「え、今日もバイト?」 「ああ、わりーな」 ついにバスケ部公式戦が始まり、今日は平日だというのに花道たちは試合のため欠席。当然流川くんも居ないので、今日はきゃあきゃあと騒ぐ女子たちが居なくて久々に静かな時を過ごせた。 テキトーな女子グループに混ざってガールズトークをして、お昼は洋平たちと屋上で食べてわいわいして、放課後になったら桜木軍団でブラブラするのかなー…とか思ったら、洋平はバイトでした。 ここ最近やたらとバイトを詰めているなぁ。そういえばスクーターのメンテに金がかかるとかなんとか言ってたからきっとそれだろう。洋平と過ごせる時間が減るのは残念だけど、お金を働いて稼ごうとする青少年を我儘で止めるなんて出来るはずなかった。 「お嬢さん、俺とどうよ?」 洋平は早々に背を向けてもう見えなくなってしまった。たかみんとチュウも今日は用があるとかで居ない。一体あの不良たちにどんな用があるのか…。私もそのまま帰ってゴロゴロしてようかと思ったその時、大楠にニッコリとそう言われた。 「まあ、たまにはいいかもね」 やることもないし、中々ない組み合わせだけどそういうのもちょっといいかもしれない。ということで、私と大楠は街を歩いた。 「どこいくの?」 「フフン、丁度ここに映画のチケットが2枚あんだよなぁ」 「おお、それ見たかったやつ!いいね!」 自慢げに今話題のコメディ映画のチケットを二枚チラつかせる。テレビで何度も予告を観ていたので結構気になっていて、思わずテンションが上がって声が大きくなってしまった。 「てかどうしたの?チケット2枚も」 「近所のおっさんがくれたんだよ、どうせ見に行かねーからやるって」 「へー!ラッキー!」 近所のおじさんありがとう! さっそく、私と大楠は中心街にある映画館へと向かった。映画なんていつぶりだろうか、最後に見たのは去年の冬頃?確か洋平と一緒に見に行った気がする。 映画館に着けば適当に飲み物とポップコーンなんて買っちゃったりして、チケットに書いてある席へと座った。 「こんなとこ洋平に見せられねーな」 「まさか、こんなので疑われるような関係じゃないですよー」 「さぁ、どーだかな」 ニヤっと意地悪な笑みを見せられ、意味がわからないので首をかしげた。だって、大楠となんて2人きりだとしても何か間違いが起こるはずない。洋平だって疑うわけない。 辺りが暗くなり、長いCMを見る。その後に本編が始まり、私たちは集中して映画に引き込まれる。話題になっているだけあって結構面白くて途中で笑ったり、こそこそと小声で喋って大楠と盛り上がったりする。映画が終われば2人で感想を言い合い、まだ時間があるので近くの喫茶店へと入った。 「私プリンチョコバナナパフェとアイスティーね」 「俺はコーラ」 甘いものが食べたくなったのでそう注文して、目の前の大楠へと視線を向けた。 「名前ちゃんはさ、なんかやりたいこととかねーの?」 「へ?」 意外にもふっかけてきたのは大楠の方で、私は何も構えていなかったのでその質問の意味を今一度頭の中で再生する。“やりたいこと”――というその漠然とした質問にも、すぐ答えが出てこなくて詰まってしまった。 「なんでそんなこと聞くの?」 「いや、最近花道がバスケばっかで暇な日が増えちまってよ、俺らもなんかねーのかなーって」 「あー……そっか、」 確かに、いつも輪の中心にした花道がバスケに夢中になってしまい、皆が一緒に居ることが少しだけ減ってしまった。いつもは花道が毎回何かやらかして皆を楽しませていたから、少し寂しいのだと思う。 バスケ部の見学に行ってひやかしをしたりはするが、真面目に練習している時もあるので彼らからしたら退屈だろう。 「洋平にも聞いてみたんだけどよ、俺ら結局なんもねーなーってなってさ」 「かなしーねー」 「で、名前ちゃんはそういうのあんのかなってよ」 「なるほど…」 大楠もこんなだけど何だかんだ考えてるんだなぁなんて失礼なことを思いながら、私は少し真剣に考えてみた。私の、やりたいこと…… 「やばい、思いつかない」 ちょっと自分に驚きだった。華の女子高生、青春の高校1年生、コレといってやりたいことが……ない。 「やっぱそうだよなー、なんも思いつかねーよなぁー」 ハァと大きくため息を吐く大楠に、なんかごめん、と謝っておいた。丁度パフェとドリンクがきて、とりあえず今すべきことは分かった。いただきます。 「なんかもう私、洋平がいればそれでいいかも…」 「いいねー相手が居るやつはー」 やりたいことなんて何もないけど、言うなれば私は洋平がそこに居るだけで幸せ満開である。目の前の甘くて美味しいパフェをつつきながら、大好きな洋平を思い出す……うーん、これはいい組み合わせだ。 「でもよ、もし万が一だぞ?万が一……洋平と別れることになったらどうすんだ?」 「え、」 「お前ら見てっとありえねーと思うけどよ、俺らまだ若いだろ?もしかしたら心変わりとか、他にいい女とか出てきたらよォ…」 「うっ」 洋平に………別の好きな人ができたら………? うるうる……だぱーーーー 「え、ちょ、ま…まじ?な、泣くな!わ、悪かった名前ちゃん!だから泣くな!!」 「ぶえぇ…」 大洪水とはこのこと。 目から大量の水がこぼれ落ち、鼻水も一緒に出てくる勢い。大楠は慌てて紙ナプキンで私の顔を拭いて何度も謝るが、私の悲しみは収まらなかった。周りから見れば別れ話を切り出されたカップルだ。 「お、落ち着いたか?」 「うん…」 「わ、悪かったよ…」 「ううん、でも…もし洋平が他に良い人できたら……私、これ以上に泣いたりするけど……諦めるよ」 想像しただけでコレだから実際が怖いけど。 「だって洋平が決めたことだし、洋平が幸せなら…それでいい」 「……ほんと、洋平じゃねーけど、いい女だよ名前ちゃんは」 「まあね」 ズズっ、と鼻をすすって、ニッコリ笑った。 「洋平にフラれたら俺とかどうよ?」 「タイプじゃないから遠慮しとく」 「ズッコーーーン!」 「あはは!!」 出来ればずっと、一緒に居たい。 |