| サブストーリー/太平洋航海中(z=146辺り) 「名前ちゃんも乗ってたんだね!んー、最高の航海だねこれは!」 「ぎゃー!見つかった!!」 アメリカ大陸を目指して船を進めていたその航海の中、戦闘組はより戦力を上げるために氷月を再び復活液にて目覚めさせた。そして氷月の申し出により彼の右腕であるほむらと、最強の戦士モズにも復活液をかける。彼らは再び敵対することなく、戦闘の稽古が始まった。それは名前も参加するに値するメンバーだったのだが、モズにはあまりいい思い出がない。かといって稽古をサボるのも良くないしと悶々としている中、杠に手伝ってほしいことがあると言われていい口実が出来たと稽古を後にした。だがそんなのは微々たる時間稼ぎにしかならず、夕飯の時間に即効バレてしまった。 「え〜なんでそんな嫌がるの?あの時はあんな善がってたじゃん」 「演技だよ演技!とにかくもう演技する必要ないから、あなたの言いなりにはなりません!」 「んなこと言わないでさぁ、今夜一緒に寝ようよ」 「寝ないよ!!」 完全にモズのお気に入りになってしまった名前は先ほどから熱くアピールされるも必死に彼から逃げていた。そんな甲板追いかけっこをしながら、丁度名前はある人物を見つける。そしてそのままその後ろに隠れた。 「ゲンくんたすけて!」 「えぇ!俺なの!?」 名前と仲が良いであろう人物トップクラスに入るゲンがモズの前に立ちはだかる。盾にされたという方が正しいが。そしてまさかの自分が選出されたことに驚きを見せるも、すぐにいつものメンタリストの顔になった。正直言って今ここで助けを乞うに一番適任の男がいることをゲンは知っているが、彼は今通信室の方に居てこの場にはいない。 「まあまあモズちゃん、嫌がる女の子を追いかけまわすのは男としてどうなの〜?むしろ逆効果だから止めた方がいいよ〜?そーれーにぃー、実は名前ちゃんにはもう”千空ちゃん”っていう”彼氏”がいるんだよねぇ〜〜〜!!」 「えっ?」 あえて声を大きくして聴こえるように言い放ったゲンの発言に、モズだけでなく名前も驚いてみせた。そんなゲンの顔は今までに見たゲス顔の何倍もゲスくて、彼を盾にした名前ですら引いてしまう。そして彼は確実にモズではない誰かに向かってその発言をした。 「へえ、それは初耳だな…」 「お"ー、俺も初耳だわクソメンタリスト」 「あぁ〜〜!”名前ちゃんの彼氏”の千空ちゃんじゃな〜い!いいところに来たね!ほらほら彼女を守ってあげてよ!」 「俺が近くに居たの知っててわざと声張り上げただろテメー……つかうぜえ押すな!」 背後の通信室方面からやって来たのは今まさに名を挙げられた千空で、耳をほじりながら心底面倒くさそうな顔をして見せた。どうやらゲンはすぐ近くに千空が居たことに気づいていたみたいで、わざと彼の名を挙げて登場するよう仕向けたのだ。 「千空、君は…名前ちゃんの恋人なのかい?」 「ちげーな、んなん嘘だわ嘘」 「えええ!!そんなアッサリ!?俺のせっかくの嘘が!」 「今アッサリ嘘って言ったね」 このゲンの嘘にはちゃんと思惑があった。宝島でのモズの名前への行為はさすがの千空もご立腹だったと見ている。そんなモズが今まさに再び彼女へ近づくことを、きっと千空は良く思わないだろう。先ほどの千空おびき出し作戦は逆に面倒くさがって来ないという選択肢もあったのだが、結果千空は姿を現した。ということはやはり千空はモズと名前の距離を良く思っていないと見て、彼が近づかない口実として嘘でも付き合っている…と言うと思っていた。そしてそれはアッサリとネタばらしされてしまう。 「んー、彼氏が居ないんだったら、俺が名前ちゃん口説いても問題ないよね?」 「ああ問題ねーな、好きにしろよ。ただしコイツが嫌がってることはすんな、口説くのは自由だ」 勿論彼氏でもなんでもないのだとあればモズが彼女を口説くのはなにもおかしい事はない。少女漫画とかであればここで「コイツは俺の女だ!」みたいな展開でハッピーエンドとなってゲンの思惑通りだったのに、まったくの計算違いだ。だがその後に加えた千空の言い分は尤もで、口説く以前に彼女が嫌がっていたらそれは誰であろうと止めに入るべきである。千空はあくまで、一人の少女を守る一人の男子的行動をするのだった。「お前もそれなら文句はねーだろ?」と後ろにいる名前に問えば、「うん、それならいいよ!」とケロっとした顔で承諾する。いいんだ…、とゲンが苦笑いでその光景を見ながら小さく呟き、やっぱりこの二人って何かがオカシイ…、ともう何度目か分からない常識の崩壊を感じた。 「でも私、多分口説かれても落ちないよ?」 「へえ、どうして?」 「だってキスもエッチも全部千空がいいもん」 !?!?! 今、とんでもない発言を耳にした気がするぞとゲンは即座に辺りを見回した。幸いにもモズが追いかけっこをしてくれたお陰で夕飯の食卓とは離れた位置に来ていて、今ここにはこの4人しかいない。ふぅと胸をなでおろすもいやいやそうではなく、今彼女はなんて言った?そしてそんな発言を受けて千空の表情は先ほどとまったく変わってないのはどういうことだ?!とゲンは挟みたくなる口を抑えてその後の様子を必死で待った。 「あー……まあ、だとよ、残念だったな”モブ”」 「”モズ”ね」 「ごめんねモズくん」 「え、やっぱり君たち付き合ってるの?んー?」 「「付き合ってない(よ)」」 モズの目が点になった瞬間をゲンは見た。そもそも自分の目も点になってる気がする。 「つーわけだ、せいぜい頑張って健全に口説くんだな」 「変なとこ触ったりしてこないならいいよ、お友達にならなりたいし!」 「んー…………、んんんー?」 モズちゃん、君の反応は何も間違っちゃいないよ…。その場から離れていく二人をよそにポツンと立ち尽くすモズを見てゲンは思うのだった。 「(なんとな〜くだけど、あの2人の関係性が分かってきた気がする…)」 なんとなくすぎて今は明言できないが、とにかく付き合うとか付き合わないとかそういう次元の話ではない。 「(とりま、尋常じゃないレベルでお互い信じあっちゃってんのね、もう)」 |