大広間に並ぶ家の者たちに出迎えられる此方たち。久々の元当主のご帰還に張り切っているのだ。
「このお屋敷にいる方々は皆、赤琉殿のご家族ということですか?」
「いいえ?氷川家は城下出身の門下生を多く抱えているので、そうでない者がほとんどです。彼らは我々が師事すると同時に寝食も提供していて、鍛錬を積み、選抜を抜けた強者のみがタケル様の下につくことが許されます」
「使用人もいますし、」
「氷川総本家の人間は今は此方の血族しかおりませぬ。つまり、此方と此方の両親のみです」
「では、あなたのご両親はどちらに?まだ挨拶を済ませていないですよね」
「……」
「今は訳あってお二人とも表に出てくることができませぬ。ひとまずは部屋でお体をお休めくださいな」
それから数日経っても会う機会がなかった。
「あなたの母君は今、何をなさっているんですか?『アミー』の主でしたよね」
「なんじゃ。まだ話しておらんのか」
「……」
「次面会できるのはいつだったか」
「明日でございます」
「そうか。ならばおれも顔を出そう。そろそろ文句のひとつでも言ってやらねばならん。おぬしの父親のこととか……色々あるぜよ!」
「白龍さま。いよいよ本日、此方の母上をご紹介しますので、朝食を終えたらそのままお待ちくださいな」
「はい、もちろん」
「それって僕も参加していいのかな?『アミー』にようやく会えることずっと楽しみにしてたんだ」
「はいな。この後アラジンさまのこともお誘いするつもりだったのですよ。モルジアナさまも、よろしければおいでになってください」
「私もいいのですか?なにやら重要そうな人物のようですし……面会と言うくらいなので」
「お気になさらず、軽い気持ちで顔を見せていってくださいませ。そのが此方も喜びます。皆さまのことを母上にご紹介できるなんて、夢にも思わなかったから」
「お前とまた会うことになるとはね、『アミー』」
「それは我のセリフだ。『ザガン』よ」
「お二人はどういう関係なんですか?『ザガン』は前から意味深なことを言っていましたが」
「この二人は……まあ、兄弟みたいなものさ。そうだよね」
「『アミー』さま。ずっとお聞きしたかったことがあります。どうして此方は二つの眷属器を与えられたのですか?」
「正直に言うと、あの時の此方は白龍さまには毛ほども忠誠心を持ち合わせていませんでした。此方にはタケル様と母上のことが全てだったのに、それなのに突然『ザガン』の眷属器を与えられ、そこのジンには浮気者だとか言われるし……」
「ふん。事実だろ」
「こんな気持ちになるくらいなら『ザガン』の眷属器など持たない方がよかったのに。おかげで国に帰ってもはぐれ者みたいになるし、父上には酷く怒られるし、白龍さまには利用されるし……」
「ちょっと。その言い方はあんまりでは?」
「え?事実ですよね?」
「事実ですけど」
「お前の主は床に臥した。お前には新たな主が必要だった。それを我が王が望んだ。それだけの話だ」
「母上が……?母上と話をしたのですか?」
「我は『アミー』。我が王とは精神世界で繋がっている。その程度の意思疎通などは容易い」
「それならどうしてタケル様の眷属にしてくださらなかったのですか?」
「『カイム』の主がお前を眷属の器だと認めていなかったからだ」
「え……?」
黙りこくる赤琉の肩に手を置く白龍
「あとで健彦殿に問いたださなければなりませんね」
「……」
「母上は他に何か話していましたか?」
「タケル様っ!酷いではありませんか!」
「え?」
「此方、此方は……ずっとあなた様のことをお慕いしていたのにっ、最低!思わせぶりなことして期待させて!此方のどこか至らなかったのか、白状して下さるまで帰しません!」
