくなぁ〜。モルさん、さっきの仕返しのために一回殴ってくれない?前から鬱憤晴らしたかったでしょ?」
「はい。わかりました」
「ちょっとちょっと!」



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