ズッコーン!な再会



 陵南高校との試合が終わった次の日、花道は酷く荒れていた。負けたという事実と自分が思うように動けなかった悔しさで荒れに荒れ、その話題を持ち出すと頭突きされるほど。喧嘩における勝ち負けでは一度も負けたことがなかった花道が、遂に敗北を知ったのだ。しかも正々堂々の正式な勝負で。――きっと、今までで一番悔しい思いをしただろう。
 そんな荒れた花道は失恋パターンで慣れたものなので別に怖いと思わなかったが、近づこうとも思わなかった。

「あ、花道…と、晴子ちゃん」
「おう名前!」
「名前ちゃん!」

 放課後、掃除当番だったので掃除をしっかりと済ませた私は洋平を探していた。そして丁度校門を出た所で、花道と晴子ちゃんに会ったのだが、花道の機嫌が朝とは違って上機嫌になっているのに気づく。

「いいことでもあった?」
「そうだ!見ろ名前!バッシュ!!」
「おー、かっこいいじゃん!」
「だろう!そうだろう!これで無敵だ!ハッハッハッ!」

 晴子ちゃんのお陰なのかなと思ったが、どうやら今回はバッシュの方が大きいらしい。新しく買ったらしいバッシュを見せびらかすように目の前に突き出され、「かっこいい!」「いかすぜ!」なんて花道をおだててやる。

「って花道、このバッシュ高かったんじゃないの?」
「中古だから30円にまけてもらった!」
「あー…かわいそうに……」

 この花道の普段の金の使わなさはもはや犯罪レベルだ。基本的にツケばっかだし、久々に出したと思えば10円単位だし…いつかコイツ捕まるぞ。それでも、このバカ嬉しそうな顔を見ると許してしまうのは……コイツ相当ヒモのセンスある。

「ま、走り回ってきなさいな」
「おう!」

 こうして意気揚々と体育館へ向かう花道を後にし、私は再び洋平を探した。さすがに勝手に帰るなんてことはしないと思うので、どこかに居るはず…。そう思って学校外もちょっと覗くように見てみれば…あ、見つけた。

「ん?なんかモメてる?」

 学校近くの公園のガーデニングスペースで洋平たちを見つけたのだけど、なんだかモメているように見えた。桜木軍団の中心には見慣れない一人の男子高校生らしき人の後姿。大楠が少しばかり戦闘態勢に入っているのが分かり、今にも始まってしまいそうなピリピリした空気がこちらにも伝わってくる。
 アイツ等に限って一人を全員で殴りかかるなんてことはしないだろうし、意味もなく喧嘩をふっかけたりしないのも知っているので不思議に思って見てみるのだが、どうもモメてる一人の男性の後ろ姿に見覚えがある。あの特徴的なツーブロックは…

「あ、」

 リョータ先輩だ!
 気づいた私は、これはいけないと駆け足になってフェンス越しに見ていたガーデンスペースの入口を探す。でももうリョータ先輩が大楠の挑発に乗って殴りかかっていくのが横目に見えた。ああもう間に合わない――そう諦めかけた時、軽快で気の抜けた笑い声がそれを止めた。
 洋平だ。相手の力量を察したのか、洋平は先に頭を下げて喧嘩を中断する。ああ、やっぱり私の彼氏はこの世の誰よりも素晴らしい男性だ。

「リョータ先輩!」
「ん?」
「「「「え?」」」」

 やっと入口を見つけて私は彼らに駆けつけた。そして丁度間に割り込むのだど、リョータ先輩は不思議そうな顔をして私を見ている。

「えっと、君…」
「え、リョータ先輩忘れたんですか?あ、メイクしてないからか…えーと、この前助けてもらった名前ですよ、名前!」
「え!名前ちゃん!?」

 そっか、やっぱこの顔じゃ気づいてもらえないか。まあ確かに髪型も違うしメイクもほとんどしてないし服装も違うし…分かってもらえないか。
 正直言ってメイクでバキバキに決めた姿を見せた後に素の姿を見せるっていうのは女子として躊躇うものがあるのだが、そうも言っていられないので私は腹をくくった。幻滅させてしまっただろうか…。

「名前ちゃん!こっちのが可愛いよ!」
「えっ」

 そう言われて両肩をガシっと掴まれ、リョータ先輩の顔が真ん前に迫ってくる。顔はほんのり赤い。そして直球で“可愛い”と言われて、私の方まで顔が熱くなった。

「ちょっと、人の女口説かないでもらえますかねぇ?」
「わ、洋平…?」
「え、人の女…?」

 突然後ろから手を回されて肩に置かれてたリョータ先輩の手を払ったのは、私の彼氏である洋平。突然のことに少し驚く私と、同じように目を丸くして驚くリョータ先輩。
 ああそうか、紹介しなくては。

「あ、うちのダーリンです」
「どーも、ハニーのダーリンです」
「え………」

 にこやかにそう言うと、リョータ先輩は何故か固まってしまった。そんなに驚くようなことは言ってないはず。不思議に見ていると、リョータ先輩は少し後ずさりして、そして――

「ズッコーーーーン!!」

 その場に崩れ落ちた。

「え?え?」
「ズッコーンってまさか…お前、名前に気があったのか?」
「名前ちゃんに…彼氏がいたなんて……」

 まさかの展開で私は目が点状態。崩れ落ちてわなわなとショックを受けている様子のリョータ先輩に、その他たちが「これで11回だな!」「おめでとう!!」と花道がフラれた時にするように騒ぎ出した。

「ちょっと、あんた達やめなさい!リョータ先輩!すいませんうちのバカ共が…」
「名前ちゃん…!」
「でも私、洋平のこと世界で一番愛してるんでリョータ先輩に恋愛感情とかまったくないです!安心してください!そしてごめんなさい!」
「ゴフッ」
「名前、追い打ちだ」

 あれ?






 

hanamichi


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