| サブストーリー/司戦直後 「おい名前、医者の経験はあるか?」 「………あるよ」 ”司帝国 VS 科学王国”の決着は、無血開城で科学王国の勝利となった。誰一人死なせることなく、この戦いは幕を閉じるのだ。だから最後の戦いで重傷を負った司くんをなんとしてでも死なせるわけにはいかない。 「無免許天才医師の助手役で手術は何度かしたことあるけど、もちろん役だから臓器とかは模型だし助手の私は実際の細かな手術はしてない」 「模型っつっても最新の技術使った超絶リアルなヤツだろ?んで、お前がただの助手役だからって薄っぺらい経験してるわけねぇよなぁ?」 「勿論、助手でも医者だからね…医学頭にぶっ込んだよ」 今このストーンワールドには医者がいない。奇跡の水の洞窟も今や氷月くんによって粉々にされてしまった。だから医療を助ける科学の力と、私の医者役という経験が司くんを助けるカギとなる。正直言って今から人の命を左右するようなことをまだ成人もしていない私が担うのは重すぎた。でもそれは千空も同じで、むしろそれ以上のものを彼は背負っている。それに私にできることはなんでもするってあの時言ったのだから、今できないでどうするのだ。 「100億満点だ、いくぞ」 緊急手術はなんとか成功した。だがそれは束の間の時間稼ぎにしかならない。今すぐに司くんを死なせないための応急手術だ。司くんの命は、持ってあと数日といったところだろう。だったらと、千空の考える”絶対に司を死なせない方法”に頼るしかなかった。石化光線の謎を突き止めてそれを手中に収め、そして司くんを石化して復活液で生き返らすのだ。その為には一度、司くんを冷凍して殺し”コールドスリープ”させる。それしか方法は無いのだ。 「ここに居たのか」 「うん、ちょっと休憩で滝見てた……めっちゃマイナスイオンだ〜〜って」 「発言が頭悪すぎんだろ」 手術が終わったその日の深夜頃。司くんがやっと寝静まったころ、私は少しだけ休憩で近くの滝を眺めていた。ここからだったら司くんに何かあってもすぐ気づけるしとぼーっと眺めていたら、同じく千空が隣に腰かける。 「疲れただろ、少しは寝ろ」 「ううん、司くんが頑張って生きようとしてるんだから…ちゃんと看病しなきゃ」 「それで体調崩されたら余計手間増えるだろーが、バカ」 「んー、そう言われると困るなぁ」 医学の知識がある私は何かあった時の為に今日は夜通しで司くんの看病をしている。確かに疲れてはいるけど、司くんの負った傷と比べればなんてことはない。 「それに、今日はよく頑張ったな」 ぽふっ、と千空の手が私の頭に乗せられた。その時、先ほどまで奥の奥になんとか閉じ込めていたものがどっと溢れてくる感覚がした。 「ううん、今日は自分の無力さを…嫌でも痛感したよ……やっぱり、現実は違う」 どれだけその役に入り切ろうとも、勉強をしようとも、所詮自分がやっているのは真似事でしかないのだと痛感した。手術の時を思い出して手が震えてくる。やっぱり人の命って重いのだと、医者というのはそれを背負っているのだと…台本では何度も見た台詞なのに今やっとその重みを知った。 「千空はそんな重さを…私なんかよりもずっと知ってるんだね」 「重いとか軽いとか、んなことはどーだっていいんだよ……70億人復活させる。科学の力で。それが一番唆るんじゃねぇか」 「千空先生強すぎ…」 震えている私の手を千空の手が包み込む。この手で70億人を救うのだと思うと余計震えちゃうよ…なんて思うけど、千空にとってはそれはただの手なんだろう。温かくて優しい手だ。 「今まで真剣に色んなことに向き合ってたつもりだったけど全然だった…たったの100%にすぎなかった。だからこれからは、100億%でいくよ。それで私も、千空と一緒に70億人救わせてよ」 この人類全員復活計画は確かに千空がいなくてはいけない。けれど千空一人ではそれは成し遂げられない。本当は私にもその重みがかかっていたのに、ずっと気づけないでいた。そうだよ、私だって救えるんだよ。 「ククッ……テメー名前、そりゃあ最高に唆るじゃねぇか」 |