バスケ部にリョータ先輩が加わり、更にバスケ部は勢力を増した。花道も公式戦を前に練習に励んでいて、今日も意気揚々と体育館へと向かう。せっかくなので花道の練習風景を見ようと私と洋平も後を追うのだが、教室を出たところで見知らぬ生徒に話しかけられた。なにやら学校の入口でガラの悪い連中が居て帰れないとかなんとか。けれど話を聞く感じ、こちらにはまったくもって関係のない人達っぽい。 花道の喧嘩の強さを宛てに助けを求めに来たみたいだが、洋平はそれをアッサリと阻止した。今、花道は喧嘩の世界とは相いれないスポーツマンとして前を進んでいる最中、そんな花道の邪魔をしたくない洋平は「あいつを関わらすな」と言って助けを求める男子生徒達に背を向けた。申し訳ないけど、私も同意見なので関わらず体育館へと向かった。 「あ、教室にお弁当箱忘れた!ちょっと取りに行ってくる!」 「ん?おー、」 いけないいけないと体育館手前で私はクルリと半回転して、少し駆け足で来た道を戻っていった。ちゃんと今日中に洗わなければ大変なことになってしまうのでこれだけは忘れてはいけない。そういえば洋平は今日この後バイトだと言ってたから、一緒にいられる時間が少なくなってしまう……そう思った私は更に急いだ。 「あれ…………、ッ!!??」 教室に戻ってお弁当箱の入った巾着を手に取りカバンに押し込む。誰もいない静かな教室の空いていた窓から何やら騒がしい声が聞こえると思って不思議に覗いて見たら、校門前で6人ほどの男たちに殴られる…チュウの姿が。 「ちょ、ヤバッ…!」 焦った私は急いで教室を出て階段を下り、上履きのまま校門の方へと走っていった。でもそこには男たちの姿が無く、チュウも同じく居なくなっていた。 「あ、あのっ…!ここに居たガラの悪い男たちは!?」 「え、あ…それならあっちの方に…危ないから近寄らない方がいいよ」 「ありがとうございます!」 「あ、ちょっ!」 あの男たち、結構ヤバそうだった。普段の高校生の喧嘩じゃなく、本気でヤバそうな……だめだ、私も結構焦っているみたい。 校門前に居た生徒に聞いた方へと走っていくと、6人に囲まれて芝生に倒れているチュウを見つけた。どうしよう、この状況は駆けつけるべきか…でも多分ここで駆けつけたら絶対目をつけられる。しかもこの感じだと私の力なんてタカが知れている…勝目なんてない。 「オイ、お嬢ちゃん何見てんだァ?」 「えっ」 その時背後から、私の肩を掴む誰かの手と声が聞こえた。振り返ればそこにはここの学ランを着た男が数人居て、ニヤニヤとしながら立っている。私の肩を掴んだのは、ロン毛の男だった。 「この女、桜木とよく居るヤツだぜ」 「桜木?…あの赤頭か、チッ」 後ろの男が私のことを知っているらしくそう言うと、ロン毛の男はイライラしたように舌打ちをした。何か、花道に嫌なことでもあったのだろうか…。洋平や花道の話からはこのロン毛頭のことは聞いたことなかったのでよほど眼中にされていなかったと見る。 「おもしれーじゃねーか、この女…連れてくぞ」 「はっ?」 「怖い目あいたくなかったら来いよ、一緒に」 「え、えー…」 なんでそうなってしまったのですか。早いとこチュウの手当をしたいというのに、どうしてこんな面倒くさいことになったのだろうか。本当、花道に関わるとロクなことない。まあ、関わるけど。 「オイ……名前ちゃんを…離せ…よ…」 「ア?コイツまだ生きてたのか、もう一発殴っとけ」 「チュウッ!!」 ああもう最悪。腕は掴まれてるし、助けられないし、目の前で友達が殴られようとしていて……お願い誰か助けて。…洋平ッ。 「オイ、行くぞ」 「ッ…!」 ぐっと下唇を噛み、私は腕を引かれるまま歩かされた。悔しい…結局何も出来ないただの女で、悔しい。何よりも、ただそれを見ているだけで動けなかった自分が悔しかった。 「体育館はこっちだ」 ロン毛の男はそう言った。え…体育館?体育館といえば、今バスケ部がバスケの練習をしているはず。だとしたらこの男たちは、バスケ部に何かをしに行く…のだ。ちょっと待って、いろいろと最悪なんだけど。 「三井、お前こんな女がイイのか?ガキくせーじゃねーか」 「バカ言ってんじゃねーよ、コイツはおもしれーから連れてきてるだけだ」 な、なんという失礼なロン毛2人だろうか…。うねうねのロン毛タンクトップはいかにも”ワル”って顔をしていて私を横目で見下ろして来る。私の手を掴むロン毛男はただ無愛想に引っ張って冷静に答えた。確かに彩子さんのような色気はないですけど…!とりあえず、私の腕を引いているロン毛は三井と言うらしい。 「あっ」 ほぼ体育館の真横を歩いて裏口へ向かっていた時、角から丁度誰かが顔を出した。その姿は紛れもなく洋平で、三井という人に連れられて先頭を歩いていた私は思い切り洋平と目があった。さっきは助けて洋平なんてこと思っていたけど、この状況を見られるのは物凄くマズい。 「オイ、人の女に何手ぇ出してんだ……離せよ」 「人の女…?ああコイツ、お前の女か…」 「よ、洋平っ…」 酷く怒った洋平が、すれ違い様に静かにそう言った。この前の時同様、かなり怒っていらっしゃる。しかも前より以上に怖い気がする。そして洋平の彼女だと知った三井という人は、横目で私を見てチっと舌打ちをした。男たちは数秒睨み合い、その時もう一人のロン毛タンクトップの男が洋平に殴りかかる。それを上手く交わしたりカバンで受け止める洋平に、ロン毛の男は洋平が”出来る”と思ったみたいだ。 「おい、ここから先は体育館しかねーぜ、何する気だ」 「ああ知ってるよ…体育館だろ、これからちょっとバスケットをしにな」 「ッ!」 三井という人がニヤリと笑ってそう言うと、洋平の後ろに居た男たちが洋平を囲んだ。どうやら足止めのようで、この状況じゃまだ私は抜けられそうにない。というか、本当に私は行く意味あるんだろうか…もう放してほしい。 「ならコイツは関係ねーだろ、開放しろ」 「観客がいねーとつまらねーだろ?」 「クソッ!!」 グっとまた腕を引かれ、私は洋平に背を向けた。多分あんなザコ相手に洋平が負けるとは思わないけど、それでも状況は良くない。私はただ堪えて、隙を探していた。 悔しい。 |