「な、なんじゃ。おれが何をしたと言うのだ、おお赤琉、何を泣いておる。おぬしに涙は似合わんぜよ。おい白龍!何があったのか説明せよ!」
「ん?おれが赤琉を眷属だと認めなかった理由?『アミー』がそう言ったのか?」
「まあ確かにそやつの言う通りかも知れぬ。赤琉におれの眷属なんぞ務まる訳がなか」
「なぜ?そんなこと言って赤琉殿が可哀想だとは思わないんですか?」
「可哀想もなにも!当たり前のことをなぜ説明せにゃならん!女子が刀を持って戦うなんぞおれが許すと思うとか!?」
「赤琉はおれの目の届くところでただ平和に過ごしておれば満足だったっちゅーに。うちの侍共のどれかを婿入りさせて、用心棒に守られながら、茶室で心安らかに花を愛でる姿だけを想像しておった……」
「そうでなくとも下町の男と激しい恋をして駆け落ちするとか、あるいはおれが側室に迎えるとかなんとかして、今頃は鬼倭の良い男と結ばれるはずじゃったぜよ!」
「それがなにか?連れてきたのはよその国の野蛮な男とな。おれは認めんぞ!白龍、よくもおれの赤琉を奪いおって!」
「ええっ、話が違うじゃないですか!」
「ええいうるさいぜよ!よもや受け入れられたと思っとったのか!たわけが!今でも気持ち的には反対じゃ!」
「あの日おぬしが父上を打ち負かしてから全てが狂った。まだこんなに小さかったのに侍共の頭になって、迷宮攻略にも同行し出すし、挙句には海外へ行くとか抜かして、あのシンドバッドの世話にまでなりおって」
「赤琉に武芸の才があったばかりに……巡り巡って、今こうしておれの手元から離れて行く。なんと寂しいことか」
「赤琉。やっぱり結婚はやめておれのところで暮らさぬか。そのが七海も喜ぶぜよ」
「健彦殿。俺の婚約者をそそのかすのはやめて下さい」
「タケル様……此方にはやっぱりタケル様の方が……」
「赤琉殿!簡単にそそのかされるのはやめて下さい!もう決めたんでしょ!?煌帝国に行くって!」
「このお屋敷にいる方々は皆、赤琉殿のご家族ということですか?」
「いいえ?氷川家は城下出身の門下生を多く抱えているので、そうでない者がほとんどです。彼らは我々が師事すると同時に寝食も提供していて、鍛錬を積み、選抜を抜けた強者のみがタケル様の下につくことが許されます」
「使用人もいますし、」
「氷川総本家の人間は今は此方の血族しかおりませぬ。つまり、此方と此方の両親のみです」
「では、あなたのご両親はどちらに?まだ挨拶を済ませていないですよね」
「……」
「今は訳あってお二人とも表に出てくることができませぬ。ひとまずは部屋でお体をお休めくださいな」
それから数日経っても会う機会がなかった。
「あなたの母君は今、何をなさっているんですか?『アミー』の主でしたよね」
「なんじゃ。まだ話しておらんのか」
「……」
「次面会できるのはいつだったか」
「明日でございます」
「そうか。ならばおれも顔を出そう。そろそろ文句のひとつでも言ってやらねばならん。おぬしの父親のこととか……色々あるぜよ!」
「白龍さま。いよいよ本日、此方の母上をご紹介しますので、朝食を終えたらそのままお待ちくださいな」
「はい、もちろん」
「それって僕も参加していいのかな?『アミー』にようやく会えることずっと楽しみにしてたんだ」
「はいな。この後アラジンさまのこともお誘いするつもりだったのですよ。モルジアナさまも、よろしければおいでになってください」
「私もいいのですか?なにやら重要そうな人物のようですし……面会と言うくらいなので」
「お気になさらず、軽い気持ちで顔を見せていってくださいませ。そのが此方も喜びます。皆さまのことを母上にご紹介できるなんて、夢にも思わなかったから」
「お前とまた会うことになるとはね、『アミー』」
