ねこを見かけました。おへやの窓からこっそり外に抜けだして三歩くらい歩いたところの木の真下で、真っ白けのねこがこっちを見ているのに気づいて、思わず捕まえました。彼はにゃんと鳴きました。わたしはぐるると鳴きました。
いつもなら鎖につながれた首輪のせいでおそとには出られないけれど、今日は几帳面なあのひとには珍しく南京錠の噛み合わせが甘かったみたいで、ほんの少しひっぱっただけで簡単に外れたのです。わたしはラッキーと思って、おへやの天井までのぼっていって、きらきらかわいい色をしたステンドグラスの窓を割って、翼を広げて、るんるん気分でおそとに出ました。このお城を囲う森はめずらしいいきものがたくさんいるという話を聞いたから、一度冒険をしてみたかったのです。さっそくねこを捕まえたわたしはそれをじっと観察をしながら地面に転がして手でこねこねしました。いつものごはんよりすこしきたないけどおいしそう。わたしは首の裏にがぶりと噛み付いていきのねをとめてから、むしゃむしゃと生肉を味わいました。今はあのひとがいないからきれいに食べなくてもへいきなの。おぎょうぎとか考えないで一心不乱に噛み付くおにくはなんだか味以上においしくてたのしくて、おくちのまわりに血がつくのとか髪の毛に肉片がつくのとかも気にしないで夢中であむあむとほおばっていたから、うしろから近づいてくるひとつの影に気づくことができませんでした。
「可愛いミラー、こんなところに」
小さなのうみそをひっぱりだしながら顔をあげたら、そこにはあのひとがいました。やさしげに微笑みながら近づいてくるそのひとは、わたしの飼い主さんで、このお城の主さまです。おへやを出たこと、もう気づかれてしまったみたいです。このひとはオニの血が流れているからわたしよりも耳がよくて、そういうのにも敏感なのです。いつもはやさしくてやさしい彼だけど、なんだか今は怒っているようなかんじがします。それもそのはずです、主さまに内緒でおへやを抜けだして、お城の外に出ただけでもだめなのに、こんなにおぎょうぎの悪い食べかたをして、……彼が怒らないわけがありませんでした。すぐにおくちに咥えていたのうみそをぱっと落として、主さまの青色の瞳をじっと見つめながら、しっぽでまわりの草をかきわけながら、ゆっくりと後ずさりました。おしおきされちゃうかな。こわいな。
「おいで、ミラー」
地面にころがった肉片を踏まないよう避けながら、様子をうかがうように上目づかいするわたしにゆっくりと近づき膝をついて、主さまはいつもみたいにやさしい手つきで頭をなでなでしました。なでなですき。だけど今はおこられるんじゃないかと気が気でなくて、じっとおとなしくしていたら、主さまはお洋服に血がつくのも気しないでわたしを抱きかかえました。
「まったく、駄目だと言いつけておいたのに勝手に外に出て……まずは体を清めましょうね。それから美味しいご飯を食べましょう」
からだについた草や泥を丁寧に払い除け、