「それは我のセリフだ。『ザガン』よ」
「お二人はどういう関係なんですか?『ザガン』は前から意味深なことを言っていましたが」
「この二人は……まあ、兄弟みたいなものさ。そうだよね」
「『アミー』さま。ずっとお聞きしたかったことがあります。どうして此方は二つの眷属器を与えられたのですか?」
「正直に言うと、あの時の此方は白龍さまには毛ほども忠誠心を持ち合わせていませんでした。此方にはタケル様と母上のことが全てだったのに、それなのに突然『ザガン』の眷属器を与えられ、そこのジンには浮気者だとか言われるし……」
「ふん。事実だろ」
「こんな気持ちになるくらいなら『ザガン』の眷属器など持たない方がよかったのに。おかげで国に帰ってもはぐれ者みたいになるし、父上には酷く怒られるし、白龍さまには利用されるし……」
「ちょっと。その言い方はあんまりでは?」
「え?事実ですよね?」
「事実ですけど」
「お前の主は床に臥した。お前には新たな主が必要だった。それを我が王が望んだ。それだけの話だ」
「母上が……?母上と話をしたのですか?」
「我は『アミー』。我が王とは精神世界で繋がっている。その程度の意思疎通などは容易い」
「それならどうしてタケル様の眷属にしてくださらなかったのですか?」
「『カイム』の主がお前を眷属の器だと認めていなかったからだ」
「え……?」
黙りこくる赤琉の肩に手を置く白龍
「あとで健彦殿に問いたださなければなりませんね」
「……」
「母上は他に何か話していましたか?」
「タケル様っ!酷いではありませんか!」
「え?」
「此方、此方は……ずっとあなた様のことをお慕いしていたのにっ、最低!思わせぶりなことして期待させて!此方のどこか至らなかったのか、白状して下さるまで帰しません!」
「な、なんじゃ。おれが何をしたと言うのだ、おお赤琉、何を泣いておる。おぬしに涙は似合わんぜよ。おい白龍!何があったのか説明せよ!」
「ん?おれが赤琉を眷属だと認めなかった理由?『アミー』がそう言ったのか?」
「まあ確かにそやつの言う通りかも知れぬ。赤琉におれの眷属なんぞ務まる訳がなか」
「なぜ?そんなこと言って赤琉殿が可哀想だとは思わないんですか?」
「可哀想もなにも!当たり前のことをなぜ説明せにゃならん!女子が刀を持って戦うなんぞおれが許すと思うとか!?」
「赤琉はおれの目の届くところでただ平和に過ごしておれば満足だったっちゅーに。うちの侍共のどれかを婿入りさせて、用心棒に守られながら、茶室で心安らかに花を愛でる姿だけを想像しておった……」
「そうでなくとも下町の男と激しい恋をして駆け落ちするとか、あるいはおれが側室に迎えるとかなんとかして、今頃は鬼倭の良い男と結ばれるはずじゃったぜよ!」
「それがなにか?連れてきたのはよその国の野蛮な男とな。おれは認めんぞ!白龍、よくもおれの赤琉を奪いおって!」
「ええっ、話が違うじゃないですか!」
「ええいうるさいぜよ!よもや受け入れられたと思っとったのか!たわけが!今でも気持ち的には反対じゃ!」
「あの日おぬしが父上を打ち負かしてから全てが狂った。まだこんなに小さかったのに侍共の頭になって、迷宮攻略にも同行し出すし、挙句には海外へ行くとか抜かして、あのシンドバッドの世話にまでなりおって」
「赤琉に武芸の才があったばかりに……巡り巡って、今こうしておれの手元から離れて行く。なんと寂しいことか」
「赤琉。やっぱり結婚はやめておれのところで暮らさぬか。そのが七海も喜ぶぜよ」
「健彦殿。俺の婚約者をそそのかすのはやめて下さい」
「タケル様……此方にはやっぱりタケル様の方が……」
「赤琉殿!簡単にそそのかされるのはやめて下さい!もう決めたんでしょ!?煌帝国に行くって!」